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第39話・第1節「真聖堂への突入」

王都中央、白銀の陽光に包まれる“真聖堂”。


 それは本来、祈りと救いを象徴するはずの場所だった。だが今、その内部には信仰ではなく、監視と選別による静かな支配が息づいていた。


 ルークスたちは、ついにその中枢へと歩を進める。


 「――このまま表口を突破するつもりか?」


 ジェイドの問いに、ルークスは小さく頷いた。


 「正面から入る。あえて“敵意”を隠さず、“宣言”として突入する。俺たちが“異端”ではなく、“真実を携えた存在”であると、全王都に知らしめるために」


 それは無謀とも取れる選択だった。だが、それこそがルークスの覚悟の現れだった。


 聖堂前の広場には、白装束の教会騎士団が並び、整然と立ちふさがっていた。中央には、煌びやかな刺繍を纏った神官長――“白の法衣”を着た老人が立っている。


 「ここは神の御前。異端者の侵入を許すわけにはいかぬ」


 その声は威厳に満ちていたが、どこか“作られた正義”の臭いがした。


 ルークスは一歩、前に出る。そして、その手に“始源の聖典”の写しを掲げる。


 「神の名の下に問う。お前たちが信じている“選民の教え”は、本当に神の意志なのか?」


 その言葉に、周囲の空気が凍りついた。


 「……黙れ! その書は“異端の魔典”だ!」


 神官長の声が上ずる。その背後で、一部の若い騎士たちは戸惑いの表情を浮かべていた。


 その瞬間、ミュリナが一歩進み出る。


 「私はかつて、教会の聖女として選ばれた者。でも、偽りの教義を知り、命を狙われ、命からがら逃げ延びた」


 ミュリナの声は震えていなかった。それは、多くの喪失と覚悟を背負った者の声だった。


 「今ここで、あなたたちに問います。何が“救い”で、何が“呪い”なのかを」


 その言葉に、数名の騎士が思わず剣を構える。しかしその場を動いたのは、彼らではなかった。


 ――ルークスの魔力が炸裂する。


 彼は右手を掲げ、真上の空間に魔導陣を展開した。それは記録魔術による投影陣――すでに“影の神殿”で入手した教会の内部資料、聖印管理機関の設計図、“異端追放者リスト”が、王都全域に投影された。


 「見よ。これが、お前たちが“正義”と呼んだものの正体だ」


 神官長が叫ぶ。


 「――記録妨害を! 陣を破壊しろ!」


 だが、ジェイドとセリナが既に周囲の結界を無効化していた。


 「逃げ道はない。今ここで、“光”か“影”かを選べ」


 ルークスの声は、もはや敵意でも怒りでもなかった。彼はただ、真実を携え、目の前の者たちに“選択”を迫ったのだ。


 その瞬間――


 背後の聖堂が軋み、巨大な魔力が炸裂する。


 「……来たか」


 ルークスは空を見上げた。


 そこに現れたのは、教会が“神の代行者”と称する最強の聖騎士――“七耀しちようの守護者”の一人、〈白炎のレミエル〉だった。


 「これ以上、我らが“神の聖域”を汚すな。貴様らに裁きを与える」


 純白の鎧に身を包み、翼のように展開する光の剣を掲げるその姿は、まさに“神の使徒”のように見えた。


 だが――ルークスは、一歩も退かない。


 「……ならば、その光が“誰のためのもの”か。試させてもらう」


 そして、戦端は開かれる。


 真実と偽りが交錯する聖堂の中で、今まさに歴史が動き始めようとしていた――。


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