覚醒
それから、異能力を覚えるために試行錯誤してみたわけだが・・・。
「はぁ、はぁ。まだ、体力が上がらないな」
かれこれ一週間ほどは鍛練を積んだが、異能力はおろか、まだ基礎体力さえも向上しない。
「知らない間に、すごく鈍っていたんだな」
こりゃ、取り戻すのも大変そうだ・・・。なんて、思っていると、
<<カサカサ>>
と、何やら近くの草むらから物音が聞こえた。俺は虫だと思っていたから、無視をしたわけだが、次の瞬間。
「異能力、発動」
その声が聞こえて・・・!?
「これで、始末できたか?」
こいつは、見覚えがあった。だから、すぐに俺は始末を開始した。
「元世界最強も、こんなもんか」
前世で、見覚えがあった。おそらく、あいつは覚えていないだろう。俺は、前世であいつに殺された。あのときは、俺はモブだった。異能力もそこまで強くなかった、世界最弱の立場だ。そして、最終戦争に発展したとき、俺はあの男に殺された。今でも、鮮明に覚えている。あの顔、あの風格・・・。そして、今出会って、あのときの男だと確信した。だから、全力を出して異能力を発動させたわけだが・・・。
「大したことなかったな」
さぁ、仕事も終えたことだし、帰ろうとするか。そうして、俺が振り返った、その刹那、
「世界最強は、こんな程度で死ぬような人間じゃない」
聞こえるはずのない声が、辺りに響き渡った。
「は?な、なんで・・・」
「お前も、しっかり自分の口で言っていただろ。俺は、世界最強だ。・・・そもそも、なんでお前が知ってんだよ」
「ちっ」
めんどくせぇ。なんで生きてんだよ。しっかり、致命傷を狙って、そのドンピシャに決まった異能力だったのに。
「俺が生きた理由は、お前と俺の差だ」
「は?俺とお前の差?」
「あぁ。全然ちげぇだろ?だって、お前はモブで、俺は世界最強・・・違うか?」
言っていることは正しい。が、とんでもなくイラついた。
「うるせぇよ!!さぁ、数千年ぶりの戦いだ」
「まず、俺はお前を誰だかすら覚えてねぇよ。まぁ、いいよ。やってやろう。さぁ、異能力者か、生身の人間・・・どちらが勝つんだろうな?」
俺がそう挑発すると、そいつは早速攻撃を仕掛けてきた。
「陽炎!!」
「っ!!っぶねぇ」
そうか。俺は身体能力も下がっていたんだった。なんとか避けることは出来たが、
「かすり傷出来ちまったな」
腕から、微かに血が滴り落ちた。
「そんなんで俺に勝てるのか?」
正直、勝算で言えば60%ほどだろう。流石に、生身の人間が異能力を持っている人間に勝てるわけがない。しかし、相手は元世界最強である俺・・・だから、勝算がまだ不明なわけだ。
「お前が来ないなら、俺がお前をやっちまうぜ?」
そうだな。なんだか、今なら行ける気がする。
「よし、やってみるか」
この感覚・・・いつぶりだろうか。今、俺の胸のうちが沸々と、沸騰している感じがした。それは、何かが浮かび上がってくるような、そんな感覚。
「っ・・・」
少し、横腹に痛みが走った。そりゃそうか。この感覚、久しぶりだしな。しかし、本当にいけるんだろうか?
「まぁ、なんとかなるか」
とりあえず、やるだけやってみよう。俺は、大きく息を吸い上げて・・・
「発動」
そうして俺は、
「ぐっ・・・ぐぁぁぁぁ!!!」
「は、はぁ?」
「いける・・・俺は、いける」
なんとか、力は保っていられる。これも、火事場の馬鹿力・・・というやつだろうか。異能力が、覚醒していた。封印してたはずの、異能力が。
「な、なんだよお前は・・・。異能力、使えないはずじゃなかったのか!?」
「前は。だな。今を見てみろ。俺は今、何をしている?」
「はぁ。意味わからねぇ。ただ、お前が発動させる前に殺ればいいんだろ?だったらやってやるよ!!」
そうしてそいつは迫ってくる。
「出落ちだ。小僧」
俺は、そのナイフを構えて、言った。
「剣義・垂乱」
俺が、そう言い放ち、ナイフを振り下ろした瞬間、
「うがぁぁぁ!!!」
目の前にたっている男から、断末魔が聞こえた。鈍い音を立てて、そいつの体が切れた。
「俺に勝てると思うな。なんせ俺は・・・」
一泊を置いてから、俺は言い放った。
「世界最強だからな」
俺は、そう言い捨てて、その場から離れるのであった。




