表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
154/175

第46話 第8節「双核共鳴と“魔導の超越”」

轟音――雷鳴にも似た魔力の炸裂が、大聖堂を揺らした。


 ルークスの背に発現した第二の魔核が共鳴を始める。ミュリナの“癒しの概念”を転用したこの魔核は、彼の体内で緻密に分割された神経・筋肉・魔力線の修復を、戦闘中にもリアルタイムで行い続ける。


 まるで、戦いの最中に“死と蘇生”を繰り返すようなものだった。


 「これが……“連結核動作ツイン・リアクター”か」


 吐き捨てるように呟きながら、ルークスは前傾姿勢から一気に踏み出す。

 その動作は、人の視認可能域を超えていた。彼の身体はもはや“戦士”ではなく、“戦闘理論そのもの”に近づきつつある。


 一方、浮上したアグレオスも反応する。


 「――対象の魔力位相、変動検知。確率予測モード、解除。即時反応型戦術へ移行」


 巨大な右腕が前方に迫り、空気を裂く。だが、ルークスはその一瞬の“魔力硬直”を読み取り、回避行動すら行わず――むしろ飛び込んだ。


 「甘い!」


 ルークスの右手が、そのまま敵の胸部の中央、“コアユニット”へと突き立てられる。


 だが、突き破る直前で弾かれた。


 「チッ……防御結界が三重か」


 アグレオスの中枢は、神聖術式による多層結界に守られていた。そのすべてが、対“魔族系存在”への完全防衛を前提に設計されている。


 (ならば……!)


 ルークスは即座に次の手を選択する。

 自らの左掌をかざし、魔力を“時間”の位相に変換。ミュリナの癒しの核と、自身の破壊特化核を同時起動させ、ある種の“矛盾干渉”を起こす。


 「《時相偏向クロノ・ディストート》」


 空間が歪んだ。

 正確には、“この攻撃が成立した”という事実を、物理的な因果に先行して発生させるという、禁忌の魔術理論。


 アグレオスの結界が三重に存在していたはずの場所が、次の瞬間――既に破壊された状態として“確定”されていた。


 「――バカな……」


 ジェイドが呆然と呟いた。空間の定義すら書き換えるその魔術は、もはや“人の知”では扱いきれない領域。


 「これが、“概念魔導”の真髄だ」


 ルークスが腕を突き入れると、ついにその指先が、アグレオスの中枢“神核”へと届いた。


 《神威中枢・アグレオスコア》。

 それは、かつて神代の時代に造られた神の欠片――“降臨の欠片”をベースに構築された、擬似的な神性ユニットである。


 「さあ、終わりにしよう」


 ルークスは魔核を集中させ、全魔力を右腕に込めた。

 そして――


 「《破戒結晶・双核終律デュアル・コード・ブレイカー》!」


 咆哮と共に、アグレオスの全身に無数の雷と光が奔り、構造を内側から崩壊させていった。


 「コア、機能停止……全機構……解体モードへ……移行……」


 アグレオスは、まるで意思を持った存在のように、最後の言葉を漏らした。


 その巨体は、崩れ落ちるように地に膝をついた。

 そして――ルークスの眼前で、静かに停止した。


 「……終わったな」


 静寂が訪れる。瓦礫の舞う大聖堂跡に、ただ一人、立ち尽くすルークス。

 彼の身体からはなおも熱気と魔力が立ち昇っているが、その瞳は確かな勝利の光を宿していた。


 「これが、俺の“戦い方”だ……!」


 そしてその背後で、ミュリナとジェイドが、崩壊した天井の裂け目から差し込む光を背に、駆け寄ってくる――


 神との戦いは、まだ終わらない。

 だが確かに今、神に抗う者としての“資格”が、ルークスに刻まれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ