第13話 王都と家出少女
長く続いた雨も上がり今日は晴天だ。ルイナとミゼルディアは元気に外で遊んでいる。一方、ユウとリリィは村のギルドハウスへ来ていた。
「こちらがギルド本部からユウさんへの手紙になっています」
ギルドの受付嬢ライムから手紙を受け取り中身を確認した。手紙には王都近郊の洞くつで起きた冒険者が行方不明になった事件のことで話があるから一度ギルド本部へ来てほしいとのことだった。
「大変ですねユウさん、まさかギルド本部に呼び出されるなんて」
「まぁ仕方ないよ、あの事件についてなにも報告してないから。あ、そういえば王都に行くのにどれくらい時間かかるの?」
「ここからだと丸一日かかりますね」
前回はミリティアのワープで一瞬だったが今回はそうもいかない。ひとまずユウとリリィは手紙をもって家へ帰った。
「・・・っていうことがあって明日王都に行くんだけどみんなも一緒に行く?」
「何を言っている 一緒に行くに決まっているだろ」
ルイナがそう言うとリリィとミゼルディアも首を縦に振り翌日四人で王都へ出発した。
移動は箒で空を飛ぶことにした。昨日王都まで丸一日かかる話をしたらルイナが空を飛べば半日で着くと教えてくれた。
そして本当に半日で王都へ着くことができた。
「おぉ、さすが王都、観光客や商人が多いね」
「手紙にはいていた地図によるとギルドハウスがあるのはこの先ですよ」
しばらく歩いていると目の前にに見上げるほどの大きな建物が現れた。
「ここがギルド本部ですけど・・・」
「村のギルドハウスとは比べ物にならないな」
「本当にこの中に入るんですか」
「そんなに怖がらなくても大丈夫だよ」
大きな扉を開き四人で中へ入っていった。
「あの、手紙をもらってここへ来たんですけど」
ユウはギルドの受付嬢にもらった手紙を渡した。
「ギルドマスターからの手紙ですね。ようこそユウ様、応接室までご案内いたしますね」
ユウたちは応接室へ案内された。まさかあの手紙がギルドマスターから送られたものだと知ると今更ながら怖くなってきた。
程なくして応接室に筋骨隆々でスキンヘッドの男がやってきた。
「待たせたな、俺がギルドマスターのマグル・ヘルトだ」
マグル・ヘルトは挨拶をしながらユウたちと向かい合うように座った。
「早速本題なんだがあの洞窟で会った事を話してくれないか」
あの洞窟で起きたことエネシア目的をユウは話した。
「・・・ってことがあったんです」
「なるほどな、ほかの冒険者との証言とほぼ一致してるな。その、エネシアってやつはどこにいる」
「エネシアは今行方不明になっています」
嘘である。エネシアは現在ミリティアの部下として魔王城で働いているのだ。エネシアを雇ってから魔王城の人手不足が解消したとミリティアから手紙をもらったことがる。なんでもエネシアが従えているゴーレムたちが予想以上に働いてくれているので仕事面でも魔王城の防衛面でも役に立っているらしい。
「そうか、色々情報ありがとな。嬢ちゃんたちはこの後何か予定はあるのかい」
「いや、特に予定は何も」
「なら、東側にある商業区に行ってみるといい雑貨やこの辺りじゃ珍しい食品まで売ってるぞ」
ギルドマスターのマグル・ヘルトとの話は終わりユウたちは教えてもらった通り東側にある商業区に移動した。
「おぉ、さすが王都いろんな出店がありますね」
「なんだこの緑色の食べ物」
「あっちできれいな花売ってますよ」
「色々見てみようか」
ユウたちはしばらく街を歩き買い物を楽しんだ。家に置く雑貨を買い、珍しい食材を買い、四人おそろいのアクセサリーを買った。
「ふぅ、思ったよりいっぱい買っちゃいましたね」
「結局この緑色の食べ物は何なんだ」
「あーこれはピーマンだよ。今日のご飯につかうんだ、ってうわっ」
ユウの背中に勢いよく何かがぶつかり振り返るとそこにはボロボロのローブを着た桃色の長い髪の少女がいた。
「助けて、追われてるの」
少女は自分の後ろを指さしてユウに助けを求めた。目を向けると人ごみをかき分けてこちらに向かってくる男たちがいた。
「ミゼ、この子をお願い」
「分かりました」
ユウは少女をミゼルディアに預け杖を取り出した。
「あなた達止まりなさい、止まらないと撃つわよ」
「うるせぇ、誰が止まるかよ」
「早くそいつをよこしな」
ユウは忠告を無視して走ってくる男たちに向けて氷魔法を足元に放ち動きを止めた。
男たちの正体はこの辺りでは有名な盗賊一味のメンバーでこの少女を捕まえ売りに出そうとしていたみたいだ。ユウは男たちを近くにいた兵士に突き出し王都の外に移動した。
「もう大丈夫だからね。そうだ、家はどこ送っていくよ。またあの変な奴らに絡まれたら大変だし」
ユウは少女にやさしく話しかけた。
「嫌、家には帰りたくない」
少女はうつむいて家に帰ることを拒んだ。
「・・・そっか、もし行く当てがないなら家に来ない?」
「え?」
ユウは少女に提案をした。家出、それは昔ユウにも同じような経験をしたことがあったから同じような思いをしている少女を放っておくことができなかった。
「いいの?」
「もちろん。ただ一つ約束してくれるなら」
「分かったどんな約束でも守る」
「ありがと、実はわたし以外魔族なの。このことは口外しないでほしい」
ユウはルイナたちが魔族であることを少女に明かした。これから一緒にいる時間が増えるのなら今明かしておくべきだろう。
「・・・知ってます」
「え!」
ユウだけじゃなくルイナたちも驚いていた。
「私、生まれつき鑑定スキルのようなものを持ってるんです。普通の鑑定スキルは物を見るのですが私は人を見ることができるんです。だからあの時、助けてくれそうなのはあなた達だと思ってました。もちろんこのことは誰にも言いません」
「ならもう隠す必要はないな」
ルイナはそう言うと翼を広げリリィは黒猫の姿になりユウのカバンの中へ入っていった。ミゼルディアは・・・特に何も変わってない。
「そういえばまだ名前聞いてなかったね、わたしはユウ」
「私の名前は・・・カルミア・ハビスです」
少女は少し考えた後名を名乗った。
「それじゃカルミア、帰ろうか」
ユウは箒に座りカルミアに手を差し伸べ一緒に箒に乗り家まで空を飛びながら帰った。
だがユウはまだ知らない自分が犯してしまった罪の重さを。




