天使
それから、夜。俺は外を出歩いていた。結局、考えても何もわからない状態だった。流石に、可能性としては薄いが、異能力者・・・の可能性もあるのだろうか?しかし、痕跡を消す異能力なんて、聞いたことがない。少なくとも、あのときの世界では。これは、創世者に聞くべき事なのだろうか。ただ、異能力者じゃないとなったら、本気で答えがわからなくなる。誰が主犯で、どうやって痕跡を消しているのか。
「やっぱり、まずは創世者に聞かないとだめか」
この世界の事は、あいつが一番知っているのだ。だったら、あいつからも情報を集めた方がいいだろう。そうして、俺は近くの公園のベンチで目を閉じて・・・。
「っと、やってきたっぽいな」
気づけば、青白い一本の光が目の前にはあった。
「おや、どうなされました?」
「ひとつ、聞きたいことがあってな」
そうして俺は、異能力の事について聞き出した。
「この世界で、異能力は扱えるようになっているのか?」
「えぇ、一応。前の世界も、異能力は使えないように設定していましたが、あなた、使ったときありましたよね?」
「あぁ、そういえばあったな」
「あのときみたいに、設定は出来ても、いつでも変えることは出来るんです」
「はぇ~。そうか。まぁ、話を戻すけど、異能力は使えるんだな?」
「はい。しかし、そこからがおかしいのです。あなたは、最期の異能力者として、特別に異能力を引き継ぎながら転生することを許可しましたが、あなた以外に異能力を持つ人間がいることがあり得ないんです」
「お前も、薄々異能力者だと感じてきているのか?」
「えぇ。まだ、真相は突き止めきれてないんですが、流石にここまで証拠隠滅が上手となると、ただの人間がここまですることは不可能でしょう」
「しかし、そんな異能力存在するのか?」
「存在しない・・・と言ったら嘘になりますが、まず取得することは無理だと思います」
「ということは、ないわけではないんだな」
「えぇ。過去の、あの世界にも一応存在はしていました。しかし、その異能力を取得することは不可能だったんです」
「それはどうして?」
「異能力の世界では、必ず役職分けを行うんですけど、過去の世界で『天使』という役職を聞いたことがありますか?」
「いや、ないな」
「それこそが、一番今回の事件の関連性が高いんです」
「その、天使と事件の何が関係あるんだよ」
「天使が扱うことが出来る固有スキルが『隠滅』なんですよ。それは、段階によって、何かを消すことが出来る程度の異能力。そのレベルは、1~10まであるんですが、もしこの事件の隠滅が異能力であり、それが天使の異能力であったら、段階はレベル4に匹敵するんですよね」
「ただ、それくらいだったら普通じゃないのか?」
「そうじゃないんです。先ほど言った通り、天使という役職にならない限り、その異能力を扱うことはできません。次に、あなた以外に異能力者がいるはずないということ。仮に、私の知らないところで、異能力を覚えた輩がいて、その役職が天使だったとしましょう。しかし、天使の固有スキル、隠滅のレベルをあげるには、相当の努力が必要になってくるんです。それは、生きているうちに達成できないほどの労力が」
「それほど、大変なものなのか?」
「はい。私は、創世者です。故に、異能力の世界にあった、誰も扱っていない異能力や、取得が難しい異能力でも、私は全て取得しています。しかし、隠滅だけは時間がかかりました。取得するだけでも、数十年はかかったし、最大レベルにあげるまでにも、軽く万年は越えました」
「それほどなのか?だったら、もっと矛盾が生じてくるな」
「そうなんです。おかしいんです。レベルひとつあげるのでさえ難しい芸当なのに、それがレベル4程度の実力があるとなると・・・。只者ではないことがわかります」
「しかし、確実にそうと決まったわけではないんだもんな」
「そうですね。あくまで、一番その可能性が高いだけであって、実は本当に隠滅が上手な一般人の可能性もなくはありません」
そうなってくると、少しは前進したんだろうが、それでもわからない。創世者も言っていた通り、俺以外に異能力者が存在するはずがないのだ。
「ま、ききたいことはそれだけだ。もう用はない。それじゃあな」
そうして、俺はその世界を出た。ただ、創世者でさえも言うことだ。少しでも、その可能性があるなら、その可能性は見捨てれないのだ。




