EP 4
結成! 幼児だけの秘密結社 ~その目的、ガチャと自販機回避につき~
「……で、あるからして。俺は目撃者を消さなきゃならなかったんだ」
公園のベンチ。
リアン・クライン(3歳)は、パックのリンゴジュースをチューチューと吸いながら、真剣な顔で力説していた。
俺、ミルマと、隣でクッキーを食べているリリス、そして背後に立つポーンは、生温かい目で彼を見守っていた。
「要するにだ。お前は、『ネット通販スキル』が太郎王にバレると、城の廊下に埋め込まれて、一生背中に100円玉を入れられる『生体自動販売機』に改造されると……そう思い込んでいるわけか?」
「思い込みじゃない! 可能性大だ!」
リアンがバンとベンチを叩く。
「太郎王は合理主義者だろ? 『いつでも冷たいコーラが出せる人間』なんて、インフラとして最高じゃないか! 俺が王なら絶対やる!」
(やらねーよ。あの王様、そこまで勤勉じゃないぞ)
俺は心の中でツッコミを入れたが、口にはしなかった。
この被害妄想こそが、この優秀な暗殺者を動かす原動力なのだ。否定してやる気を削ぐのは得策じゃない。
「なるほど、危機感は理解した。だからお前は、夜な夜な悪党を狩り、その死体を『喰丸』で消滅させて、自分の存在を隠蔽していたと」
「ああ。ついでに悪党の財布から活動資金を回収している。一石二鳥だ」
リアンが悪びれもせずに言う。
3歳児の台詞とは思えないハードボイルドさだ。
そこで、今までクッキーに夢中だったリリスが口を挟んだ。
「ねえねえ、その『悪党狩り』って、**『善行ポイント』**は貯まるの?」
リリスの瞳が、¥マーク(あるいはガチャ石の形)に輝いている。
「あ? ポイント?」
リアンが眉をひそめる。
「そうよ! ゴミ拾いは1ポイント、人助けは1000ポイントなの! 悪党を倒したら、街が平和になるんでしょ? それって凄くない!?」
リリスの独自の計算式(皮算用)が弾き出された。
悪党を倒す = 超・善行 = 大量のポイント = ガチャ回し放題。
「……まあ、結果的に治安は良くなってるから、善行と言えなくもないが……」
リアンが口ごもると、リリスはガタッと立ち上がった。
「決まりね! 私もやる! その『お掃除』手伝うわ!」
「はぁ? 足手まといだろ。お前みたいなガチャ中毒に何ができる」
リアンが小馬鹿にしたように鼻を鳴らした瞬間。
リリスが無言で右手を掲げた。
「出よ! 鉄の制裁!」
ユニークスキル『ランダムボックス』発動。
100pt消費。
ボロン。
虚空から落下してきたのは、『業務用・一斗缶(中身入り)』だった。
ガンッ!!
「ぐえっ!?」
一斗缶がリアンの脳天を直撃した。
中に入っていたペンキ(赤色)が飛び散り、リアンが真っ赤に染まる。
「……痛ってぇぇぇ!! 何しやがるこのアマ!!」
「あらごめんなさい、『ピコピコハンマー』を出そうと思ったのに、運命力が荒ぶっちゃった☆」
リリスは悪びれもせずにテヘペロした。
リアンはプルプルと震えながら、マグナギア『弓丸』を呼び出そうとする。
「落ち着け、二人とも」
俺はパンと手を叩いて仲裁に入った。
「喧嘩してる場合か。互いの利害は一致してるんだぞ」
俺は地面に木の枝で図を描き始めた。
「いいか。リアンは『身バレ』を防ぎたい。そのためには、目撃者を消すよりも、『正義の味方』というカモフラージュがあった方が動きやすいはずだ」
「……む」
「リリスは『善行ポイント』が欲しい。だが、3歳児の行動範囲じゃ、ドブ掃除くらいが関の山だ。リアンの情報網があれば、もっとデカい『人助け』ができる」
「……ジュルリ(涎)」
「そして俺は……この国の『情報』と『平穏』が欲しい。植物たちからのタレコミ(悩み相談)を解決すれば、植物たちが喜んで、俺の生活環境がさらに向上する」
俺はニヤリと笑って二人を見渡した。
「win-win-winだ。俺たちで組めば、この街(ご近所)を裏から支配できる」
リアンはペンキを拭きながら、少し考え込み……やがて、不承不承といった感じで頷いた。
「……チッ。まあ、一理ある。一人でやるより、とぼけたガキ(お前ら)と一緒の方が怪しまれないしな」
「私はポイントが貰えれば何でもいいわ! あと、リアンくんのその『お人形』、高く売れそうだし!」
「売るなよ! 絶対売るなよ!」
こうして、公園のベンチで奇妙な同盟が締結された。
【組織名:お悩み解決団】
リーダー(兼・参謀):ミルマ・クラウディア
担当:情報収集(植物ネットワーク)、作戦立案、経理、ポーンの指揮。
実行部隊長:リアン・クライン
担当:潜入工作、暗殺(非殺傷推奨)、証拠隠滅、ネット通販による資材調達。
火力支援(兼・マスコット):リリス・カギタ
担当:正面突破、運任せの兵器召喚、資金提供(パパのお小遣い強奪)、善行ポイント回収。
「よし。じゃあ手始めに、最初の依頼だ」
俺はポケットから、一枚の枯れ葉を取り出した。
これは来る途中に、街路樹の『プラタナスさん』から受け取った相談状だ。
「依頼主は、商店街の裏路地に住む野良猫の『タマ』。……最近、縄張りを荒らす新入りの野良犬に困っているらしい」
「……は? 猫の相談?」
リアンが呆れた声を出す。
「バカにするな。動物の情報網もバカにならない。それに、タマの情報によると、その野良犬……首輪に『軍の機密データが入った魔石』をぶら下げているらしいぞ」
「!!」
リアンの目の色が変わった。
「軍の機密……もしや、太郎王の『自販機化計画書』か!?」
(違うと思うぞ)
「わぁ! 迷子の犬さんを助けたら、1000ポイントは固いわね!」
リリスもやる気満々だ。
「よし、出動だ。ポーン、おやつ(野良犬用のビーフジャーキー)を準備しろ」
『了解。最高級A5ランク肉を乾燥させます』
俺たちはベンチから飛び降りた。
見た目は可愛い幼児三人組。
だがその中身は、太郎国の裏社会を震撼させる(かもしれない)、最凶のトラブルシューターたちだった。
「行くわよ! ガチャの神様、見ててね!」
「チッ、足手まといになるなよ……」
「さあ、稼ごうか」
夕日が沈むタロー・シティ。
三つの小さな影が、長く伸びていた。
次回、初任務!
野良犬確保作戦が、なぜか国家転覆の危機に関わる大事件へ発展!?
リアンのマグナムとリリスのガチャが火を噴く!




