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ジョブチェンジ!  作者: うなぎタコ


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第25話 錬金術師の冒険者

 少し肌寒くなってきたある日の朝。ユウはギルドの依頼で王都のギルドハウスへ来ていた。


「お疲れ様です。こちらの依頼は完了とさせていただきます。報酬手続きをいたしますのでしばらくお待ちください」


 冒険者の多い王都では報酬を受け取るのに必要な手続きに時間が掛かる事があるためギルドハウス内に食事をとれる場所や修練場が併設されている。ユウは、手続きを待っている間修練場で冒険者同士で戦っている様子を眺めながら待っていた。


「―――悪いが錬金術師はお断りだ。他を渡ってくれ」

「錬金術師ってあれだろ、レアな素材のためにドラゴンとかの上位の魔物を倒しに行くんだろ?俺たちには無理だな」


 離れた場所からそんな聞こえ声のする方を見るとひとりの少女が懸命に冒険者に話しかけ断られていた。


「ユウ様、報酬手続きが終りましたのでこちらを追い受け取りください」


 ユウは報酬の金貨十枚を受け取った。


「あの、あそこの錬金術師の子って・・・」

「あぁ、よくいらっしゃるんですよ。来るたびにこうやっていろんな冒険者の方に声を掛けられているのですがいつも断られているんですよ」

「そうなんですか・・・」


 ユウは少女の方を見るとまだ冒険者に話しかけていた。


(見てられないな)


 あきれたユウは少女に近づいた。


「ねぇ、ちょっといいかな・・・」

「え、あ、はい!もしかしかして私と素材採取に行ってくれるんですか!?」


 その問いにユウはうなずくと少女は嬉しそうにユウの手を握った。


「ありがとうございます!それじゃあ、すぐに行きましょう!」


 ユウは少女に手を引かれ二人はギルドハウスを飛び出していった。


「そういえばお名前はなんですか。私はミラ・レイナスって言います」

「わたしはユウ。ところで錬金術師はレア素材のために上位の魔物を狩りに行くって本当なの?」

「はい、本当ですよ。ですが今回は鉱石や薬草を採りに行くんでそんな危険はないと思いますけどね」


 二人がやってきたのは王都からかなり離れた場所の山の麓へ来ていた。

 ユウはジョブを【ハンター】に変更し【サーチ】で周囲の魔物のチェックすると離れたところに魔物が数体いるのがわかった。


「あっちの方は魔物がいるからあまり近づかないようにね」

「はい!わっかりました!」


 ミラは素直に返事をした。


(どうしてこんな素直な子が冒険者から避けられてるんだろう)


 ユウは石の上に座りながら素材採取を楽しむミラを見守っていた。


「ふぅ、素材採り終わったのでそろそろ私のアトリエに帰りましょうか。」

「アトリエあるんだ」

「はい、祖父から受け継いだんです。ユウさんアトリエに寄って行きませんか?少しお話したいことがあるんです」

「いいよ。わたしもミラに聞きたいことがあるし」


 採取が終わった二人は王都にあるミラのアトリエに移動した。


「ようこそ私のアトリエへ」


 ミラが扉を開けたその先には薬草や鉱石、魔獣の牙や羽。棚に入りきらないほどの本。そして大きな釜があった。


「あ、そこの椅子に座っててください。私、素材置いてきますんで」


 そう言ってミラは奥の部屋へと素材を運びしばらくしてお茶の入ったカップをもって帰ってきた。


「そういえば私に聞きたいことがあるんでしたよね。ユウさん」

「うん。どうてミラは冒険者達から距離御置かれているのか気になって」

「それは、私が魔法を使えるだけの魔力のない無能だからですよ」


 ミラはお茶を一口飲み、続けた。


「見てもらった方が早いですよね」


 そう言ってミラは右手に魔力を込めるとバチッと何かがひかり瞬く間に消えていった。


「私が魔法を使おうとするとこうなるんです」


 ミラは残念そうにそう言った。


「この体質のせいで昔所属していたパーティーから追い出されちゃって、冒険者たちの間で魔法の使えない無能な錬金術師って呼ばれるようになったんです」

「だからあんなに距離を取られてたんだ」

「そうなんです。そこでユウさんに頼みごとがあるんです」


 ミラは真剣な表情でユウの方を見た。


「私にできることがあるなら協力するよ」

「本当ですか!では、私を一人前の冒険者にしてください!」


 錬金術師の冒険者は確かに存在するが例外なく支援系の魔法が使える人ばかりだ。その中で魔法の使えない錬金術師が冒険者になるのは厳しいものがある。ミラ自身もその厳しさを知ってなお冒険者になりたいとユウに頭を下げたのだ。


「分かった、わたしがミラを一人前の冒険者にしてみせるよ」


 そうしてミラの一人前の冒険者への育成が始まった。


「ねぇミラ、錬金術で作れる武器って何があるの」

「えっと、爆弾と剣と・・・素材とレシピさえあればなんでも作れますよ」


 そう言ってミラは爆弾のレシピをユウに見せた。そのレシピには火薬と魔石が一個ずつ必要と書かれていた。


「もしかして自分専用の武器とか作れたりするのかな」

「私、剣を振るのが下手なので必然的に爆弾になるんですかね」


 二人は頭をひねりながらたくさん案を出して一つの結論にたどり着いた。それは距離が離れていても攻撃ができる武器だ。弓という意見も出たがまず本人の腕では矢を当てることも困難なため却下された。そこでユウが提案した武器は単発式の魔力石を使たライフル銃だった。ライフル銃自体は理論上作れないこともないがこの世界で過去に作った人はいなのでレシピを一から作らなければならない。


「レシピはわたしが書くよ、素材はミラに任せていい?」

「任せてくださいこのアトリエにはたくさん素材がありますし足りなければ取りに行きますよ」


 そう言ってユウは一度家に帰りジョブを【錬金術師】に変更し自室に籠りレシピを考えた。

 そして五日後ついにレシピが完成した。


「ミラ、これがレシピだよ」


 そこに書かれていた素材は鉄五個、各属性の魔力石一個ずつ、木の板三枚、竜の鱗十枚が必要となりその素材を錬金釜に入れてライフルが完成する。


「必要な素材採ってきましたよ」


 ミラは手に持てない量の素材を持ってきてユウと一緒にすべて錬金釜に入れて混ぜ始めた。


「よく竜の鱗なんて持ってたね」

「倉庫の奥に眠っていたんですよ」


 すると錬金釜が光り中から完成したライフルが出てきた。


「ユウさんこれどうやって使うんですか」

「これはね魔法の使えないミラでも魔法が使える武器だよ。試し撃ちするために森に行こうか」


 二人はライフルをもって森の中へ入っていった。ユウはミラにライフルの持ち方を教えた。


「さぁ、あそこの気に向かって撃ってみて」

「は、はい」


 そしてミラが引き金を引くと銃口の先に魔法陣が形成され炎の弾が正面の木を貫いた。


「な、何ですかこれ」

「これは魔力石を使った弾で錬金釜に入れた魔力石の属性で放たれる弾の属性が変わるんだよ」


 今回使った魔力石の属性は炎、水、風の三つだ。


「すごいですねこれ・・・私が貰ってもいいのかな」

「作ったのはミラなんだし気にしなくてもいいんだよ」


 そのあとユウは弾の属性の変え方をミラに教え近くの魔獣を狩って王都にあるミラのアトリエへ戻った。


「ユウさん私これで一人前の冒険者になれますか?」

「なれるよ。それにさっき狩った魔獣はギルドハウスのクエストボードに張り出されてたやつだから、ミラは自分の力でクエストをクリアしたんだよ」


 そう言うとミラは嬉しそうにユウに抱き着いた。


「ありがとうございますユウさん!私これから頑張ります!」


 そして日が傾き時始めたころユウはミラに見送られルイナたちの待つ家へ帰っていった。

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