2話
「初めまして、セアリネス様」
綺麗な声でにこっと笑うその姿はとても美しく可愛らしく、何故監視を願うのか分からない程だった。
「すまぬな、セリアンヌ殿…娘を宜しく頼む」
王はひと目も娘、リュセアンネを見ずにそう述べた。
そそくさと逃げる様に下僕と部屋を出ていく者は、
とてもこの莫大な国の頂点とは思えなかった。
「初めまして、リュセアンネ様。我が名をセアリネスと申します。今宵は貴女様の保護を命じられまして」
「敬称は要りませんよ。貴方の方が立場は上でしょう」
余裕の笑みを浮かべながら話すリュセアンネは少し恐ろしさを醸し出していた。
「立ち話も何ですし、お座り下さい」
大きな細長い窓の傍にある椅子を引かれ、腰を下ろした。何処か窮屈そうなリュセアンネを横目に部屋を観察した。天井は高く、シャンデリアが輝き、美しいレースが光に反射して輝いていた。埃などひとつも見えない綺麗な部屋だった。
リュセアンネはそんな私を見て薄く微笑み、反対側の椅子に腰掛けた。
「では、リュセアンネ嬢…。何故私は呼ばれたのでしょう?見受けるに貴女は唯のお嬢様にしか見えないのですが」
この発言が失礼に値すると気付いたのは言ってから。取り繕う訳にもいかず諦めた。
「…何故でしょうか。私にも分からないです。
お父様が私の事を忌み嫌っているからではないでしょうか」
先程まで余裕だったのも忘れる位悲しそうで、同情を誘う表情に切り替わった。表情がころころ変わる女は昔から苦手だ。
「忌み嫌っている、ですか。それは、貴女が'死霊術師'だからですか?」
死霊術師とは、死者を操る魔法使いの様なものだ。
通常の魔術を使うこともできるが、死者と会話ができたり、操れたりすることに長けている。
純人間の中で死霊術師が産まれるということはかなりの確率だろう。忌み嫌われているのは当たり前だ。
「その呼び名は嫌いです。ネクロマンサーと言ってくれませんか?」
「ネクロマンサー?異国の言い方ですかね。」
「ええ。死霊術師なんて人聞き悪いじゃないですか」
くすっと笑って此方を覗き込む女は何を考えているのか分からなかった。




