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ジョブチェンジ!  作者: うなぎタコ


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第34話 神様の力

(わたし、あの後どうなったんだろう・・・)


 ユウは暗闇の中、思考することに意識を集中させてた。


(あの高さから落ちたんだったら間違いなくわたしはこの世にはいない、でももし何らかの方法で生き残っていたとしたら・・・それでも重傷を負ってるだろう。とにかくここまで意識があるなら目を開いてみよう。後のことはそれから考えよう)


 ユウはまぶたに力を込めゆっくりと目を開いた。すると視界の先には見知らぬ天井があった。ここは自分が落ちた場所ではないと理解するのに時間はかからなかったが、ここがどこなのかが分からなかった。


(ベットの上・・・ここは誰かの家なの?)


 ユウは体を起こそうとしたが中々力が入らず起き上がることができなかった。

 すると足元の方で扉の開く音と足音が聞こえてきた。足音はだんだんユウの近づいてきた。


「・・・お姉ちゃん起きたの?」


 ユウの側に緑髪の小さな女の子がやってきて目を合わせた。


「え、あ、うん・・・」


 女の子はユウの返事を聞くと足早に部屋から出て行った。そのあとすぐに足音が二、三人分増えユウのいる部屋に入ってきた。


「おぉ、本当に目覚めておる」

「傷はすべて直しているがどこか痛むところはないか?」

「お腹空いてない?ご飯あるわよ」


 女の子の家族と思われる人たちが一斉に横になっているユウのことを眺め各々しゃべりかけてきた。


「お願い一人ずつしゃべって」

「おぉ、すまんすまん。嬢ちゃんがやっと目を覚ましてくれてうれしくてな」


 緑髪の男は髪を搔きながらそう言った。するとその男からエルフの耳の様な物がちらりと見えた。


「あの、わたしどれくらい眠ってたんですか」


 ユウは恐る恐る聞いてみた。


「丸一日だな。もう少しで二日目突入だったぞ」

「ところでお主、体は動かせるかの?」


 今度は背の低いおじいさんがユウに話しかけた。


「少しなら動けるけど、なんて言うかすごく疲れるんですよ」

「そうか・・・言いにくいんじゃがお主は呪いを受けておるんじゃ」

「呪い?」

「そうじゃ。お主は呪いによって魔力を吸い続けられておる。体内にある魔力が底を尽きれば生命力が削られ数時間で命を落としてしまうんじゃ」


 それを聞いたユウは言葉が出ずただ唖然としていた。


「普通の呪いならば解呪するのは簡単なんじゃがお主にかけられておる呪いは特殊での解呪の方法がまだ見つかっておらんのじゃよ。じゃから今は魔力回復の薬を使ってお主を延命させ解呪の方法を探っておるんじゃ」


 おじいさんはユウに薬を渡し申し訳なさそうにそう言った。


「わたしでもできる解呪の方法って何かないんですか?わたしの帰りを待つ大切な家族がいるんです」

「そうじゃなぁ、お主が教会に属しておるなら神に祈るぐらいはできるじゃろうが見たところお主は魔法使いじゃから難しいかもしれんのう。せめて神官か僧侶であればなぁ」

「・・・神官か僧侶ならいいんですね。ジョブチェンジ!【神官】」


 ユウがそう唱えると白いローブの様な衣装を身にまとった。


「これで神様に祈りをすればいいんだね」


 ユウは目を閉じ祈り始めた。祈りを捧げる対象はユウをこの世界に転移させてくれた神フロラスだった。


(あれ、なんか自分でもわかるくらいごっそり魔力が持っていかれた感覚がある・・・魔力が無くなると死んじゃうんだっけ・・・お願いフロラスわたしにかかってる呪いを解いて・・・)


 ユウが一心にそう祈ると部屋の天井が突然神々しく光始め光の中から一人の少年が舞い降りてきた。


「やぁ、よく僕を呼んだね。久しぶり、ユウ」

「・・・久しぶりフロラス。来てくれてありがとう」

「感動の再会を果たす予定だったけどまずはその呪いを解かないとね。・・・魔力がもう尽き欠けてるじゃないか。こんなになるまでよく頑張ったねユウ。今はゆっくりお休み。次会う時こそお互い元気な時に感動的な再会を果たそう」


 そう言ってフロラスはユウにかかっていた呪いを解きそっとユウの頭をなでた。薄れゆく意識の中でユウの見た光景は優しい笑顔のフロラスの姿だった。たちまちユウの意識はなくなり深い眠りについた。


「よし、これでもうユウの呪いは大丈夫。少し寝れば魔力も回復してると思うよ」

「誰も解けなかった呪いをこうも一瞬で解いてしまうとは・・・これが神の力・・・」

「フフッ、君たちこそユウを助けてくれてありがとうね。さすがエルフ族の治癒力はすさまじいね。僕はこうやって呼ばれないとこっちに来れないから君たちがユウを見つけてくれなかったらと思うとぞっとするね。改めてユウを助けてくれてありがとう」


 フロラスはエルフ族のおじいさんに頭を下げた。


「そんな、フロラス様が我々に頭を下げてはなりません。どうかお顔を上げてください」


 突然頭を下げたフロラスにエルフ族のおじいさんは慌ててフロラスに顔を上げるように言った。


「君たちがユウの傷を治して延命させてくれたことは僕が頭を下げるのに十分な理由をくれたよ。なんてったってユウは必ずこの世界を変える存在になるからね。それがいい方か悪い方かはわからないけど・・・まぁ、どっちに転ぶかはユウとユウを取り巻く環境次第かな」


 そう言ってフロラスはユウの枕元に果物の入った籠を置いて姿を消した。


 ___________________________________________________________________________


 ユウがフロラスを呼ぶ少し前ユウに呪いをかけた老婆を追っている魔王ミリティアとミゼルディアは洞窟の前にいた。


「本当にここにいるんですか」

「あぁ、間違いない」


 二人はゆっくり洞窟の中へと入っていった。


「お前たちなぜここが分かった?まぁ、いいか」


 そこにいたのは老婆に似た若い魔女がいた。


「もう若返ったのか、この魔女め」

「一足遅かったようじゃな。わしはもうこの通り、若返ることに成功したのじゃよ」

「それってつまり・・・」

「そうじゃ、あの娘から十分な魔力を吸い取り終わったんじゃよ。もうあの娘は助からん。大人しく諦めてここから出て行くんじゃな」


 それを聞いたミゼルディアは無言で鎌を取り出した。珍しく怒りの感情を表に出していた。


「魔王様、もういいですよね」

「・・・いいぞ」


 ミゼルディアは鎌をもって魔女に近づいた。


「何をする気じゃ?お前も呪われたいのか?」

「いいえ。今からあなたを冥界に送ります」

「冥界じゃと?死神じゃぁあるまいし何を寝ぼけたこと言っておる」

「・・・死神ですよ」


 魔女に向かって大きく鎌を振り魔女の肉体を消滅させ魂を抜き取りその魂を冥界に送った。

「私の大切な人に手を出すからこうなるんですよ」

「恐ろしいな、その力は。やっぱりミゼルディアを連れてきて正解だった」


 ミリティアは魔女のいた場所を見つめながらそうつぶやいた。


「魔王様、これでユウさんにかかった呪いは解けたんでしょうか?」

「あぁ、きっと解けてるよ。さぁ、一度家に帰るか」


 ミリティアはワープゲートを開いてミゼルディアと一緒にリリィの待つ家に帰った。


 ___________________________________________________________________________


「うーん、あれわたしまた寝てたんだ」


 ユウが目を覚ますとそこには誰もおらず枕元に果物の入った籠がおいてあるだけだった。


「うん、体動かしても問題ないね」


 ユウはベットから起き上がり果物の入った籠をアイテムボックスにしまって部屋から出た。


「おぉ、お嬢ちゃんもう動けるようになったのか。長老様ならもう少しで帰って来るぞ。そこ座って待ってな」


 ユウは緑髪のエルフの男の前の椅子に座った。


「そういや嬢ちゃん空から落ちた時の事は覚えてるのか」

「いや、それがほとんど覚えてなくて」

「そうなのか。じゃあ、あの地面に落ちる寸前に箒で落下の衝撃を抑えたのは無意識だったのか」

「えっ!わたしそんなことしてたんですか」

「あぁ、地面に落ちる直前に箒が自我を持ったかのように嬢ちゃんの下に潜り込んで地面にたたきつけられるのを防いだんだよ」

「そんなことが・・・その箒ってどこにありますか」

「それが嬢ちゃんをこの里に運んだ後に戻ってみたら箒はなかったんだよ。きっと誰かが持って行ったんだろうな」

「そうですか・・・」


 二人が話していると扉が開き外からおじいさんが返ってきた。


「おぉ、お主もう動けるようになったんじゃな。さすがフロラス様のお力じゃ」

「あなたが長老様ですか」

「あぁ、そうじゃよ。このエルフの里を取り仕切っておる。ところでお主はこれからどうするんじゃ?」

「う~ん、エルフの里を見て回りたいけど家に帰るよ。早く帰らないとみんな心配してるだろうから」


 ユウは少し悩んだ後そう答えた。


「そうか。では出口へ案内しよう」


 ユウは長老の後をついていき里の端まで移動した。


「この境界線を越えれば外の世界に出れるぞ」

「・・・わたしまた、ここに来れますか?ちゃんと助けてくれたお礼がしたいの」

「あぁ、いつでも歓迎しよう」

「ありがとう。それじゃあまた近いうちにお礼をしに来ます。それと助けてくれてありがとう」


 ユウは境界線を越えエルフの里から出た。後ろを振り返るとそこにはエルフの里はなくただ草木が生い茂っているだけだった。


「さて、箒なしでどうやって帰ろうか」


 ユウが歩きながら帰る方法を模索していると遠くから誰かが走ってきた。


「ユーウ!ユーウ!」

「ルイナ!?」


 遠くから走ってきたのは家でユウの帰りを待ってるはずの吸血鬼の少女ルイナだった。


「良かった生きてる!ユウが生きてる!」


 ルイナは涙を流しながらユウに抱き着いた。


「ルイナどうしてここにいるの?」

「ユウさんが帰ってこないのを心配してここへ探しに来たんですよ」


 ルイナが走ってきた方から精霊ヴァニアがやってきた。


「ヴァニアまで、なんでここがわかったの?」

「この樹海に住む微精霊たちに教えてもらったんです。それはもう大騒ぎだったんですよ。人間が空から落ちてきたって。その知らせを聞いてすぐここに来たらペンダントと折れた箒だけ落ちてて・・・まぁ、こうしてユウさんが無事なことを確認出来てホッとしてるんです。さぁ、帰りますよ。リリィさんとミゼルディアさんが家で待ってますから」

「うん。帰ろう。それと心配かけてごめん」

「いいんだ、ユウが生きているならそれで。でも今後急にいなくなるのはダメだからな」

「うん、約束する」


 ユウたちはヴァニアの能力【精霊空間移動】であっという間に家に帰った。扉を開けるとユウの帰りを待っていたリリィとミゼルディアが駆け寄ってきた。そして奥のソファーに魔王ミリティアが帰ってきたユウを見て安堵していた。そしてユウが帰ってきたこの日以降ルイナが悪夢を見ることはなく安眠できるようになった。


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