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ギレイの旅  作者: 千夜
第4章 ストーフィムの遺跡
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魔なる蛇頭

 地面から頭だけを出す巨大な蛇。頭だけなのに天井に届きそうだ。

 大きな爬虫類の目が儀礼たちを睨む。

「うっわ、気持ちわるーい」

 イムが兄の背中に隠れる。

 蛇頭は目の前にいたウォールに牙を見せて食いかかる。ひらりと上によけ、額に一撃放つ。

 まともに当たって、痛みのためか暴れまわる。

 地面に縛られているようで、行動範囲は限られるようだ。

 ランクにすればおそらくC。

 儀礼はE、獅子がD、トッコとイムはC。ティルとキサはB、ウォールはA。

 敵の攻撃をかわしながらダメージを与えていく。ウォールは余裕がありそうだ。


「何か運命的だよね」

 攻撃に参加せず、よけるだけの儀礼が話す。

 よけた蛇頭の巨大な牙から毒がたれ地面から有毒な煙りがあがった。儀礼はすぐに中和剤を垂らす。

「何百年も積み重なった血の呪いが発動して、その年に限って町の外の人間が1位と2位」

「何が言いたいんだ?」

 次々に襲ってくる蛇と蛇頭に、話しをする余裕があるのは戦っていない儀礼と魔物と戦い慣れているウォールだけだ。

 横に構えたウォールの木刀に鮮やかな模様が浮かび上がる。

「ここに来たのが町の者だけだったら、来年からこの採掘イベントはなくなってた」

 ウォールは獅子との試合で放ったような風の塊を蛇頭へと放つ。頭の一部が大きくへこんだ。倒れこんだ蛇頭からうめくような音が聞こえる。

「でも、採掘しなくなってここからへびたちが溢れ出したらどうなる? きっと町を襲う」

 落ち着いた声で儀礼は続ける。

 獅子は剣に闘気を乗せ、覚えたばかりのそれで蛇頭に切りかかる。頭上から、頭の頂辺りに突き刺さり、ビシビシッと周囲に亀裂が入る。

 シュァーーッ

 叫ぶように出た蛇の舌がイムの腕に絡みつく。

「キャッ!」

 そのまま口の中へ引き込もうとするのをティルが切り裂き、トッコが引き剥がす。

 その間に飛びつくように襲ってきた二匹の蛇をキサは空中で一刀のもとに切り倒した。

「来年以降にこの遺跡の意味を伝えてくれるティルたちがいて、あの魔物を倒せる力を僕たちは持ってる」

 ズザザザ……

 話し続ける儀礼の声に気付き、舌を切られた蛇頭がうねるように体を揺らし、襲い掛かる。

 隣にいたウォールが再び紋様の入った木刀を振れば今度は蛇頭に大きな穴が開いた。きれいに、削り取られたかのように。


「ウォールさん、神官の修行か何かしてました?」

 神聖を感じられるそれに目を見張って儀礼が問う。

「いいや。俺のは我流だよ」

 表情の見えない体勢でウォールが答える。

「僕たち、と言うからには何かやってもらおうか?」

 試すようにウォールは儀礼に視線を送る。

「獅子、剣ちょっと貸して」

 儀礼はポケットから小さなビンを取り出し中の液体を剣にかける。

「なんだそれ? 怪しい薬か?」

「違うよ。なんだよ怪しい薬って。聖水だよ。教会に行ったときに少し分けてもらったんだ」

 儀礼はその短剣を獅子に返す。

「それで威力が増すはずだよ」

 にやりと笑い、獅子は勢いよく飛び出す。蛇頭に切りかかれば確かに強い手ごたえ。

「おし、いける」

 着地と同時に次の攻撃へと移る。

 一定箇所以上動かない蛇の頭は、すでに獅子の試し切りの的になっていた。

 まもなく蛇頭は苦しみだす。ほとんど原型をとどめていない。

 儀礼はセッティングを終え、スイッチを押す。

 よけながら蛇頭の周りに置いていた小さな機械がいっせいに霧を噴出す。

 霧が採掘所内を満たした。

 グェエエエー……

 蛇頭は煙をあげて浄化されていった。


「いいとこ取りやがって」

 ティルが儀礼の頭を小突く。

「すみません」

 そう言いながらも儀礼は照れくさそうに笑う。

「何したんだ? あいつはどうなったんだ?」

 首をひねっている獅子。

「聖水を霧状にしてふりかけたんだ。もともと形のない魔物だから跡形もないね」

「やるじゃない。ただの迷子じゃないのねー」

 笑いながらキサが儀礼の頭をくしゃくしゃにする。

 魔物が出たわりに全員大した怪我もない。

「遊んでる場合じゃありませんよ。早く宝石拾い集めないと」

 儀礼が見回せば、トッコとイムがすでにほとんどの宝石を回収していた。

「ん? 大丈夫、ちゃんと山分けにするからね」

「はい、雑用は俺らにおまかせです!」

 仕事が速くて助かることだ。


 宝石を拾い終え、儀礼が真っ先に部屋を出た。

「何だ? もう帰るのか?」

 ウォールが意外そうな顔をする。遺跡に入る時には探索するのをずいぶん楽しみにしていたはずだ。

「何言ってるんです。次の採掘所に行くんですよ」

「「「「「「「は?」」」」」」」

 全員が呆けた顔をする。

「ミハイさんの話しでは洞窟内に、あと3箇所の採掘所があるようです」

 儀礼は手作りの地図を見せる。手作りとは思えないほど精巧に描き込まれたそれには、確かに採掘場らしい空間が4箇所描かれていた。

「たったこれだけのために7人も来る必要あると思います? あ、魔物は想定外だけど」

「なら……出ると思うか? 残りの場所も」

 ウォールが木刀をなでる。

「可能性は高いと思う。できれば今後のために払ってしまいたいんですけど……」

 儀礼はウォールを見る。

 このメンバーでは退魔において、ウォールを頼ることになる。

「高くつくぞ」

 Cランクの魔物討伐、それも複数。ギルドの依頼ならば報酬はかなりの額になる。

 鋭い視線を返すウォールに。

「まけてください」

 儀礼はごまかすように、にっこりと笑ってみた。

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