第30話 雪降る夜に鍋を囲む
「ユウ、寒いすごく寒い」
「今暖炉に火をつけるからホットレモンティー作ったから飲んで待ってて」
朝食を作っていたユウは暖炉に火を付けに行った。今日のようにルイナは定期的にユウと同じタイミングで起きてくる時がある。
「ルイナ、マフラー巻いてあげるからこっちおいで」
ユウはルイナに白色のマフラーを巻いてあげると暖かかったのか横にゆらゆら揺れ始めた。そんなご機嫌なルイナに今日の朝食のサンドイッチの入ったバケットを渡した。
「じゃあ行ってくる」
「うん、行ってらっしゃい」
ユウはルイナを見送った後にリリィとミゼルディアが起きてきた。
「今日は一段と冷えますねぇ」
「もしかしたら雪が降るかもですね」
「そっか。雪が降るなら早めに買い物行かないとね」
三人は朝食を食べ出かける準備を始めた。ユウはリリィとミゼルディにもマフラーを巻いた。
「わー!ありがとうございます」
「どう?暖かい?」
「はい!とっても暖かいですよ」
二人とも嬉しそうにお互いのマフラーを見せ合っていた。二つとも色が違いリリィのマフラーは赤、ミゼルディアのマフラーは水色となっている。
「ご主人様今日はどこに出掛けるのですか」
「そうだね・・・今日はテフリカに行こうか。あ、その前にルイナを迎えに行かないと」
ユウは暖炉の火を消して三人は家を出た。ルイナの館に行くと丁度帰ろうとしていたルイナと合流することができ四人でテフリカの街へと移動した。
「なんか今日はやけに人が多いな」
テフリカの街のメインストリートには大勢の人々が露店で買い物をしていた。何かイベントでもあるのだろうか。
「ご主人様、今日こんなに人が多いのはこれが理由なんじゃないですか」
リリィが指さす先の壁には【本日すべての商品半額】というポスターが貼ってあった。
「この世界にもセール的なのあるんだ」
ユウはそんなことを思いながら三日分の食料を買った。両手に持ちきれない分はアイテムボックスに収納した。後は雑貨やアクセサリーを買って自宅へ帰った。
ユウは家に帰ってすぐに暖炉に火をつけた。するとルイナ、リリィ、ミゼルディアは暖炉の前に固まって暖を取り始めた。
「やっぱり《《あれ》》、作るか」
ユウは倉庫に行き火の魔石と大きめの机そして若干埃の被った布団を取り出した。
埃被った布団はすぐに洗って日に当ててて乾かしその間に火の魔石を机の裏にはめ込み天板の中央には魔石に魔力を込めるために小さな魔法陣を刻印した。そして乾いた布団を机の上に敷き天板で挟んだ。それを暖炉の前に置いてある机と置き換えた。
「ユウ、なんだこれは」
「これはねコタツって言うんだよ。まぁ、中に入りなよ」
ルイナはユウの隣に座りコタツの中に足を入れた。
「・・・暖かい」
そのルイナのつぶやきを聞いたリリィとミゼルディアはすぐにコタツの中に入っていった。
「「・・・これは!」」
コタツに入った二人はすぐにとろけるように机に伏して幸せそうな顔をしていた。ユウとルイナも同じように机に伏すとだんだん睡魔が襲ってきてついに眠りに落ちてしまった。
恐るべきコタツの魔力!
それから数時間後、ユウは目を覚ました。窓の外を見てみると日が落ちる寸前の空からしんしんと雪が降り始めた。
「もうこんな時間なんだ。ご飯作らないと・・・でもコタツから出たくない」
「・・・ユウ、お腹空いた。暖かいのが食べたい」
ルイナは薄らと目を開けてそう言った。
「うーん、なら今日は鍋にしよう」
ユウはコタツから出てキッチンへ向かった。ジョブを【料理人】に変更していつも米を炊いている土鍋を取り出しその中に水と魚のアラを入れて火にかけた。その間に野菜を斬り魚の身をすりつぶし丸めた。
しばらくたって火を止めアクと魚のアラを取り出し鍋の出汁が完成した。今度はその出汁の中に野菜、魚の身をすりつぶし丸めた物、薄く切った肉を入れ蓋をした。コタツの上に火と風の魔石を使った簡易コンロを置きその上に鍋を置いてコンロに手をかざし火をつけた。
「そろそろ出来たかな」
ユウが鍋の蓋を開けると湯気が立ち上り食欲をそそる匂いがあふれ出した。
「もう食べていいのか」
「熱いから気を付けてね」
ぐつぐつと煮える鍋を四人で囲み体を心から温めた。追加で野菜や肉を入れたがあっという間に食べ終わってしまった。
「それじゃあ、最後のシメに入りますか」
ユウは朝に炊いた米の残りを鍋の中に入れその上から溶き卵を回し入れた。少し経って出来上がったのはおこげの付いた雑炊だった。
その雑炊も四人でぺろりと完食した。
「もうお腹いっぱい」
「ルイナはたくさん食べてましたもんね」
「雪、強くなってきましたね」
外を見てみるとしんしんと降っていた雪は吹雪のようになっていた。
「明日には積もりそうだね」
ユウは洗い物をしながら窓の外を見ていた。元の世界では雪は降れど積もりはしない場所に住んでいたから吹雪を見るのは初めてなのだ。
「ご主人様は雪が積もったら何がしたいんですか」
「そうだね、雪だるまとか、かまくらとか作ってみたいね」
「雪だるまってもしかして雪でできたゴーレムですか!」
隣で洗い物を手伝っていたリリィが目を輝かせて食い気味に聞いてきた。
「うーん、似てるけど違うかな。もしかしたら作れるかもしれないけど」
ユウは雪で作ったゴーレムが動く姿を想像してクスっと笑った。
洗い物が終わると四人は順番にお風呂に入った。
「ユウ、今日はここで寝るから」
「私もここで~」
ユウが風呂から上がるとコタツで寝ようとしているルイナとミゼルディアがいた。
「コタツで寝たら風邪ひくからちゃんと布団で寝なさい」
ユウは二人をコタツから引きずり出して部屋まで運んだ。ユウも自室に戻り布団に入った。
「・・・雪積もらないかな」
そうつぶやいてユウは目を閉じ眠りについた。
だが雪が積もることを夢見ていたユウは翌朝地獄を見ることになるとは夢にも思っていなかった。




