第40話 共に歩む未来
人間と魔族の初の対談の終り際、突如発生した呪いの煙。発生源は勇者エギル・ベルエストの呪われた装備からだった。呪いの煙を吸った騎士やメイドが次々に倒れ武力を持つ騎士が起き上がり『魔族・・・滅ぼす』とつぶやきミリティアや達に剣を向けた。呪いの煙により混乱と混沌に包まれた王宮をミリティアのワープゲートを使い逃げだしたユウ、ルイナ、リリィ、ミゼルディア、ミリティア、サフィーナ、ルディーナ、ローゼル、勇者ゼルデアは現在魔王城で大規模な呪いを解くための作戦会議が行われている。
「人間の国にはびこる呪いを解呪するには勇者ゼルデア・ベルエスト。君の力が必用だ」
「俺の力・・・」
「そうだ、君には勇者エギル・ベルエストの呪われた装備の破壊をして貰いたい。呪いの発生源である装備を破壊できれば呪いの煙の発生は止められるだろう」
「それは良いんだがなんで俺なんだ?」
「勇者の使う【聖剣の光】は魔族にとって喰らえば致命傷になりうる攻撃だ。私たちが相手をするより勇者同士で戦った方が勝算がある」
「分かった。そういう事なら任せてくれ」
勇者の使うスキル【聖剣の光】は魔族や魔物が一発喰らえば瀕死になる攻撃スキルだ。たとえその攻撃を受けるのが魔王であっても耐えられる回数は三回程度だろう。
それをわかっていたミリティアは、ゼルデアにエギルの装備破壊を頼んだ。
「ただ、この呪いの解き方がわからないんだ。呪いの装備を壊せば解けるかもしれないし、解けないかもしれない。なんせ術者がすでにいないんだ、どうやって解呪するか・・・」
基本的に呪いを解くためには教会に属している神官や僧侶による解呪の方法と術者を殺す方法の二種類があるが、今回は王都全体に呪いが広まっているため教会が使えず神官や僧侶も呪いを受けている可能性が高いということと、術者の魔女がすでにこの世にいないのでどうやって王都住民全員の呪いを解くかミリティアは頭を抱えていた。
しかし、そこに一人名乗りを上げたものがいた。
「わたしがやるよ。方法なら一つ思いついた」
「ユウ本気なのか?解呪するには・・・いや、ユウに任せよう」
「ありがとうミリティア」
「それじゃあ、あとは呪いを受けた騎士や冒険者の抑制、けが人の治療だな」
「あの私、治療系の魔法使えます!」
ローゼルは手を上げ真っ先にミリティアにアピールした。
「なら、サフィーナと二人で一緒にけが人の治療を頼む。良いかサフィーナ」
「お任せください魔王様!」
「では後の者たちで呪いを受けた騎士、冒険者の抑制をする。時間がない、今すぐ人間の国に移動するぞ!」
そう言ってミリティアは王都行きのワープゲートを開き再び呪いの煙が蔓延する王都へ帰ってきた。呪いの影響でミリティアたち魔族の気配をすぐに察知できるようになったからか大勢の冒険者や騎士がミリティアたちに攻撃を開始した。
「各自散開し各々騎士や冒険者を相手取れ。絶対に殺すなよ、気絶させるだけでいい」
ミリティアの指示でルイナたちは王都各所に散らばり戦闘を始めた。
「さて、わたしはわたしでやることやらないと。ジョブチェンジ!【神官】」
ユウは王宮のてっぺんでジョブを【魔法使い】から【神官】に変更した。そして天に祈りを捧げ始めた。
(お願い、来て・・・)
「そんなに必死に祈らなくてもユウのためならすぐに助けに行くよ」
「フロラス!」
天が光り、神フロラスが現れた。
「ねぇ、フロラス。フロラスならこの呪いの煙なんとかできるよね」
「もちろん!僕にできないことはないからね」
「じゃあ・・・」
「でもそれじゃあ、面白くないからユウにも手伝ってもらうよ」
そう言ってフロラスが指をパチンッと鳴らすとユウの着ている服がまるで女神の様な衣装に変わった。
「ちょっと、なにこれ!?」
「ジョブも変わってるから見てみるといいよ」
そう言われてユウは自分のジョブを確認すると【神官】から【女神】に変更されていた。
「【女神】って何!?」
「それは僕の力の一部を使えるようにした特別なジョブだよ。ちなみにそのジョブは僕がいないと使えないからね」
「そうなの・・・じゃあ今から呪いの煙を・・・」
「まぁまぁ、落ち着いて。まだ勇者君が頑張ってるから」
そう、現在王宮の中では勇者ゼルデア・ベルエストと勇者エギル・ベルエスト
が戦っているのだ。
「魔族・・・滅ぼす・・・」
「目を覚ませエギル!」
ふたりはお互いに攻撃スキル【聖剣の光】をぶつけていた。勇者エギルの装備している呪いの装備になかなかダメージが通らず装備の破壊は難航していた。
「くそっ、何か一撃叩き込めれば・・・」
「ふむ、なら手を貸そう」
遠くからミリティアの紅い炎の槍が飛んできて呪いの装備の一部を破損させた。
「これでいいか?勇者よ」
「あぁ、十分だ」
ミリティアが破損させた場所に向かってゼルデアは【聖剣の光】を放った。すると見事【聖剣の光】は命中し呪われた装備は粉々に壊れ呪いの煙の発生が止まった。だが呪いが解けたわけではなかった。
「あ、勇者と魔王が協力して呪いの装備を壊したみたいだよ。さぁユウ、出番だよ。準備は良い?」
「うん、大丈夫。いつでもいけるよ」
「それじゃあ始めようか」
ユウは呪いを解くために杖を握った。そしてフロラスと二人で詠唱を開始した。
『全能の神フロラスの名の下その力の一端である解呪の法によりこの領域すべての呪いを解きたまえ』
二人が唱え終わるとユウの持っていた杖が光り輝き王都を覆っていた呪いの煙がすべて消え王都に陽の光が差し込んだ。これにより呪いを受けていた騎士や冒険者の呪いは解かれ呪いの影響で倒れていた住民も目を覚まし起き上がり始めた。
この騒動によるけが人は多く確認されているが死者は誰一人として出なかった。
「魔王ミリティアよ、この国を救ってくれたこと、この上なく感謝する。本当にありがとう」
国王ロズベルドは深く頭を下げた。
「なに、気にすることはない。和平を結んだんだこれくらいのことはするさ。それより勇者エギル・ベルエストの処遇はどうするんだ」
「今は気を失って眠っている故目を覚ましたら処遇を決めるつもりだが、勇者という称号、権力のはく奪をしようと思っている」
「妥当だな。それでは私は失礼するよ」
そう言ってミリティアは王宮を出た。
「三人ともお疲れ様」
呪いの煙が晴れ戦闘が終わったころルイナ、リリィ、ミゼルディアはユウのいる王宮のてっぺんにすぐに飛んできた。
「ご主人様もお疲れ様です。この呪いの煙を一瞬で晴らしてしまうなんて、さすがご主人様です!」
「私ひとりの力じゃないよ、みんながいてくれたから。それにわたしがここまでできたのはフロラスのおかげだし」
そう言ってフロラスのいた方を見るがそこにフロラスの姿はなかった。
「あれ、いなくなってる。それに服もジョブももとに戻っちゃった」
「どうしたんだユウ?」
「うんん、何でもない。呪いの煙の騒動も終わったしそろそろ帰ろっか」
「そうですね、あとのことは魔王様が何とかするみたいですし帰りましょうか」
そう言ってミゼルディアはワープゲートを開き四人は家まで帰った。
「そうだ、みんな今日のご飯何が食べたい?」
「シチュー!ユウの作ったシチューが食べたい!」
ルイナは勢いよく一番にそう言った。
「そうですね。まだ肌寒いですしいいですねシチュー」
「ユウさんの作る世界で一番おいしいですからね」
ルイナに続きリリィとミゼルディアもユウの作るシチューを推したため今日の夕飯はシチューとなった。ユウはシチューを作るため材料をマトラ村ので揃え、家に帰りすぐにシチューを作った。
そのシチューをおいしそうに食べる三人を見てユウは微笑ましく思っていた。
そして願わくばこんな日常がずっと続きますように。




