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ギレイの旅  作者: 千夜
第1章 旅立ち
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第4話 サウルの研究施設

 儀礼:"穴兎、どうしよう"


 その日、ネット仲間の儀礼からメッセージが届き、黒髪の青年は常時つけっぱなしのパソコンの前に座った。

 すぐに、先を促すメッセージを返す。


 穴兎:"どうした?"


 儀礼:"死の山を吹き飛ばした"


 そのメッセージを受け取った瞬間、穴兎は世界が吹き飛んだかのような衝撃を受けた。


 穴兎:"何やってんだ、お前は!"

 穴兎:"どういうことだ?"


 パソコンのキーを叩きつつ、穴兎は儀礼のいるはずのドルエド国内、『死の山』周辺を検索する。

 すぐに『死の山』の監視用カメラを見つけた。


 アクセス経路を探索し、過去の記録と最新の映像を選び出して見る。

 穴兎が食い入るように見ているモニター上で、一台の車が画面の端から走ってきて、フロントが開く。


「これか」


 穴兎は息と一緒に生唾を飲み込んだ。

 画面では車から小型のミサイルが発射された。


(何やってんだギレイー!)


 穴兎は心に大きな汗をかき、山が破壊され、モニターが砂煙に包まれるのを見る。


 儀礼:"積んでたミサイルのスイッチを獅子が押しちゃったんだ"


 穴兎:"積むな!!"


 常識的な答えを返してはいるが、穴兎も頭の中は衝撃の余波から抜けられていない。


 儀礼:"家に置いといたら危険すぎるだろ"


(そんな物を持ち歩くなよ)


 初めて知り合ったのが、確か儀礼が五歳の時。


(なんて成長の仕方を)


 穴兎は頭を抱えたくなった。


 長い待ち時間をようし、画面が鮮明になった頃には、『死の山』と呼ばれたものはそこから消え去っていた。


 正直、穴兎は他人のことでここまで驚いたのは、人生の中で初めてだった。

 そして間違いなく、数時間後には世界中の人間が驚愕に見舞われることになるだろう。

 前代未聞の大惨事として。


 全身に冷や汗が流れるのを感じながらも、次いでギレイから綴り出された言葉に、穴兎はわずかな突破口を見出した。


 儀礼:"信じられないだろうけど、死の山が無害化されてるんだ "


 今、友人である儀礼を救うためには、穴兎は強硬手段にでるしかない。


(時間との勝負だ)


 穴兎:" Go  "


 儀礼へとわずかな指示を出すと、穴兎は全力を出すべく、自分の得意とする仕事に取り掛かった。




 儀礼達はサウルの町にある大きな研究所にたどり着いた。騒がしい建物内を進み、儀礼は目的の場所の扉を開いた。


「ちょっとちょっと、君。子供がこんなとこに入ってくるんじゃないわよ!」


 大きな部屋へと入り込んだ儀礼を睨みつけ、二十代の女性が近付いて来た。その怒気に儀礼はびくっと肩を震わせ固まった。

 サウルの研究施設内、最重要研究室に儀礼の姿はあった。


「誰よ、この非常時に部外者通したの」


 慌しく声の飛び交う部屋を、よく通る声でその女性は静まらせた。


「その子が、今『死の山』付近を通ってきたと言うから」


 少しおどおどした様子で、研究者らしい男が言う。

 どうみても、男の方が年長なのに、女性は怒ったように睨み付けている。


「情報を集めるにしても場所があるでしょ。ここは管理局Cランク以下の者は立ち入り禁止よ!」


 その言葉に、儀礼は遠慮がちにポケットから管理局ライセンスを取り出した。知の分野に携わる者が持つ身分証だ。


「一応、Bランクに認定されてます。その、『死の山』の状況について、責任者とお話がしたいんですが」


 儀礼の手から乱暴にライセンスを奪うと、疑う視線で凝視する女性。


「ふん、本物みたいね。あんたみたいな子供がよくBランクなんてもらえたわね」


 馬鹿にしたような口調に儀礼は曖昧な笑いで返す。


「それで、話って? 責任者はあたし。アン・カリミ、Aランク所持の二十二歳よ。くだらない話だったら、牢屋にたたきこむわよ」


「アンさん、五つもさばよむのは犯罪です」


 ぼそりと言った男をアンは視線で黙らせる。

 非常時によく冗談ができるな、と戸惑いながら、儀礼は自己紹介を返す。


「ギレイ・マドイ、十五歳です。『死の山』崩壊時、三百メートル地点にいました。もう、解析結果は出たんですか?」


 儀礼の問いにアンは首を振る。


「まだよ、こんなこと初めてだから。外部からの攻撃と、自壊の両方から見てるわ」


 アン達研究者は、不明な原因と現状にいらいらとしている。


「待って、原因よりも先に、現状の分析でしょう! 人命が最優先じゃないですか!」


 肌の焼ける感覚に、体を震わせながらも、儀礼は譲れない意見を言った。

 その眼前、眼鏡型のモニターに、穴兎から送られてきたメッセージが映る。


 穴兎:"研究室を乗っ取れ"


 その言葉を咀嚼して儀礼は、眼鏡に合わせていた焦点を、苦笑してからアンの方へと戻した。

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