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第48話 第7節「影の軍靴、王都に迫る」

 夜が明けぬ王都――黒殻街の地下で、ルークスたちは新たな目的に向けて立ち上がった。だがその頃、地上では、すでに“動乱の兆し”が姿を現し始めていた。


 聖堂広場にて、整然と行進する白銀の騎士団。


 それは、教会直属の【熾天のセラフ・ガーディアン】――対魔族殲滅を専門とする、選民思想の中核を担う精鋭部隊である。


 隊列の先頭を歩くのは、神聖教会副主席にして“処断者”の異名を持つ、ガラティア司祭。隻眼のその男は、かつて影教団討伐で数百の民間犠牲を“誤射”として葬り去った冷酷な男だ。


 「民は騒がしい。裏界の呪いを恐れ、異端の噂に揺れている」


 彼は振り返り、従う司祭騎士たちに告げた。


 「この動乱を鎮めるには、圧倒的な“正義の光”が必要だ。焔の粛清を……再び」


 その言葉に、整列した騎士たちが一斉に膝をつき、聖典を掲げる。


 「主の御名により、異端を祓う。我らは神の刃、御心の代行者――」


 一方、王宮でも異変が起きていた。


 王妃フィオナ・レクスは、謁見の間で密かに進言を受けていた。相手は、王国軍の左将・ラゼルド将軍。魔族との前線で名を馳せた老将だ。


 「陛下、これは“内戦”の火種にございます」


 ラゼルドは地図を広げ、聖堂地区に集結する教会軍の動きを指し示す。


 「今、王都内で“異端者の反乱”が起きているとの報告が教会筋から上がっております。ですが、それは明らかに捏造の匂いがする。教会は“敵”を仕立て、王家の軍権を奪おうとしているのです」


 フィオナは目を伏せたまま、手にした文書を見つめる。


 そこには“囁かれし者”の名が記されていた。かつて“神聖騎士団”に所属していた、失踪者リストの一人。だがその記録には不自然な改竄跡があった。


 「あなたの言葉が真実なら……ルークス様が向かう“真聖堂”こそが、火種の中心ということになります」


 ラゼルドは静かに頷いた。


 「ルークス殿こそ、唯一この国を変え得る存在。しかし、教会にとっては“最も都合の悪い存在”……おそらく、近いうちに“処断令”が下る」


 その瞬間、王妃の瞳が鋭く細められた。


 「――私が動く時が来たということですね」


 王家と教会、そして地下からの変革者たち。三つの力が、いま王都の空の下に集まりつつあった。


 その日、王都の空は曇り、夜明けは訪れなかった。


 だが、誰もが知っていた。次に射す光は、“正義”と“真実”の名のもとに選ばれる。


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