第5話 小さな家にさよならを
最近、わたしには悩みがある。それは、一つのベットに3人で寝ていることだ。ルイナとリリィが来る前は一人で寝がえりが打てるくらいの広さを使っていたが今ではルイナがわたしの左腕を抱き枕に、リリィは黒猫の姿でわたしの右足を枕にしている。ルイナをどかそうとすると腕を強く握られリリィをどかそうとすると爪を立ててくる。だからわたしが起きるのは二人が起きてからだ。
そのことを当の本人たちに聞いてみるた。
「何かに抱き着かないと安心して眠れないんだ」
「ご主人様の足の高さがちょうどいいんですよ」
二人はパンを食べながら答える。わたしは安眠グッズでも枕でもないんだけど。
皿に置いてあるパンを手に取り家のことを考えた
(そもそも最低限の家具しかない小さな家に3人で住んでるのが問題なのではないか。この辺りは広いし土地ならいくらでもある。
今より大きな家を建てても問題ないのでは?)
「ねぇ、今より大きい家建てていい?」
この一言に二人は目を丸くして驚いた。
それもそのはず唐突にこんな発言をしたら誰だってこんな反応になるだろう。
「いや、まぁ、今より大きな家を建てることには賛成なんだけどもしかしてユウが建てるのか」
「うん。必要な素材があれば建てれるよ」
ルイナが半信半疑で聞いてくる。
無理もないだろう。わたしも家なんか建てたことがないがスキルのジョブチェンジ【マジックビルダー】を使えば家を建てれるかもしれない。【マジックビルダー】は
作りたい物を紙に描きその紙を魔法陣の上に置き魔力を込めると完成するといったものだが作りたいものによっては魔力の消費が激しいことがデメリットでもある。
「それじゃあどんな家にするかみんなで考えよう」
「おー」
「おー」
二人は声を揃え腕を上げる。
わたしは大きな紙を机に広げ【マジックビルダー】で作ったペンを持った。向かいにはルイナとリリィが座っている。
三人で話しながら設計図を描いていった。でもまぁ、ほとんど落書きのようなものだ。そして三人で出した意見をもとに描いた落書きのような設計図が出来上がった。あとは作りたい場所に大きな魔法陣を描いて魔力を込めれば完成だ。
わたしは外に出て新しい家が収まるほど大きな魔法陣の中心に設計図を置いた。準備は完了だ。
ルイナとリリィが見守る中わたしは大きな杖に魔力を込め始める。頭の中に描くのは家の完成形。外観、内装、部屋の数、小物の配置そのすべてを細かくイメージする。
体の中から魔力が減っているのを感じる。完成まであと少しだ。
「か、完成だー!」
「やったな、ユウ。今の家よりもでかいぞ」
「さすがですご主人様!まさかこんな立派な家を建てられるなんて」
三人の前にはまるでおとぎ話に出てきそうな二階建てのログハウスが建っていた。
ルイナは目を輝かせながら走って完成したばかりの家へ入りその後ろをリリィと二人で荷物を持ち歩いて家へ向かった。
「わぁーひろーい!」
視界の先には広々とした空間があり正面には浴室や洗面所につながる扉がありが今は閉じられている。右側にはカウンターキッチンと六人は座れるテーブルがあり、左側には二階に上がるための階段と暖炉とソファーがありその間にはローテーブルが置いてある。
二階は客間を含め個人部屋が六部屋あるが部屋自体はそこまで大きくなく、ベットとタンスと机が置いてあるだけだ。
「ところでユウ、元の家はどうするんだ?壊すのか」
「いや、壊さずに倉庫として使うよ」
確かにもう使わないし取り壊しても良かったけど食料や消耗品を大量に保管出来る倉庫として使えると一人で決めていたのだ。
「お二人共スコーンを焼いてみたのでお茶にしませんか」
リリィはお盆に三人分のお茶とスコーンをローテーブルへ運んできてくれた。
淹れたてのお茶は大量の魔力消費で疲れた体を癒してくれる優しい味わいでとてもおいしかった。スコーンは初めて作ったとは思えないほどよくできていて正直びっくりした。作り方を口頭で軽く説明しただけなのにこんなにこんなにおいしいなんて、リリィにはこれからたくさんの料理を教えていきたい。
そんなこんなで引っ越し作業は無事終わり、わたしはふかふかのベットの上で眠りについた。
次の日
目を覚ました瞬間、全身に身動きが取れないほどの激痛が走った。筋肉痛だ。
普段運動もせずに家で過ごしている人間が急に身体を動かしたのだから体が悲鳴を上げるのも必然だろう。
その後三日はまともに動けなかった。
わたしは今後筋肉痛にならないよう適度に運動することを心に決めた。