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雷に打たれて死ねば  作者: 莞爾
3章 思春期編
10/16

3-1 中一

 この頃は家庭環境を土台に、不安定な成長期を過ごした。大きなトラブルこそなかったが静かに歪みながら成長する時代だった。 部活内のいじめや、初恋など、割と共感しやすい問題を抱えていたと思う。


※本作には、精神疾患、家庭内の問題に関する描写が含まれます。読まれる方の心身の状態に応じて、無理のない範囲でお読みください。

 様々な事件に襲われた小学生時代を経験し、借り物の制服と学生鞄を与えられて私は中学に上がった。 心の傷を密かに抱え、当時は鬱状態だったと言っていい。が、私には鬱状態であるという自覚がなかった。物心ついてからずっと大変な経験しかしていないので、これが普通だと思っていた。


 『人生とは辛いもの』『みんなも同じ』『俺はダメなやつ』これが私の目から見た世界だった。


 日々に希望を見出せず抜け殻のように過ごし、学校内の出来事は全て凪だった。生きることに疲弊していた。みんなが笑う時、泣く時、心が動く瞬間を薄膜の向こう側の出来事としか捉えられなかった。


 いわゆる〈厨二病〉とは別種のものだと思っている(ここまで読んでくれているあなたもこの主張には納得してくれるだろう)。

 クラスメイトの中には「妖精が見える」と言い出すものや、「いつ敵が来ても戦えるように」とカッターナイフを学ランの内ポケットに忍ばせる人もいた。だが私の諦念はそういう空想とは別のものだった。 傷があるふりではなく、本当に傷付いていたし、どこがどうおかしいのか言語化できなかった。


 常に走り疲れた後のような疲労感に苛まれ、何をするにもしんどくて無気力だった。先生や友人に話しかけられても上部だけの会話でやり過ごし、踏み込まれると言葉に窮して愛想笑いでごまかす。

 抱えている弱みが多すぎて、人に弱点を知られるのが怖かった。特に親父の事件の影響からか、大人の男を信用できなくなっていた。男は暴力で脅し、私を傷つけるだけ傷つけてどこかに消える。そういう存在だと認知していたし、私もまた男であるが故にいつかはそのような存在になってしまうと絶望した。


 男性恐怖症で、人間不信で、鬱。

 この三重苦を自覚症状もなく抱えていた。


 クラスでの立ち位置は定まっていなかった。所属するコミュニティもなく、クラスカーストの外をふらつくことを許されていた気がする。多分事情を知っているクラスメイトが最適な距離感と評価を保留してくれたのだろう。

 冗談を言い合う友人もいるにはいたが、常に心が遠くにあった。授業内容も小学校の時点でもう着いていけていなかったのだから、中学の成績も言うまでもない。


 絵を描くことと、空想に耽るのが好きだった。現実は常に退屈で、たまに辛いことが起きるだけの価値のないものだった。


 一方で、中学三年になっている兄は生徒会所属で優秀だった。鬼滅の刃の炭治郎みたいな精神を持つ兄だった。


 余談だが、少し兄についての分析をしてみる。

 兄も私もアダルトチルドレン(機能不全家庭で親の役割を担う)な子供時代を過ごしていた。特に長男らしい振る舞いを求められた兄は、弟達の面倒もこなしつつ、学業でも親を心配させまいと努力したのだと思う。ケアテイカータイプ、しかもイネイブラー(自己犠牲に見返りも求めないタイプ)。なので本人には「自分がアダルトチルドレンである」という自覚もないはずだ。

 ちなみに私自身はロストワンタイプだと思う。


 話を戻す。

 兄が優秀で世話焼きなので、中学はその足跡をなんとなくなぞればいいだろうと考えていた。そこに自己表現や快不快の尺度はなかった。私はただなんとなくバスケ部に入った。ミニバスやってたんだし続けるよね? という空気感に従った。


 バスケ部は、ミニバスとは熱量が違った。

 それに、なんだか知らない顔ぶれの先輩も沢山いた。

 中越地震の影響で別の地域にあった中学が廃校となり、こちらに統合されたのだ。

 彼らは無気力な私を嫌った。当然だと思う。


 例えばこんな感じだ。

 バスケの練習前に行う円陣にて、


 部長が「○中ファイ(ト)!」と言えば、円陣の他の部員が「オー!!」と応える。


 この掛け声で私だけ覇気がないと部長に胸ぐらを掴まれたことがある。

 無気力に振る舞っている自覚はない。むしろ声を張り上げているのだが、人生は闇と悟っている私の全力は彼らの五〇パーセントの声量にも届いていなかった。


「やる気がねぇなら帰れよ」


「ありますよ?」(そう応えるものの、実は私はやる気という概念を理解していない。)


 三年生に胸ぐらを掴まれれば普通はもっと怖がるものなのだが、私はもっと恐ろしいものを知っていた。先輩なんて所詮兄の友達くらいの認識だったのでびくともしなかった。

 覇気がないくせに肝の座った私は、そりゃ嫌われる。というか触れてはならない家の事情もあって気味悪がられていた。

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