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ギレイの旅  作者: 千夜
第4章 ストーフィムの遺跡
34/561

探索終了

 2番目、3番目、4番目。どこも蛇頭はすぐには出てこなかった。

「不穏な気配はする」

 ウォールが言う。

「やっぱりある程度へびを倒さなきゃだめか」

 最初と同じように次々とへびを倒し宝石を採掘する。

「またもぐら叩きか」

 そう言いながらも慣れた様子で倒していく獅子。

「へびだし。切ってるよね」

 くだらない突っ込みを入れて、儀礼も戦闘に加わった。


「ん~ん、終わったぁ!」

 男達が岩の扉を閉める横でキサが空に向かって両手を伸ばす。

 太陽が西の空を赤く染め、月が淡く光り始めていた。

「ほくほくですね。ほくほく」

 宝石の詰まった袋を抱きしめるように抱えてイムが嬉しそうに言う。

「どれくらい換金して、どの位手元に残します? やっぱり少しずつ売っぱらった方が大量に出回るより、価値が上がりますよね」

 兄妹揃って、本当に幸せそうだ。

「大会側に2割、町に3割。残りは私達で山分けでーす♪」

 あっという間に白い布の上に宝石を並び分け、色や大きさまで仕分けてある。実は職人ではないかと思える手際のよさだ。

 彼らに言わせれば今年は豊作なのだとか。


 4箇所全てに蛇頭が出て、全て綺麗に払ってきた。

 主にウォールが。

 最初の採掘場に費やした時間がおよそ2時間とすれば、だんだんと作業になれて、最後には30分かからなかったという速さ。

 おかげで午後から入ったと言うのに、日のあるうちに出てくることができた。

「へびが出るってわかってたら最初からそれ用に装備整えてきたのにねー」

「そうそう。俺だって突き刺せる方の爪にしたのに」

 キサとティルが傷だらけになった武器を見て嘆く。

「でもへびが出ると噂が広まれば、そのうち採掘方法に気付く人が出るかもしれませんよ?」

「何か問題ある?」

 儀礼の言葉にキサが訊ねる。

「へびの腹から出てきた虫の死骸をお嬢様方が欲しがるかって言うところです」

「……」

 しばし沈黙が続く。

「だまっとこっか」

 キサの提案に全員がうなずいた。高く売れないと困るトッコとイムはひときわ真剣に頷いていた。


 町に帰る頃にはすでに夜になっていた。

「了様ーっ」

 町の入り口で、待ちかねた利香が飛び出してきた。

「利香、お前一人か? 危ないな。何やってんだよ」

 獅子が周囲の気配を探り、利香の肩に触れる。

「冷えてんじゃねぇか、いつからいたんだ?」

「見送ってからずっと待ってました」

 何が楽しいのか、嬉しそうに言う利香。

「悪い。俺、利香連れてこのまま宿に戻る。風邪引くだろ、ばか」

 利香を連れ町の中へと戻っていく獅子。

「獅子に馬鹿にされるとは、利香ちゃんも気の毒に」

「お前ら、友達なんだよな?」

 ティルがあきれたように言った。


 それから町長の家を訪ね、採ってきた宝石を渡し、蛇の魔物が出たことと退治したことを告げる。

「ご苦労だった。魔物についてはギルドと管理局にも報告しておこう」

 町長が労い、夕飯をもてなしてくれた。

 魔物討伐を別報酬で出してくれるらしい。ギルドに行けば受け取れると言う。

「私たち換金に行って来るからここでお別れね。ばいば~い、ギレイくん」

 イムが儀礼の頭をなで、トッコと二人、笑顔で去っていく。

「俺達も帰るか」

 ティルが言い、キサがうなずく。明日の朝、いつもの町へ帰るのだと言う。

「あ、僕ちょっと寄って行きたい所があるんで、先に帰っててください」

 儀礼が言えば、

「もう真っ暗だよ、大ジョブ? 迷子君」

 キサがからかう。

「もうほんとに……」

 儀礼がうなだれる。目元には涙が浮いてきそうだ。

「ウォールさん。悪いんですが、ついてきてください」

 うなだれたまま儀礼は歩き出す。

 悪いと言う割には強制的な力でウォールの袖を引いていく儀礼だった。

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