第12話 雨の日、暇な日、ゲームの日
「今日も雨ですね」
窓の外を見ながらリリィは尻尾を揺らしている。
ここ四日ほど雨が降り続け家から出ず暮らしていた。家の掃除をしてお菓子を作り時間のかかる料理も作った。もうやることがない。
「暇だ、雨で外に出れないから体を動かすこともできない・・・なぁユウ、今すぐ天気を晴れにしてくれぇ」
机にうつ伏せているルイナがあまりにも無茶なことを言ってくる。
「天気を操るのは無理だけどこれならみんなで遊べるんじゃない」
ユウが取り出したのはとあるボードゲームだった。それはユウが作り出したボードゲームで机の上にはマス目の書いたボードと駒、そしてカードが置かれていた。
「これ、どうやって遊ぶんですか」
「ふっふふ、それはこのゲームマスターのわたしが説明しよう」
いつの間にかジョブチェンジ【ゲームマスター】で姿を変えたユウが楽しそうに説明を始めた。このボードゲームは【ゲームマスター】の能力を使って作られている。
【ゲームマスター】の能力はオリジナルゲームが作れることとあらゆるゲームのルールを改変することができるのだ。
「このゲームはカードを使って自分の駒と強化したり守りを固める12×12のマスを取り合う陣取りゲームだよ。カードは一人四枚まで持ててそのカードは自分のターン中なら何枚でも使えるよ。カードは四種類アタックカード、ディフェンスカード、トラップカード、駒カードがあってアタックカードは自分の駒一つの攻撃力を5上げれてディフェンスカードはHPを10増やすことができる。罠カードは指定した自分のエリアに5ダメージ与える罠を自分の魔力を使って仕掛けれて駒カードは好きな駒を一つ手に入れることができるよ」
「この駒にも何か役割があるのか」
ルイナが吸血鬼の駒を手に取りユウに聞く。
「そのとおり、その手に持っている吸血鬼の駒は左右縦3マスを自分のエリアにできる。そういった感じで黒猫の駒、死神の駒、魔法使いの駒があるよ。そして駒にHPと攻撃力があってHPはすべて50で統一されてるよ。攻撃力は吸血鬼が5黒猫が3死神が4魔法使い3となっている。この攻撃力とHPはカードを使ってふやすことができるよ」
「なかなかおもしろそうだな」
「早くやってみたいです」
「クッキー焼けましたよ」
「そうだねちょうどクッキーも焼けたし、やってみようか」
ユウの説明が終わり四人は机を囲むように座りクッキーを片手にさっそくゲームを始めた。
ユウはカードをシャッフルしてカードを六枚配った。駒はマスの四隅にそれぞれ置いてある。
「勝利条件は十ターンが以内により多くのエリアを取れた人の勝ち。それじゃあ、ゲームスタート!」
ユウ、ルイナ、リリィ、ミゼルディアの順番でゲームが始まった。
序盤は駒を進めエリアを取り合っていた。戦況が動いたのは三ターン経ってからだった。ルイナの死神の駒とリリィの吸血鬼の駒が中央の取り合いを始めたのだ。
「そこをどけリリィ、中央は私のものだ」
「残念ですがあなたの吸血鬼の駒じゃ私の死神の駒を倒せませんよ」
「それはどうかな私の手札にはアタックカードが三枚ある追い込むには十分だ」
ルイナは自分の駒にアタックカードを三枚使い吸血鬼の駒のい攻撃力は20になりリリィの駒を攻撃した。二人の攻防はまだ続いている。
その頃ユウとミゼルディアは着々と自分達のエリアを広げていた。
勝負の折り返し再び盤面は大きく動いた。中央争いをしていた二人に決着がついたのだ。
ルイナの駒がリリィの駒のHPをゼロにし中央を取り切ったがその瞬間を待っていたかの様にミゼルディアがアタックカード二枚を付けた黒猫の駒でルイナの吸血鬼の駒を倒した。
「ミゼなんて事をするんだ、せっかく真ん中を取れたのに」
「真ん中ばかり見てないでもっと周りを見ないと大変なことになりますよ」
ミゼルディアの言った通り盤面は大変な事になっていた。エリアのほとんどがユウとミゼルディアのものになっていてルイナは真ん中の数マスリリィはスタート地点の僅か九マスしか残っていなかったのだ。ここから巻き返すのは不可能だろう。
そしてユウの最後のターンが回ってきた。ユウとミゼルディアの取れているマスの差は残り僅かになっていた。しかも場に出ている全ての駒のHPは半分を切っていた。
「駒カードを使って魔法使いの駒を追加してここに置いてトラップカード二枚を使う」
「そこに置いては私のエリアを二つしか取れませんよ」
「それでいいの。アタックカード二枚を吸血鬼の駒に使って死神の駒に攻撃する」
ミゼルディアの死神の駒に十五のダメージが与えられ死神の駒はHPを全て失った。
そしてユウはミゼルディアのエリアをこのターンで合計六マス奪う事ができた。
今度はミゼルディアのターン。
黒猫の駒を魔法使いの駒の前に移動させた。すると・・・
「掛かったね、トラップ発動!」
「なぜそんな所にトラップが」
「さっき使ったトラップカードの一つが今ミゼが置いた場所、もう一つは・・・どこにあるか分かるかな」
このトラップの起爆ダメージでミゼルディアの黒猫駒はHPを全て失った。
そして全てのターンが終わった。それぞれとったエリアの数はリリィが十二マス、ルイナが二十三マス、ミゼルディアが五十四マス、ユウが五十五マスとなりこのゲームの勝者はユウとなった。
、
「あ、そろそろ買い物に行かなきゃ」
「雨なのに行くのか?」
「行かなきゃ食べるものがないからね。そうだみんなで行こうか、ちょうどみんなに来て欲しいものがあるんだった」
ユウは自分の部屋に戻りある物を取って戻ってきた。
手に持っていたのは四つのポンチョだった。それを三人に渡した。
「さぁ着てみて、これを着れば雨の日でも外に出れる様になるよ」
ポンチョを着た三人は早速雨降る外へ出ていった。
「おぉ、本当に雨を通さないぞ」
「何ですかこれ、魔法?魔法ですか」
「凄い、尻尾も濡れてない」
ユウもポンチョをきて雨の中はしゃぐ三人と共に山を降り村に向かった。
「雨なのに濡れずに外を歩けるなんて初めてだ」
「これを着てればいつでも外に出てもいいからね」
雨が嫌いなルイナが雨に目を輝かせユウの隣を歩いている。
もう少しこの雨が続きます様に。




