第36話 国王からの依頼
「ご主人様冒険者ギルド本部から手紙が来てますよ」
昼頃リリィが玄関先に置かれた一枚の手紙を持ってコタツにいるユウに渡した。手紙には【三日後、ギルド本部に来るように】と書かれていた。
「また呼び出しか?」
「そうみたい・・・」
ユウは嫌そうな顔をしながらギルド本部からの手紙を眺めていた。
「なぁ、ユウ。それ付いて行っていいか?またあんな目に合うのは耐えられない」
ルイナはユウに身体を寄せユウにそう言った。ユウは過去に王都で魔女からの呪いを受け箒に乗って帰っているときにその呪いが発動し空中から落下し死にかけたことがある。それをルイナは知っているからユウを一人にしたくなさそうにしている。
「わたしだって皆と一緒に行きたいけど王都には魔物や魔族を入れさせないために結界が張ってあるからミリティアのワープゲートを使わないと一緒に行けないんだよ」
「ユウさん、私ワープゲート使えるようになったんで一緒に行けますよ」
ユウがみんなで一緒に王都へ行けないことを悩んでいると同じくコタツでうつぶせになっていたミゼルディアがそう言った。
「ミゼそれは本当なのか!?」
「えぇ、前にミリティア様から教えてもらったんですよ。これで魔界にも行けますし一度行ったことのある場所ならいつでもすぐ行けますよ」
ミゼルディアが魔王ミリティアに教えてもらったワープゲートを創り出す魔法はごく一部の魔族しか使えない空間移動魔法の一つで。ユウも一度ミリティアから教えてもらおうとしたがミリティアから難しいと言われた程だ。
「う~ん、じゃあ皆で王都に行こうか」
そして三日後、ミゼルディアのワープゲートを使って四人は王都の人気のない路地裏にワープした。
「リリィおいで」
猫の姿になったリリィをユウが抱えギルド本部へ向かった。王都のギルドハウスの受付嬢に手紙を見せると奥の応接室に案内された。
「おう、来たかユウ。後ろのお二人は連れか?」
応接室にはスキンヘッドで筋骨隆々のギルドマスター、マグル・ヘルトがいた。
「わたしの家族ですよ。それで、今日はどのようなご用件でしょうか」
「そうか、家族なのか。まぁ、そこに座ってくれ。今日はお前さんに特別な依頼が来ててな」
「どんな依頼ですか」
ユウたちがソファーに座るとマグルが一枚の依頼書をユウに渡した。
「王立ウェルネシア学園の課外実習の引率?」
「そうだ。明日から行われる課外実習に毎年冒険者を同行させているんだが国王様と女王様の推薦でお前さんが選ばれたってわけだ」
(あの二人の推薦か・・・そういえばローゼルはあの学園の生徒だったっけ)
「分かりましたこの依頼、受けます」
ユウは少し悩んだ後そう言った。
「そうか、ありがとうな。報酬は国王様から出てるから先に渡しとくぞ」
ユウはマグルから報酬の金貨五十枚の入った袋を受け取った。
「こんなに貰っていいんですか!?」
「それほどお前さんを信用してるんじゃないか?それともう一つ渡しておかないといけないものがあったんだった」
マグルはもう一つの手紙をユウに手渡した。
「これ、ローゼルからの手紙だ」
その手紙には【この手紙を読んだなら王宮へ来てください】と書かれていた。
「どうするユウ、ローゼルのいる王宮に行くのか?」
「ローゼルが来てほしいって言ってるし王宮に行ってみようか」
ユウたちはギルド本部を出て王宮へ向かった。王宮の中へは正門の前にいる騎士に通行書を見せることで中へ入れる。王宮の王扉を開けるとメイドが一人待っていた。
「ローゼルから手紙をもらってきたんですけど・・・」
「お待ちしておりましたユウ様。ローゼル様がお部屋でお待ちです。お連れ様もご一緒にどうぞ」
ユウたちはメイドの案内でローゼルの部屋に移動し扉を開けた。
「ユウさん!それにルイナさんとミゼルディアさんとリリィさんも来てくれたんですね」
部屋に入るなりローゼルは嬉しそうな笑顔で出迎えてくれた。
「やぁ、ローゼルこの前マトラ村のパン屋に来てくれたそうだね。ルイナから話は聞いてるよ」
「あのパンをユウさんが作った物なんですよね。とってもおいしかったですよ」
「ところでローゼルなんで私達をここへ呼んだんだ?」
「今日はお茶会をしようと思いまして依頼書と一緒に手紙を送らせてもらったんです。まさかルイナさんたちもいらっしゃるとは思ってもいなかったので・・・ここでは狭いですので庭に移動しましょうか」
ユウたちが廊下を歩き庭に移動していると正面から見覚えのある長い髪の女性と目が合った。女王カルミア・ハイビスだ。
「ローゼル!あら、今日はたくさんお友達が来てるのね。でもちょっとユウちゃんを借りていくわね」
「ちょっと、カルミアさん!?」
カルミアはユウの手を引いてどこかへ行ってしまった。
「なんだったんだ一体。ユウに何か危害を加えようとしてるんじゃないだろうな」
「大丈夫ですよ、あれは私の母ですので。きっと何か大事な話でもあるんじゃないですか」
ローゼル達はカルミアに連れていかれているユウを見送り再び庭に向かって歩き始めた。
「ごめんなさいねユウちゃん。今すぐ伝えなきゃいけないことがあって」
「まぁ、いいですけど・・・伝えなきゃいけないことって何ですか」
「それはロズベルドさんが話してくれるわ」
そう言ってカルミアは執務室の扉を開けた。そこには国王ロズベルド・ハイビスが椅子に座り待っていた。
「来てくれたかユウよ」
「来たというか連れてこられたというか・・・それでわたしに何か話があるんですよね」
「あぁ、そうだ。依然話した人間と魔族の共存について話だが議会で話が通った。この手紙を魔王に渡して欲しい。その手紙には対談の日時が記されている」
「分かりました」
ユウはロズベルドから魔王宛ての手紙を受け取った。
「それにしても本当に人間と魔族の共存について話が通ったんですね」
「そうだ。貴族や各国をすべる者を説得するのに手間取ったが何とか魔王と対談することができる。もしこの対談で人間と魔族の共存が実現すればこの世界は大きく変わるだろう」
ロズベルドは窓の外の青空を見ながらそう言った。
「話は変わるが明日の課外実習の引率兼、ローゼルの護衛の依頼は引き受けてくれたか?」
「はい、受けましたよ。報酬も先にもらってます」
「そうか、では明日から娘を頼むぞ」
そしてユウは執務室を離れた。
「ねぇ、ユウちゃん。今日一緒に来てた子たちってユウちゃんの家族の子?」
カルミアは廊下から楽しそうにお茶会をしているルイナたちを見てユウに質問した。
「そうですよ。あぁ見えて三人とも魔族ですよ」
「そのことはローゼルに伝えてるの?」
「はい、ちゃんと伝えて彼女たちが魔族だと知ったうえで仲良くしてくれるとっても優しい子ですよ」
「そうなのね、あの子たちがローゼルのお友達で良かったわ。さ、ユウちゃん一緒にお茶会に混ざりに行くわよ」
カルミアはユウの手を取り庭へ向かった。その後、六人でお茶会を楽しみあっという間に時間が過ぎていった。
「それじゃあ今日はこの辺でお暇させてもらいますローゼル、お茶会に誘ってくれてありがとう」
「私もユウさんたちとゆっくりお話ができて楽しかったですよ。ところで明日は・・・」
「ウェルネシア学園の課外実習の引率の依頼を引き受けたから明日からよろしくね」
「本当ですか!やったー!もしかしてルイナさんたちも一緒ですか?」
「あぁ、もちろん我々もユウについていくからな」
明日ウェルネシア学園の課外実習の引率でユウたちがが来てくれることを知ったローゼルは嬉しそうに飛び跳ねた。
「ユウさん一つお願いがあるのですが・・・明日一緒に学園に行きませんか?」
「そうだね、わたし学園の場所知らないから是非一緒に行こう」
「それではまた明日の朝ここへ来てください。門の前でお待ちしています」
「分かった。それじゃあまた明日」
「はい!また明日」
そうしてユウたちは王宮を離れ人気のない路地裏からミリティアのワープゲートを使って家に帰った。




