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ギレイの旅  作者: 千夜
4章
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計略の遺跡10

 二人を遺跡の落とし穴に落としてから1時間。儀礼は焚火にあたりながら濡れた服を乾かしていた。

日が暮れたこの季節はひたすら寒かった。

ついでに、壊れた機器類の修理と調整をする。

「よかった、データは無事だ。防水仕様は成功かな。反応が鈍いのが課題か」

次々と白衣のポケットの中味を出し並べていく。

そこへ、どこかに行っていたらしい石のライオンが戻ってきた。

50体の灰色のライオンが、儀礼に攻撃する様子もなく、おとなしく石の柱の上に降り立つ。そして、元のただの石像のように動かなくなった。

儀礼はそれを呆然と眺めていた。

「なに。今の」

調べてみたいが装備が不十分だった。こんなことならどっちか一人残しておけばよかったかな、なんて勝手なことを考える。

その位置から見る限りはただの石像に戻ったようだった。儀礼は口元に手を当てて考える。

何故今まで一度も動かなかった仕掛けが動き出したのか。

「音声認識だって、あれば気付くし、今まで誤作動しなかったなんてありえない」


 考えられる可能性としては、ほかの古代遺産の影響。

例えば獅子の「光の剣」。

「でもそれだけだったら獅子は遺跡に入ってないのに、どうして? やっぱりクリームのあの剣……」

ガーディアンを一撃で粉砕した剣だ。古代の力を持つ、名のある剣と見て間違いない。

しかし、聞いたことがない。あのような剣は。

「いや、クリームは双剣として持ってた。何か意味があるのか? ああーっ、もうわかんない。早く帰ってこないかな。あの剣、調べてみたいっ」

儀礼は仰向けに倒れ、空を仰ぐ。明るい月と美しい星が空を飾る。

「光の剣と、クリームの剣。二つも揃ったから遺跡が起動した? 可能性はある。力を見れば両方とも伝説級の剣だし。込められた魔力量はきっとこの小さい遺跡を動かすには十分だったんだ」

言って、儀礼はまた悩む。

「それだけ? 動力源があれば古代の遺跡は動く? 使われなくなった収容所は封印してあったんじゃないか?」

何十年もかけて調べた研究者たちがそれだけのことで見逃していたとは思えない。


 ころりと寝返りを打った儀礼の懐で、薄っすらと何かが光っている。魔法攻撃から身を守るためにホルダーの中に埋めこんだ宝物。

「……ワイバーンの瞳って遺跡の鍵になることもあるんだっけ」

ワイバーンの瞳は魔力の性質によって合う物と、まったく反応しない遺跡とがある。

どの遺跡と合うか試すパズルのような楽しみもあって、儀礼はまだ合致する遺跡のない物をワルツに譲ってもらっていた。

使えなければただの魔力の高い宝石。でも、運がよければ誰も発見していない遺跡に辿り着けるかもなどと考えていたのだが……。

「古代の封印解く系統だったり……?」

言いながら、儀礼は紫色の光を放つその宝石を、手に持って眺める。

暗い森の中では眩しいほどの明かりになっている。

「ばっくれよう」

儀礼はそれを光の漏れない、ホルダーのポケットの中に押し込んだ。

きっと、害がないと思っていたからアーデスもワルツもこれを儀礼に持たせたのだろう。魔力が高く、防御として使えば魔法を打ち破る力が強いと言っていた。強いだろう。古代の封印を破る力を持っているなら。


「それなりの条件を整えなきゃ。遺跡が起動する条件。……クリームの剣の名前調べなくちゃ。アナザー時間あるかな?」

外していた色つき眼鏡をかける。

「光の剣の守護者と空飛ぶ石ライオン、Aランクガーディアン倒した勇者。遺跡の新要素発見。話になるネタなら乗ってくれるよな」

にやりと笑って、儀礼は手袋のキーを操作し始めた。


 儀礼が一人楽しんでいた時、遺跡上部から、声が聞こえて来た。

「あー! 儀礼、ミツケタゾ! 出口だ」

獅子の声だ。

「やっとか……! お前がトラップなんて踏むから」

疲れたようなクリームの声もする。

塔の、3階あたりの階段だろうか。明かり取りの窓から二人がのぞいている。

「残念、そこは出口じゃないよ。あと少しだけどね」

儀礼は楽しそうに答えた。

その瞬間に、二人分の怒気が、儀礼の体を焼いた。

「うっ」

思わず顔を歪める儀礼。

次の瞬間、

 ドガーーン!!

明かり取りの窓は、周囲のブロックともども粉々に吹き飛んだ。

「……」

言葉を失う儀礼。


「出れたじゃねぇか。やっぱ俺の言った通り、壁壊せば行けたんだよ!」

剣を持ったまま得意げに獅子が言う。

「トラップがあるって言っただろ、ガーディアンだっているんだ、下手に刺激したらやばいんだって。ほんっとばかだな!」

そう言いながらも、クリームの剣は一つに合わされ振り抜かれた状態だ。

すり傷とほこりにまみれた獅子とクリーム。1時間で脱出してくるとはさすがだ。予想を超える早さ。なのだが……。

「古代遺産壊すなよ……」

少しも仲良くなってないどころか、さらに騒がしくなった二人に、頭を抱える儀礼だった。

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