表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
162/175

第47話 第7節「第二の神格審判者、降臨」

神域の天頂が割れた瞬間、光と闇がねじれたような衝撃波が辺り一帯を包み込んだ。


 突如として現れた“第二の神格審判者”は、先ほどのアルノとは異なる造形をしていた。全身が白銀の装甲で覆われており、その表面には多数の“聖句”が魔力紋章として刻まれている。それはまるで、教会が“神”そのものを象って造り上げた偶像のようだった。


 ――神の名を騙り、正義を着飾った虚飾の怪物。


 「自己認識コード:ゼロス。任務:神格反逆因子の排除」


 その無機質な声が、空間全体に反響した。


 「来たか……」


 ルークスが一歩前へ出る。黒き“影の聖印”が彼の背中で脈動していた。


 対するゼロスは、胸部に内蔵された“聖印連結炉”を稼働させる。


 「魔力出力、三十五万ルクス……。規定値、超過。概念干渉モードへ移行」


 「こっちは……人の希望ってやつを信じてみよう」


 ルークスは足元から力を引き上げるように魔力を纏い、“影の真理式”を展開した。これは“始源の教義”をもとにした再構築魔法――“自由と共存”の理を概念として構築する技術だ。


 ゼロスが咆哮するように空間を断ち割り、光刃の柱をルークスへと放った。


 だがその瞬間、ルークスは一歩も動かず、ただ片手を前に翳した。


 「《理象干渉式:黒葬盾界ヘル・カーテン》!」


 炸裂音と共に、黒き障壁が空間を歪め、ゼロスの光刃を吸収するように呑み込んだ。


 「解析不能……この魔力構造……存在しない理論式……!」


 ゼロスの計算演算領域が混乱を起こしている。


 「“存在しない”んじゃない。“消された”だけだ。教会が都合よく、真実を消し去った」


 ルークスはすでに次の魔術式を編み上げていた。


 《概念式・双環具現――黒槍“オルタリア”》


 闇と銀が交錯する双槍がその手に具現される。


 ゼロスが迎撃に出ようとしたその刹那、背後から別の影が飛び出す。


 「遅れてごめん……でも、間に合った!」


 セリナが詠唱を終えた神聖光陣が、ルークスの周囲に展開される。それはただの補助魔法ではない。“真の聖女”として覚醒したミュリナが、彼女に託した祝福だった。


 「《聖紋解放――盟光めいこうの共鳴》!」


 ルークスの身体を包む闇の魔力に、聖なる加護が同調する。矛盾するはずの闇と光が、彼の意志のもとでひとつの力として結実した。


 「ゼロス、今度はお前が問われる番だ。“神”とは何か。“正義”とは何か――!」


 ルークスが双槍を構え、駆け出す。


 衝突する二つの“神格”。

 その余波だけで空が裂け、地が割れ、神域の構造自体が崩壊を始めた。


 「迎撃開始……対象、“理性をもって抗う者”と認定。存在価値、即時破棄対象に再分類」


 ゼロスが天から“審判の剣”を召喚する。


 しかしその剣が振り下ろされるよりも速く、ルークスの黒槍が宙を裂き、正面からゼロスの胸部へ突き刺さった。


 「コード接続……断絶。誤作動……発生……――」


 ゼロスの身体が揺れる。機構が焼け焦げ、光が散る。


 「まだだ。これは……終わりじゃない」


 ルークスがゼロスの中央炉に手を当てる。


 「今度は“お前”の中にある人の声を、探す番だ――!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ