第37話 呪われた魔石
翌日、ユウたちはローゼルとの約束通り王宮の門の前にやってきた。門の前には、すでにローゼルが待っていた。
「おはようローゼル」
「おはようございますユウさん、それにルイナさんたちも。それでは学園に行きましょうか」
ローゼルに案内されユウたちは王立ウェルネシア学園へ向かった。
「ここが王立ウェルネシア学園です」
ここ、王立ウェルネシア学園は王都の北西に位置し広い敷地の中心に校舎が建てられており平民から貴族、王族が入学できる。
「広いね~それに噴水まである」
「あの木は鳥の形をしてるぞ・・・どうなってるんだ」
「あれは芸術の授業の一環で生徒たちが自ら木の枝や葉を切って作るんですよ」
周りに生えている木も何かしらの生き物の形をしていた。
「それではユウさん今日の課外実習の集合場所の裏門に行きますよ」
集合場所である裏門には生徒と各グループを護衛するであろう冒険者がいた。今回の課外実習では各グループ行き場所が違いローゼルたちの行先は学園の北にある小さな村にいる学園の職員にスタンプを押してもらって学園へ帰るのだが道中は魔物のいない街道を通るのではなく魔物が住む森を二日かけて進みながら目的地に向かうのだ。
「私のグループはあそこですね」
グループは四人一組で構成されている。ローゼルのグループにはどこかで見たことのある碧色の眼の金髪の少年がいた。
「なぁ、ローゼルこの人たちが俺たちを護衛してくれる冒険者なのか」
「そうですよ、こちらはユウさん。腕利きの冒険者です。それと《《お仲間》》のルイナさんとミゼルディアさんです」
ローゼルに紹介されたユウたちはぺこりとお辞儀をした。リリィは猫の姿でユウのカバンの中にいる。
「そしてユウさん、こちらが今回、目的地である村まで行動を共にするクラスメイトのネラ・アイリスちゃん、ラムド・ケイナス君そして勇者ゼルデア・ベルエスト君です」
見覚えのある金髪の少年は何と勇者ゼルデア・ベルエストだった。
(そういえば勇者もこの学園の生徒なの忘れてたー!!)
「俺がこのチームのリーダー、ゼルデア・ベルエストです。よろしくお願いしますユウさん」
「う、うん、よろしくね」
意外と礼儀正しい勇者にユウは少し驚いた。
「それでは出発しましょうか」
ローゼルたちは学園の裏門を出て目的地の村を目指し歩き出した。ユウたちはローゼルたちの後ろを歩いていた。道中の森の中で出てくる魔物は低レベルの魔物ばかりで前衛アタッカーのラムドとゼルデアがほとんどの魔物を倒し討ち漏らしを後衛のネラの魔法で倒す。そしてローゼルは三人に支援魔法をかけたり魔物にデバフをかけたりしている。その裏でルイナとミゼルディアは想定レベルより高い魔物を先に狩りローゼルたちの安全を確保していた。
「なぁ、冒険者さんよぉ。あんた冒険者ランクいくつなんだ」
魔物も出ず暇になったからか唐突にラムドがユウに冒険者ランクを聞いた。冒険者ランクとはギルドが定めた階級のことでAからEの基本五段階に分けられており、Aランクの中で特に優秀な冒険者はSランクに昇格する。ただほとんどの冒険者がBからEランクでとどまっている。
「えーっと、Dランクだね」
ユウは自分のギルドカードを見てそう言った。
「Dランク!?俺より下じゃないか。ローゼルこの冒険者大丈夫なのか」
それを聞いていたルイナは怒りに満ちた雰囲気で今にも魔剣を取り出し切りかかろうとしていた。
「失礼ですよラムド君。ユウさんはクラーケンを倒したすごい人なんですよ」
「ローゼルなんでそんなんこと知ってるの!?」
確かにクラーケンを倒したことはアズナドの漁港の人達は知っているが誰が倒したか名前は出してないのでユウとは断言できないはずだがローゼルはなぜか知っていた。
「昨日ルイナさんに教えてもらったんです」
「お茶会の時か・・・」
ユウは頭を抱えていた。
「待ってくれ、クラーケンと言ったらAランク冒険者が十人以上はいないと討伐できない魔物だぞ!それを一人で討伐したってのか」
「いや、さすがにわたし一人じゃないよ。五人で力を合わせて倒したんだ」
「もしそれが本当ならラムド、あんた謝っといた方がいいわよ」
「お、おう・・・ごめん俺が悪かった」
ユウの話を聞いたラムドはすっかりおびえていた。
そんなこんなで特に大きなトラブルもなく夕暮れ時に森を抜け目的地である村までたどり着くことができた。
「はい、これスタンプね。今日はそこの宿に泊まって明日学園に帰ってね」
村で待っていた学園の職員にスタンプを押してもらい宿で一泊した。
翌朝、ローゼルたちは学園を目指さし来た道を戻った。行きとは違い魔物も少なく穏やかな森の中を進んでいた。その時ローゼルたちの行く道を先回りして安全を確認していたリリィがユウのところに走って帰ってきた。
「ご主人様この先に巨大なツインホーンボアーを確認しました。距離はまだ離れているとはいえ戦闘は避けられないかと」
ツインホーンボアーは雷属性の魔物ですさまじいパワーを素早さを持つのが特徴のBランク級の魔物だ。
「分かった。ルイナとミゼでツインホーンボアーを先に倒そう」
「「了解」」
ルイナとミゼルディアはすぐにツインホーンボアーを討伐しに向かった。だが一向にルイナとミゼルディアが戻ってこない。だんだんとツインホーンボアーとローゼルたちの距離が近づいて行く。
「ねぇ、さっきからすごき地響きしてるけど大丈夫なの?」
「どうする、道変えるか?」
「迂回するなら少し戻らないとな・・・」
ローゼルたちが地図を見ていると、木々をへし折りながらすさまじい勢いで巨大な何かが迫ってきた。ツインホーンボアーだ。その後ろにルイナとミゼルディアの姿が見える。ツインホーンボアーは勢いそのままにローゼルたちのところへ突っ込もうとしていた。
「ご主人様!」
「任せて、ジョブチェンジ!【結界術師】多重防御結界起動!」
ユウはジョブを【魔法使い】から【結界術師】に変更し、ローゼルたちを守るように三層の防御結界を張った。一層目と二層目で突進の勢いを落とし三層目で完全に動きを止めた。
「た、助かった」
「あれはツインホーンボアー・・・でもなんだか様子がおかしい気が」
「もしかしてボス固体か?」
「ユウさんどうしましょう」
「安心して、わたしが倒すから。それに、そのための護衛だからね」
ユウはジョブを【結界術師】から【魔法使い】に変更し杖を手に取った。そして、杖をツインホーンボアーに向け風魔法【ウィンドバースト】を放った。その【ウィンドバースト】はあっという間にツインホーンボアーを消し去り残されたのは魔石だけだった。
「すげぇ、ボスクラスのツインホーンボアーを一瞬で魔石に変えた・・・」
「これがクラーケンを倒した実力・・・」
「開いた口が塞がらないわ」
「すごすぎます、ユウさん」
そんな称賛の声をよそにユウは魔石を拾いに行った。
「やっぱりおかしい・・・」
「どうしたんですかご主人様?」
「この魔石、色がくすんでる。それに雷以外の魔力を感じるの」
「本来ツインホーンボアーは雷属性の魔物なので魔石に雷以外の魔力が流れることはないはずですが・・・」
「とりあえず持って帰ろう。今は無事に学園に帰ることが優先だから」
ユウは魔石を拾い上げアイテムボックスへしまった。そしてその後は魔物が少し出現するくらいで森を抜け学園へ帰ることができた。
「ユウさん今回はありがとうございました。帰りに遭遇したツインホーンボアーはユウさんが居なかったらどうなっていたかわかりません」
「わたしもローゼルたちの護衛ができてよかったよ」
それからしばらくローゼルたちと談笑しそのまま解散となった。そして家に帰囘ったユウはアイテムボックスからツインホーンボアーの魔石を取り出した。
「ジョブチェンジ!【鑑定士】」
ユウはジョブを【魔法使い】から【鑑定士】に変更した。【鑑定士】の能力は魔石や毛皮など素材の価値や付与されている効果を見ることができる。
ユウはその【鑑定士】の能力を使いツインホーンボアーの魔石を鑑定した。
「この魔石・・・呪いがかけられてる」
「呪いだと」
「うん、多分誰かから呪いをかけられたか呪われた食物を食べた可能性があるね」
「呪いといえばあの魔女くらいしか思いつきませんけど呪いを使う術者がいるんでしょうか」
「まぁ、今は考えても仕方ないしご飯でも食べよっか」
ユウは魔石を再びアイテムボックスにしまいご飯を作りにキッチンへ向かった。




