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ジョブチェンジ!  作者: うなぎタコ


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第32話 悪夢

 まだ雪が残る昼下がりユウの家には一枚の手紙と豪華な柄の付いたカードが届いていた。


「ただいまーあれ、なにこの手紙?」

「あ、それは先ほどサフィーナさんが来てこの手紙をご主人様に人間の王のところへ持っていってほしいと渡してすぐに帰って行ってしまって。あとこのカードは呼び出すための物みたいで使用方法は闇魔法【黒炎】で燃やせばいいと仰ってました」

「国王様への手紙ね・・・明日、王宮に行かないとね」


 ユウは手紙と魔王を召喚するカードをポケットにしまった。


「ユウ本当に一人で行くのか」


 翌日ユウが王宮のある王都へ朝一番に出かけようとするとルイナが不安そうな顔をしながら起きてきた。


「うん、もしルイナたちが勇者と出会ったら王都が大変なことになりそうだから」

「手紙を渡したらすぐ帰ってくるか?」

「そりゃあ、手紙を渡したら帰るつもりだけど。何か心配ごとでもあるの?」

「・・・いやない。大丈夫」

「そう?じゃあ行ってきます」

「あぁ、行ってらっしゃい」


 どこか不安げな類穴に見送られユウは箒に乗って王都まで飛んでいた。


「ルイナ、何か隠しているなら今のうちに話した方がいいですよ」


 ユウとルイナの一連の会話をキッチンから聞いていたリリィが朝ごはんを机に運びながら聞いた。


「・・・最近悪夢を見るんだ。その夢は私たちにとって考えるだけでも恐ろしい夢なんだ」

「内容は?」

「ユウはこの家に帰ってこない。帰ってくるのはユウの身に着けていたペンダントだけだ」

「それって・・・」


 ルイナの話を聞いたリリィは口を両手で覆った。


「これはただの悪夢なんだ、あまり気にしたくはないが今はただユウが無事に帰ってくることを願う。私の前から勝手にいなくなるなんて許さないからなユウ」


 ルイナは窓の外を見て王都へ飛んでいくユウの後姿が見えなくなるまで眺めていた。

 そんなルイナが心配しているとも知らずユウは王都の正門の前へ降り立った。王都の正門を抜けユウは王宮へまっすぐ向かった。王宮前の騎士には王宮通行書を見せれば中へ入れる。騎士が王宮の門を開けると丁度階段を降りてきた長い桃色の美しい髪の少女がユウのことを見て笑顔を浮かべ駆けより抱き着いた。


「ユウさん!お久しぶりです!」

「久しぶり、ローゼル!」


 この少女はローゼル・ハイビス。王女だ。


「お話したいことがたくさんあるんです是非私の部屋へ!」

「じゃあこの手紙をロズベルドさんに届けたらローゼルの部屋に行くよ」

「分かりました。では私は自室でお待ちしておりますね」


 ユウはローゼルと別れ階段を上り国王のいる執務室へ向かった。扉をノックし開けると書類に目を通している国王ロズベルド・ハイビスと外を眺めていた王女カルミア・ハイビスがいた。


「ユウ~ちゃ~ん!遊びに来てくれたのね~うれしいわ」


 執務室に入った瞬間カルミアが抱き着かれローゼルには無かった包容力に包まれると同時に「親子だなぁ」とも思った。


「カ、カルミアさん、く、苦しい・・・」

「あら、ごめんなさい。ついうれしくて」


 カルミアに放してもらったユウは国王ロズベルドに魔王ミリティアからの手紙を手渡した。


「ユウよ、この手紙を書いた者は正気なのか」

「はい、正気ですよ」


 手紙を読んだロズベルドは頭を抱えていた。それもそのはずこの手紙には一文『人間と魔族の共存について話がしたい。』と書かれていた。今の人間界は勇者の出現により一層の魔族を敵対視する動きが強くなっており、魔族の共存などほとんどの人間が望んでいないのだ。


「ユウちゃん一体だれからの手紙なの?」

「魔王からですよ」

「まぁ!ユウちゃんは魔王とも知り合いなのね」


 カルミアに魔王からの手紙だと伝えると恐れるどころかなぜか嬉しそうにしていた。それは対照的に険しい顔を浮かべるのはロズベルドの方だった。


「ユウよ少し時間をくれんか。この申し出はワシ一人では到底決めきれん。ただ結果は良いものになるよう最大限努力をすることを誓おう」

「ありがとうございます」


 ユウはロズベルドにお辞儀をした。


「ところでなぜユウは魔王とはどういう関係なんだ」

「魔王とは友達ですよ。何度か魔界にも連れて行ってもらいました」

「なんと、魔王と友人関係だったとは・・・魔族と敵対するということはユウを敵に回すことになるのか。恐ろしいな」

「安心してください。わたしは中立の立場で人と魔族が共存できるように動いているので敵対はしませんよ。ただし家族に手を出されたら魔族だろうが人間だろうが容赦はしません」


 ユウのその言葉に部屋に緊張が走った。


「ユウちゃんお話は終わったなら次は私の番よ」


 その緊張した空気を切り裂くようにカルミアがパンっと手を叩きユウの手を握って執務室から出て行った。


「ちょっ、カルミアさん!?」

「久しぶりにこっちに来たんだからちょっと私に付き合ってもらうわよ」


 カルミアはユウを連れて衣装室まで移動した。この衣装室には部屋着からドレスまで幅広い服が収納されてあった。


「さぁ、ユウちゃんお着替えの時間ですよ」


 カルミアがそう言うとお付きのメイドがドレスをもってユウの隣にすばやく移動して黒いドレスを着せた。


「これが王族のドレス・・・」

「かわいいわ~ユウちゃん!次はこれを着て頂戴」


 今度はファーの着いた白いコートをユウが着ているとカルミアは次ユウに着せる服をメイドに渡しているのを目撃してしまった。


(あ、これわたし着せ替え人形にされるやつだ)


 案の定白いコートを着終わると次の服を渡された。こうしてユウは見事カルミアの着せ替え人形になってしまった。


「ユウさん、まだお父様と話しているのかなぁ」

「ローゼル!助けて!」


 たまたま衣装室の前を通ったローゼルを見つけユウは助けを求めた。


「ユウさんどうしたんですかそんなかわいらしい恰好をして」

「これは、カルミアさんに着せられて」

「ユウちゃん次はこれを・・・ってローゼルもいたのね」

「お母さま!ユウさんと一緒にいるなら声をかけてください!それにユウさんに似合う服はこういうのです」

「ちょっとローゼル!?」


 まさかのローゼル参戦でユウはさらにたくさんの服を着ることとなった。それからしばらくユウはは二人の着せ替え人形となること数時間、やっと解放された。


「ユウちゃん、これプレゼントよ」


 帰り際にカルミアから黒いドレスを受け取った。


「いいんですかこんな良いドレス貰っちゃって」

「いいのよ私じゃぁ着る機会があまりないから」

「ではありがたく頂戴いたします」


 ユウは黒のドレスをアイテムボックスに収納した。


「ユウさんまた遊びに来てくださいね」

「うん、また遊びに来るよ」


 ユウはカルミア、ローゼルと別れ王宮を後にした。ユウが王都を歩いていると重そうな荷物を持った老婆が歩いていた。


「おばあちゃん、その荷物わたしが持つよ」

「おぉ、親切なお嬢さん。それじゃぁ、そこの家まで頼むよ」


 ユウは荷物を持ち上げツタが絡みついた家まで運んだ。


「ありがとうお嬢さん。よかったらお礼にこれを」


 老婆はユウの手の上に紫色のクリスタルを受け取りユウはそれをポケットに入れた。


「さて、早く帰らないと」


 ユウは箒に乗って空を飛び家のある方へ飛んでいった。だが突然ユウの心臓に痛みが走った。


(なに・・・この痛み・・・それに頭がクラクラする・・・)


 だんだんユウの乗る箒の高度が落ちていった。


(あれ・・・視界がぼやけて・・・あれ、もしかしてっわたし・・・)


 そこでユウの意識が途切れ箒から落ち真っ逆さまに木々が生い茂る樹海の中へ落下していった。

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