諦め
「・・・は?」
「ぶっw」
俺の目の前にいる女が、突然そんなことを言い出した。
「何言ってんだお前」
「なんだよ。拷問するんだろ?だったら、縛れよ」
「おま、まさか・・・」
俺は、思っていることをそのまま口にする。
「そういう、性癖か?」
「ちげぇわ!!決して、そんなわけでは・・・ない」
「最後ちょっと詰まってたぞ」
ま、まさか。俺はとんでもない女を捕まえてしまった。
「いいから。はやく。拷問をやって。辛いことははやく終わらせたい主義だ」
「お、おう」
まぁ、こいつが望んだ拷問だ。はやく終わらせて、情報収集を続けるとしよう。そうして、俺は近くにあった鎖を彼女の腕に巻き付けて、
「これで気は住んだか?」
「これが拷問って、流石にちょっと甘すぎるか?」
まぁ、いいか。これからレベルを上げていけばいいだけの話しだ。今日はこれで済ましてやろうか。
「さぁ。俺はお前らが吐くまでここを離れないぞ」
先ほどの拷問の痛みが未だに残っていて少し涙目になっている男。囚人服で腕を縛られているという、謎のプレイを実行している新入りの女。まさにこれは・・・
「地獄絵図だ」
「誰のせいだと思ってんだ!!」
・・・と、そんな茶番を繰り広げつつも、
「いい加減、吐いてくれないか?」
「だから、何も知らねぇっての」
「お前たちは、そんなに死にたくないのか?」
この世界においては、殺人を犯した人間は死刑となって、処刑されるまでがセットだ。しかし、俺が情報収集のために、こいつらの処刑を遅らせている。こいつらが、情報を吐いたらすぐに処刑が行われるのだが、こいつらは一向に口を割ろうとしない。
「死にたくないわけではない。しかし、俺は言いたくないことを言わないようにしているだけだ」
「だったら、お前らは誰かに指示されているってことだな?」
「・・・」
「俺の推理上、その答えしか可能性がないんだよ。お前だけの犯行なら、自主するだけでいいもの。そして、誰かに指示されているなら、たしかに口を割ることは絶対に許されない。それも踏まえた上で、お前は誰かに指示されているとしか思えないんだ」
「はっ。流石探偵と言ったところか?よく細部まで考え込んでいるんだな。しかし、生憎そういうわけではないんだ」
「ちっ。だるいな。もう一回拷問を行うぞ?」
「あぁ、何度だってやれ。俺は、本当に何も知らないからな」
女は口を開かずに、反対を向いたままだし、どうにかして、口を開いてくれないだろうか。
「んー。あ、そうだ」
少し、試してみるか。
「なぁ、お前」
「あ?んだよ」
「新入りの女さ、意外と可愛いって思わないか?」
「!?」
「まぁ、ちょっとは思った。中々いい体してるし、昨日の夜襲ってやろうとも考えたがな」
「流石に理性が勝ったと」
「まぁ、そういうわけだ」
ちなみに、性癖こそやばい女だが、普通に生きていたらモテモテだっただろうなとは思う。黒髪ロングで、スタイルもいい。まず、顔のパーツの全てが整っているのだ。目も、クリクリしていてお世辞なしに可愛いのだ。
「こんなんが、犯罪者じゃなかったら、おそらく惚れていただろうなぁ」
と、俺がそういうと、
「そ、そろそろ黙れ・・・」
顔を真っ赤にした女が、こっちを少し向きながらそう言った。
「ふーん。意外とかわいいじゃん」
「だからやめろと言っただろうがーー!!!」
こいつ、性癖が全てを下げているが、実は乙女なんだな?
「ほんと、なんでこんな道に進んでしまったんだよ」
「お前に話す義理はない」
「まぁ、話さなくたっていいさ。ただ、その文、拷問を受ける日々は続くぞ」
「死ぬに比べたら、拷問を受ける方がましだ」
「そうかー」
しかし、今日も情報を吐いてくれなさそうだ。
「はぁ。いつになったら吐いてくれるかねぇ」
なんて思いながら、俺は調査を行うために牢獄を後にするのだった。
あいつがいなくなってから、俺はその女に話しかけた。
「んで、なんで捕まってんだよ」
「うるさい。それはお前だって同じだろ」
「んまぁ、そうだが。あぁ、悪いことをしたよなぁ」
「誰に」
「ボスに。あれだけうまく行ってたのに、俺らが足を引っ張ったんだよ」
「ま、まぁ。それはそうだね。で、あの看守が言ってたことは本当なの?」
「何が?」
「私たちが情報を吐いたら、処刑されるってのは」
「あぁ、本当だよ」
だって、俺らは人の命を奪った罪悪人だ。法律で決まっている以上、俺らはどちみち死ぬ運命を辿るのだ。
「俺は、ここに長いこといるから、考えるようになったんだ。なんで、あんな犯罪組織に入ったんだろうなぁって」
絶対、あそこに入っていなければ、もっと幸せな人生を送れていただろうに。
「まぁ、お前は理由があるもんな」
実は、こいつの両親は殺し屋なのだ。故に、こいつは両親に追い付くために、あの組織に加入したのだ。
「そろそろ、牢獄生活に飽きてきたな」
いっそのこと、情報を吐いてやろうか。どうせあの組織に戻ることはないんだし、はやくこんな人生終わりにしたいしな。
「それも、ありだな」
そんなことを考える。今日この頃だった。




