表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/149

第35話・第2節「召喚陣破壊作戦と教会騎士団の妨害」

王都の夜空に浮かび上がる巨大な魔法陣は、まるで天の裂け目のように淡く脈動していた。


 ルークスたちはその直下、聖堂を取り巻く高層楼の影に身を潜めている。


 「……魔力の密度が上がってきてる。召喚陣の活性化が進行中ってことか」


 ルークスの目は、まるで術式の線一本一本を追うように鋭く動いていた。

 彼の傍らではミュリナが杖を構え、既に治癒と結界の準備を整えている。


 「破壊まで、三分以内に済ませないと、儀式が臨界を迎えるわ……」


 魔力を解析したミュリナの声は焦りを帯びていた。

 そしてその緊張を切り裂くように、王都中に甲高い金属音が響き渡る。


 「来たわね――教会騎士団!」


 空気を裂いて飛来したのは、銀装の騎士たち。光の魔装甲を身にまとい、聖紋剣を携えた彼らは、民衆の尊敬と恐怖を同時に集める教会直属の精鋭部隊だった。


 「異端者、ルークス=ルシェイド、及び関係者。即刻、投降せよ!」


 声を張り上げたのは、教会騎士団の指揮官・オルレアン少将。

 その瞳には激情ではなく、機械のように冷たい信念が宿っていた。


 「問答無用ってわけか……行くぞ!」


 ルークスは大地を蹴った。

 瞬間、彼の背に浮かび上がるのは、古代術式の文様――《時重式・残響》。


 残像を伴って駆け抜けた彼は、聖堂側面の召喚陣へと一気に接近する。


 「遅らせるから、破壊を頼んだわよ!」


 ミュリナは結界を張りながら、正面から迫る三人の騎士を迎え撃つ。

 その背後を援護するように、カイロンが爆符を放つ。破裂音と共に騎士たちの動きが一瞬乱れた。


 「――炎精霊よ、力を貸して」


 ミュリナの詠唱と共に、膨大な熱が空気を裂く。

 放たれた火線は騎士たちの防御魔法を焼き切り、地を焼いた。


 「やるな、だが……我らは退かぬ!」


 騎士団の中でも上位術士とされるグレイが、雷撃を纏った剣でミュリナに迫る。

 その一瞬、横合いからカイロンの刃が割り込んだ。


 「ここは通さねえぞ。あいつは、もう怯えて隠れてるような女じゃねぇんだ」


 交錯する刃、炸裂する魔法。狭い路地はすでに小規模な戦場と化していた。


 一方、ルークスは召喚陣中央の刻印を解析し、術式の中枢を発見していた。


 「……ここを断てば、陣全体が崩れる!」


 彼の手に握られたのは、“始源の剣核”。古の遺物より抽出された純粋魔力の結晶で、触れるだけで空間を切り裂くほどの力を秘めていた。


 「いけっ――!」


 剣核を投擲し、召喚陣の心臓部に突き刺す。その瞬間、巨大な術式が歪み、天を裂くような音と共に崩壊が始まる。


 「ルークス、成功したの……!?」

 

 「……いや、まだだ!」


 その時、空間のひび割れた一部から“何か”が漏れ出した。


 影。

 炎。

 そして、耳を劈くような“啼き声”。


 「まだ、儀式の一部が……!」


 封印は完全に破られていなかったが、“呼び出されかけた存在”は名残の一部を現界させようとしていた。


 「ミュリナ、結界を最大に!」


 「了解――光よ、我らを守れ……!」


 光の壁が張り巡らされる中、街の人々はまだそれに気づいていなかった。


 だがその夜、王都の空に走った不自然な閃光と耳鳴りのような啼き声は、“何か”が始まりつつあることを告げていた。


 ――そしてルークスたちは、確信する。


 これはただの戦いではない。

 “信仰”と“真実”の全面衝突――その序章にすぎないのだと。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ