表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
153/175

第46話 第7節「神威と魔核、激突の刻」

空間が、吠えた。


 《神威兵装・アグレオス》の巨腕が振り下ろされるたび、大聖堂の壁が崩れ、床石が隆起し、魔力の奔流が天井を貫く。


 その攻撃は、ただの質量ではない。

 光の粒子――いや、“聖印”を模した封魔術式によって強化された破壊。対象の魔力構成を解析し、そこに“神罰”を刻み込むことで、存在ごと浄化しようとする――対魔術師特化の構造。


 「ちっ、避けても魔力が削られる……!」


 ルークスは跳躍し、魔力障壁を斜めに展開して直撃を受け流す。全身を包む黒銀の雷が、空中に散った瓦礫を瞬時に蒸発させる。


 (この兵装……完全に“対俺”用に設計されてる)


 彼は瞬時に解析した。

 アグレオスの攻撃は、ルークスの持つ“多重魔核構造”の魔力波長を自動照準する機構で構成されていた。つまり、“魔核を起点とする強化系能力”に対し、異常なまでに最適化されている。


 (ならば、逆を取るしかない)


 ルークスは腰の短剣に触れる。

 それは、ただの金属片だ。魔力も、呪具としての性質も、持たない――はずだった。


 「《零式解放・型無し》……!」


 黒雷が短剣に絡みついた瞬間、その刃が薄く震えた。

 刃に宿るのは、“概念操作”の力――この世界の理に縛られない、異世界由来の力である。


 「アグレオス。お前の分析に、この力は含まれていないだろ」


 ルークスは瞬時に肉薄する。巨体ゆえの死角、関節部の魔力節点を一点突破する最短経路を――


 「――斬る!」


 瞬間、世界が光に染まった。


 ルークスの放った一閃が、アグレオスの右膝関節部を寸断する。雷とともに迸ったのは、紅の閃熱。神威兵装の身体がたしかに揺れた。


 「効いた……!」


 「分析中……対象、規格外の魔力波形……判定不能」


 アグレオスの機械音声が、ほんの一瞬だけ――“困惑”を含んだように聞こえた。


 だが、すぐに状況は一変する。


 「全機能、限定解除。最終戦闘領域へ移行」


 ドォォォン――!


 アグレオスの背部から浮遊ユニットが展開され、浮上。全身の節点が開き、内蔵兵装が次々と起動する。高密度の聖光ビームが乱射され、周囲の建造物が連鎖的に崩壊していく。


 「くっ……!」


 ルークスは飛び退き、神殿の柱の影に回避する。


 「こっちも、まだ“奥の手”が残ってるんでな――!」


 彼は袖から小さな水晶片を取り出す。それは、ミュリナがかつて“癒しの神殿”で見つけた奇跡の結晶――《記憶結晶》。


 「“概念魔核・連動起動”……ミュリナ、借りるぞ」


 瞬間、結晶が光を放ち、ルークスの背に“もう一つの魔核”が発生する。

 それはミュリナの持つ癒しの神核と同質――“命を癒し、傷を拒む理”。それをルークスの魔核に“逆流”させることで、身体能力と回復を極限まで引き上げる“破断再生型”構造へ変質させたのだ。


 「さあ、神造兵器。次は、こっちの番だ」


 雷と光が交錯し――最終戦闘、第2ラウンドの幕が上がった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ