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ギレイの旅  作者: 千夜
17章
457/561

探査魔法

 疲れた体に鞭打っての連続での移転魔法で、シュリは物凄く疲れていた。

あっという間に眠りに付いたシュリだったが、回復は早い。

2時間ほどの眠りで目が覚めた。


 時刻はまだ深夜、特にすることもないので、そのまま横になり体の疲れを癒す。

なんとはなしに、シュリは向かいのベッドで眠る儀礼を見た。


 シュリは儀礼といる間に、数度の探索魔法の気配を感じ取った。

ノーグの家、黒獅子の居た魔獣のいる森の中、そしてまた、ノーグの家。

間違いなく、儀礼を探している探査魔法の気配だった。


 それも、切っても、切っても、別の探査魔法が追いかけてくるのだ。

その状態で一人で病院に放り込んだとすれば、確かに、儀礼の語った怪談が本物になりかねない。

シュリのベッドには安眠のため、見よう見まねの結界魔法がかけてあった。

そこから儀礼を出した途端に、その探索魔法がノーグ家を襲った。


 初心者のシュリが見よう見まねでかけた魔法でも、その結界は確かな効果をもたらしているらしかった。

小さな子供達のいるノーグ家にとっては、危険な状態の『蜃気楼』を、黒獅子に押し付けようとしてみたが、黒獅子には本当に結界を張る力も、魔法防御能力もないのだった。


 仕方なく、シュリがまたノーグ家に戻れば、すぐに探索魔法がかかる。

シュリの父であるバクラムは気にもしていないようだった。

敵が襲いかかってきたら返り討ちにする。

それだけ。


 しかし、シュリにはこの家を守るという気持ちが、幼い頃から植えつけられていた。

父が外に出るので、家は母とシュリで守る。

だから、小さな弟妹のいる家に、恐ろしい敵の探索魔法がかかることは絶対に許せなかった。

そして、その安全地帯がシュリの作った2段ベッドの上という、小さな結界の中。

この状況は、仕方のないことだった。


「お前の護衛たちどうなってんだよ。」

シュリは言っても仕方のない愚痴をこぼす。


「アーデスさんの隠れ家には3人の侵入者がありました。」

あると思わなかった返事が儀礼の声であった。


「寝てなかったのか?」

「寝てます。」

明らかにおかしい返答に、シュリは笑った。


「ごめん、シュリ。さっさとケリつけとけばよかった。君の家に迷惑かけるつもりなかったのに。」

ごろりと儀礼が壁際から寝返りを打つ。

同じ高さにあるベッドでシュリと儀礼の目線が合う。


「いや。それが本来、親父達の仕事だろ。お前が片すことじゃないだろうが。」

守られるべき存在の少年にシュリは苦笑する。

「でもさ、シュリなら自分の敵は自分で倒したいとか思わない?」

真剣な目が真っ直ぐにシュリを見ていた。


「自分の敵、か。俺はまだそういうのに会ったことないけど。確かに、そうかもな。」

少し考えて、シュリは答える。

自分の敵。それは一体どういう存在なのかと。


「例えばシュリなら、ハルバーラの魔物とかだよ。階層が低くなればなるほど強い敵になるけど、仲間がいれば楽に倒せる敵でも、一人で最下層まで行きたいって思うんだろ?」

儀礼が口の端を上げて微笑む。


「ああ。ああ、そういう事か。」

納得したように、シュリは頷く。

シュリの手に入れた武器と鎧は、そのハルバーラと言う遺跡の最下層に眠っていた宝だ。

最下層で、遺跡の守護者がずっと持っていた物。

それをシュリは受け継いだ。


 だから、シュリは一人でその遺跡を攻略したい、しなければならないと感じていた。


「僕も、自分の手の及ぶ限りは自分で何とかしたいんだ。」

真剣な儀礼の言葉に、シュリはまた、頷いた。


「熱はいいのか?」

眠っている弟達を起こさないように小さな声でシュリは尋ねる。

「だいぶ下がった。薬効いたし、少し寝たし。」

にっと儀礼が元気な笑みを見せる。

その頬はまだ赤いので、全快とまではいかないのだろう。


「お前、記憶ないって言ってたが大丈夫か?」

頬杖を付くように自分の腕を枕にしてシュリは儀礼に問いかける。

「ごめん。僕、熱が高くなるとたまに記憶なくすらしくて。しかも、その記憶のない時に結構、大変なことやらかしてて……。」

枕に顔を埋めるようにして、儀礼は下を向く。


「なんだよ、大変なことって。眠ったまま探検でもしたか?」

先程の儀礼の怪談を思い出し、シュリは適当に聞いてみる。

「いや、……女の人に膝枕されてたり、一緒に居てって頼んだり、薬飲ませてもらったり……してたらしい。」

言いずらそうに、儀礼は枕に顔を押し付ける。

くぐもった声が本当に本人にとっても、不確かな様子を物語る。


「うっわ、すっげぇありそう。」

先程の儀礼の様子を思い出し、シュリは楽しそうに笑う。

面倒そうだった黒獅子の様子にも納得だった。


「ギレイ、いるか?!!」

その時、部屋を包み込むような白い光と共に、アーデスの慌てた声が、低い位置から響いた。

狭い部屋の中に、アーデスが移転魔法で現れたらしい。


「移転魔法で来たってことは、僕の位置確かめてから来たんでしょ。何慌ててるんです?」

儀礼はベッドの上からアーデスの頭に呼びかける。

「あ、僕アーデスより高い。」

ベッドの上に座り、嬉しそうに儀礼は笑った。


「何をのんきな……。」

アーデスが息を吐いて額を押さえる。

「探せなかったから慌てたんだ。まさか、シュリのベッドにいるとは思わないだろ!!」

「なんで?」

儀礼は首を傾げる。


「いると思っていいんですか?」

呆れたようにアーデスが儀礼を見上げる。

「……?」

しばらく首をかしげた後に儀礼は答える。


「アーデスにも探知できない、安全な場所なんでしょう。」

にやりと儀礼のその口は、大きく弧を描いて笑っていた。

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