天使
そんなこんなで俺たちは、ボスの居場所に向かっていた。
「流石に遠いな。誰か速度系の異能力持ってないのか?」
「異能力封印したからなぁ。流石に一般人の脚力だけではどうしようもないな」
「私も、そう言ったタイプの異能力じゃないので・・・」
「なるほど。時間かけるしかない感じか」
「だな」
捨て駒くらいだったら、俺の異能力でどうにかなるから良いが・・・時間をかけすぎると、その文虐殺が増え続けてしまう。だから、はやくボスと対峙しないといけないのだが・・・。
「喋ってても仕方ないか。とにかく急ごう」
「そうですね。急ぎましょう」
そうして、俺たちが走ることに集中した、その瞬間。
(ん?なんだこの気配・・・)
なんだか、おかしい気配を感じた。近くに、身を隠せるような物陰はないのに、何故か人の気配を感じた。まさか、透明系の異能力か?しかし、そんな異能力は・・・。
「わっ!!」
その瞬間、知夏がなにもないところで急に倒れた。
「どうした?」
「いや、今確実に、”何か”に攻撃されまして・・・」
「何か?しかし、誰もいないぞ?」
「いや、まて!!」
すると、刹那。
「あっぶねぇ・・・」
「チッ」
「今、舌打ちが聞こえたな。これは、大和。そういうことだな?」
「あぁ。そうだな」
しかし、相手が姿を晒さない限り、居場所を完全にわかるようにするのは難しい。だったら、
「お前ら。音を聞け。よく耳を澄ませば・・・」
そうして、俺は微かに聞こえた音に反応して、そのナイフを振りかざした。
「いっ・・・!!」
「居場所が、わかるぞ」
おれがそう言った瞬間、
「チッ。じゃあ、もう透明化しても意味がない。やはり、ボスから聞いていたように、元世界最強は侮れない存在ですね」
「何故、お前が俺の正体を知っている。それと、お前は何者だ」
「仕方ない。自己紹介だけ、しましょう。私はソフィア。あなたたち警察も知っている通りの組織、New Dealの幹部四天王の一角だ」
「そして私は幹部四天王の最強角、ラフだ」
「おぉー。幹部の四天王が二人も・・・よくいらっしゃった」
「私は、お前たちと仲良くお喋りするつもりはない。ボスから言い渡された指令に、従うだけだ」
そう言いきった刹那、そいつは無意味に猪突してきた。
「それだけで、俺たちに並べると思っているのか?」
「・・・」
そいつは黙って攻撃を繰り返す。まだ、体力を消費しないようにしているんだろう。先に俺たちに異能力を消費させて、体力切れを促す戦法なのだろうか。
「大和!!俺と知夏で、ラフと名乗った奴を戦う。その間、そいつと戦ってくれないか?」
「任せろ。戦う・・・じゃなくて、お遊びな!!」
「世界最強からしたら、私のような存在は遊び相手なんですか」
「そりゃそうだ。あと、勘違いするな。俺は・・・世界最強じゃない」
「あなたは、大昔の世界から続く世界最強でしょう?」
「たしかに、あの頃は世界最強だった。しかし、一度死んでいるから、俺は元世界最強となるわけだ。なんだってそうだろう?プロ野球選手が引退したら、『元』プロ野球選手になるだろう。それと同じことだ」
「思想が強いことで。まぁ、そうですよね。現世界最強は、ボスですからね!!」
俺は、攻撃を受け流しながら会話を続ける。
「洗脳なのか、信仰なのかわからねぇな。ま、そう思っておけばいいんじゃね?」
「舐めた口を・・・!!世界最強だからって、調子乗っているんですか?調子乗っていると・・・痛い目見ますよ?」
「やれるもんなら・・・やってみろよ!!」
そうして、そいつは異能力を放つ。しかし、
「世界最強には・・・こんな異能力どうってことねぇよ!!」
「少し、ギリギリだったようにも見えますがね・・・。なら、これならどうですか?」
そうして、そう言った彼女はその異能力を放った。
「天使・・・解印」
「なっ・・・!!」
これが、創世者が言っていた、天使・・・?しかし、あいつでも取得は難しいと言っていたはずなのに、どうしてそんな異能力を!!
「流石は元世界最強。知っていましたか」
「ま、まぁ。しかし、どうしてそんな異能力を!!」
「簡単な話ですよ。それは・・・『実験』ですかね」
彼女が手を広げた刹那、紅かった空が、一瞬にしてどす黒い雲に覆われた。そして、
「降雷」
彼女が、天に翳した掌を、地面へと振り下ろした刹那。
「うがぁぁぁ!!」
俺でも避けきれない雷が、俺の体を襲った。
「い、ってぇ・・・」
「流石は元世界最強。これを耐えれるほどの耐性はありましたか」
正直、充分致命傷ではある。脳が、痙攣を起こしている。まともに、立つこともままならない。頑張って、立ち上がってみるが、
「あ、ぁぁ」
そんな情けない声を上げて、俺は再び地面に倒れこんだ。
「私の勘違いだったようですね。世界最強も、ここまででしたか」
未だに、脳が痙攣を続けている。本当に、本当に・・・気持ち悪い感覚だ。しかし、何も行動を起こせない俺は、
「・・・」
哀れな目で、俺を見下すそいつを、見上げることしか出来なかった。




