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第41話・第2節「聖堂戦争の開幕」

聖堂内部の空気は、まるで時間そのものが止まったかのように重く、濃密だった。石造りの高天井には、神々の物語を描いたフレスコ画が描かれていたが、それを見上げる者は誰一人いない。


 「……構えろ!」


 魔導官の号令とともに、聖騎士たちが一斉に武器を抜く。銀光を帯びた剣と槍が一斉にルークスたちに向けられ、殺気の波が押し寄せてきた。


 「来るぞ!」


 ルークスは前方に手をかざし、瞬時に魔力を編む。空間が歪み、彼の周囲に六重の防御結界が展開される。それは魔導理論に基づいた極限まで効率化された構造魔術――「多重因果盾カスケード・シールド」。


 同時に、ミュリナが唱える。彼女の手から放たれた光は、味方全員を包み込み、身体能力と魔力反応を一時的に増幅させた。


 「《聖域拡張・祝福のサンクティア・グレイス》――行ける!」


 ジェイドは叫びながら最前線へと飛び出した。彼の剣は、もはや物理の法則を超えていた。鍛え抜かれた剣術と、ルークスの魔術による強化が融合し、彼の一撃は鋼をも断ち切る刃となっていた。


 「喰らえっ!」


 ジェイドの剣が、一人の聖騎士の盾を粉砕し、そのまま肩口へ斬り込む。鮮血が飛び散り、敵は呻き声とともに崩れ落ちた。


 「包囲を狭めろ!中央突破はさせるな!」


 敵指揮官の怒号が響く。しかし、その声もミュリナの《幻光障壁》によって歪められ、味方の連携は著しく乱された。


 「セリナ、右翼を撹乱してくれ!」


 ルークスが叫ぶと同時に、彼女は黒衣のように動いた。足音ひとつなく聖騎士の背後に忍び寄り、麻痺針と幻影符を巧みに使って敵の注意を引き裂いていく。


 「……この程度の防衛で、真実を守れると思ったのかしら?」


 彼女は冷笑を浮かべると、封印術式を組み上げた印符を床に滑り込ませた。瞬間、聖堂全体に奇妙な低音が響き、天井から下がる巨大な聖具が震え出す。


 「ルークス! 本殿の奥に神罰機構が反応してる!」


 ミュリナの警告に、ルークスはすかさず指示を飛ばす。


 「全員、前線突破! 本殿に“始源の真実”があるはずだ!」


 ――だが、その瞬間だった。


 「《断罪光輪・第七階位――天撃槍》!」


 大理石の階段上に立つ魔導官の一人が、天から放たれる一条の光を具現化させ、槍と化してルークスに向けて撃ち放った。


 「クッ……!」


 直撃の寸前、ルークスは咄嗟に防御陣式を再構築。空中で“カスケード・シールド”の強化型を強引に形成し、槍の直撃を逸らす。


 「――無理矢理過ぎたか……っ!」


 結界は砕け、魔力の奔流が体表を焼いた。それでもルークスは、足を止めなかった。


 「行くぞ……! 本物の“神の意思”を暴くために!」


 その叫びは、聖堂に響き渡る鐘の音とともに拡散し、神聖な空間の仮面を剥ぎ取っていくかのようだった。


 ミュリナの治癒光がルークスの傷を癒し、ジェイドの剣が次なる敵を切り開き、セリナの術が陰から撹乱を続ける。


 そしてルークスは、本殿の巨大な扉の前にたどり着いた。


 ――この扉の先に、すべての真実が眠っている。


 「行くぞ……!」


 その声とともに、彼は扉に手をかける。


 聖堂の心臓部が、ついに開かれようとしていた。


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