第33話 正夢
ユウが突如、心臓に痛みを感じ空中で意識を失って樹海へ落ちてから数時間が経過した。陽が落ち夜空には月はなくただ無数の星浮かんでいる。
「ユウさんまだ帰ってきませんね」
「もう少し待ってみましょう。きっともうすぐ帰ってきますよ」
自宅ではユウの帰りを待つルイナ、リリィ、ミゼルディアの三人がいた。ユウはまだ帰らない。ただ刻一刻と時間だけが過ぎてゆく。
そして翌朝、血相を変えたヴァニアが家にやってきた。片手にひびの入ったペンダントを持っていた。
「このペンダントってユウさんのですよね。ユウさんはいますか」
「いや、ユウはいない。それよりそのペンダントどこで拾った?」
「微精霊たちが樹海で拾って先ほど私のところへ持ってきたんです」
「樹海?なんでそんなところに」
「分かりません。ですが微精霊たちが言うにはこのペンダントのほかに折れた箒があったみたいで・・・」
それを聞いたルイナの脳裏に浮かんでいたのは連日見ていた悪夢だった。その悪夢の内容はユウが家に帰らずその代わりに身に着けていたペンダントだけが返ってくるというものだった。その悪夢が現実となった今ユウの身に何らかの事故や事件に巻き込まれた、もしくは・・・
「なぁ、ヴァニア。ユウは生きてるよな?死んでたりしないよな?」
「・・・現状は何とも言えません。ですので私はこれから樹海に行き微精霊たちから情報を聞いてきます」
「我もついていく。良いか?ヴァニア」
「良いですよ。では早速行きましょうか」
ヴァニアとルイナはヴァニアの能力【精霊空間移動】で樹海に移動した。そのしばらく後、家の中にワープゲートが開き中から魔王ミリティア出てきた。
「魔王様!?」
「突然すまんな緊急事態なんだ」
そう言ったミリティアからは隠し切れない殺気があふれていた。
「緊急事態って、もしかしてご主人様についての事ですか?」
「あぁ、結論から話すとユウは《《呪い》》を受けている。それも命に係わるほど極悪な呪いにな」
それは今から数十時間前、薄暗く気味の悪い家の中での出来事。
『クックック・・これでやっと、わしの悲願が叶う・・・あのお嬢ちゃんには悪いがわしの糧となってもらう』
老婆の薄気味悪い笑い声がこだまする。
『それにしてもこのこのカードはなんじゃ?【アイテムトレード】で適当な鉱石を使って奪ってみたが何の価値もなさそうじゃ』
そう言って老婆は鎌の下で燃える黒い炎の中に投げ捨てた。すると、魔法陣が床に現れそこからミリティアが姿を現した。
『なんだこんな趣味の悪そうな部屋は』
『誰じゃ!わしの工房に無断で立ち入った愚か者は?』
『無断も何も私を呼んだのはお前だろ?そもそもそのカードで渡しを呼べるのはユウだけのはずだ。なぜユウ以外の人間が持ってる?』
『ユウ・・カード・・召喚・・あぁ、あの娘ユウと言うのか』
老婆はニマリとほほ笑んだ。
『お前、ユウにあったことがあるのか』
『あぁ、今頃呪いに苦しめられているだろうな』
『呪いだと?』
『そうじゃ、わしが若返るために必要な魔力を吸い続けておるのじゃよ。この呪いは相手の魔力、生命力が尽きるまで吸い取り続けるわしの秘術じゃ』
それを聞いたミリティアは紅い炎で創り出された槍を老婆の足目掛けて投げた。
『何をするんじゃ』
『今すぐお前を殺さなくてはならない理由ができた。私の友人を殺そうとしている奴を生かしてはおけないからな』
ミリティアは怒りをあらわにしながら紅い炎の槍を一本また一本と創り始めた。
『その無尽蔵にあふれる魔力・・・お主、魔族じゃったのか』
『今更か・・・』
老婆は後ずさりしながら逃げ道を探していた。だがミリティアは退路を塞ぐように紅い炎の槍を投げ逃げ場を潰していった。
『もう逃げ場はないぞ』
『それでわしを追い詰めたつもりか?』
追い詰められた老婆はミリティアに向かって炎まほうを飛ばした。それが目くらましということにすぐ気付いたミリティアは創っていた紅い炎の槍五本を老婆に向けて放ったがそこにはもう老婆の姿はなかった。
『・・・逃げられたか』
そして現在。ミリティアはユウが呪いに懸けられていることを伝えにこの家に来ているのだ。
「そんなことがあったんですね」
「呪いを解く方法はあるんですか?」
「あるぞ。多くの場合は教会で神に祈れば大抵何とかなるが今回のユウの場合は時間がないから術者を殺すのが手っ取り早いな」
そう言ってミリティアはミゼルディアの手を引きワープゲートを開いた。
「えっ、私も行くんですか!?」
「当然だ」
「そもそも術者の場所って検討はついてるんですか」
「抜かりないぞ。追跡魔術を乗せた炎の槍を当ててるからな、短時間ではあるがおおよその場所は特定できている。だからいくぞ」
ミゼルディアを引っ張りながらミリティアはワープゲートに入っていった。そして家に一人残されたリリィはキッチンへ移動しエプロンをつけた。
「・・・それじゃあ私は暖かいご飯を作って皆さんの帰りを待つとしましょうか」
リリィはユウの身を案じながら料理を作り始めた。再び四人で食卓を囲むために。
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「彼女の状況はどうなっておる?」
「傷はすべて直しましたが呪いの影響か未だ目を覚まさず魔力が減り続けているんです」
長髪の緑髪の男が背の低い老人と共にベットに横たわる少女を見てい居た。
「ワシも数千年生きておるがこんな呪いを見たのは初めてじゃ。聖職者でもこの呪いは解けなかったんじゃろ?」
「はい、何度も試しましたが手ごたえはありませんでした」
「そうか、彼女の残りの魔力はどのくらいじゃ?」
「残り半分を切っています」
「ならこれを飲ませておこう。多少はよくなるじゃろう」
老人は薬を少女に飲ませた。そして二人はベットに横たわる少女を置いて部屋から出て行った。




