第10話 魔王就任式
魔王就任式当日 朝
わたし達はこれからミリティアの魔王就任式に参加するべく昨日完成したドレスを三人に着てもらった。
「どうだ、似合うか」
「このドレス尻尾を出す穴があります!」
「装飾も可愛いです~」
三人は、はしゃぎながらドレスを見せ合っていた。朝から眼福だ。
「ユウもドレスを着てみてくれ」
ルイナにねだられドレスを着ると部屋中が歓喜に包み込まれた。こんなに喜んでくれるとはなんとも幸せだ。
「そういえば魔界ってどうやって行くの?もしかして魔法陣でテレポート」
「まぁ、魔法陣でテレポートでもいけるがここに魔法陣なんてないし魔王城に行くなら魔導列車だな」
魔導列車それは大陸全土をつなぐ魔力で動く列車だ。これ乗って魔界に行くには特殊な工程を踏まなくてはならない。まず王都行きの切符を買いその切符に魔族しか持たない魔力を流しホームへ行くと魔界行きの列車が来る。魔王城の最寄り駅まではおよそ一時間半で着く。
「へぇーここが魔界か思ってたのと違うなぁ」
「そうか?まぁ今日は魔王就任式だからな」
「いや、なんというかもっとまがまがしいところを想像してたから」
列車を降り駅を出るとそこにはまるで人間界とさほど変わらない街並みが広がっていた。そしてあの遠くに見える大きな建物が魔王城らしい。近づけば近づくほど大きくなっていく。
「ここが魔王城・・・なんか想像通りで安心したけど大きすぎない!?」
その見たものが腰を抜かすほど大きな魔王城の前に一人の少女が立っていた。
「こんにちはユウさん、ようこそ魔王城へ。早速ですがミリティア様がお待ちですのでお部屋までご案内させていただきますね」
魔王城の前に立っていたのはフリルのついたロングスカートを着ている少女サフィーナは挨拶をしてミリティアのいる部屋まで案内してくれた。
「ミリティア様、ユウ様御一行をお連れしました」
サフィーナはミリティアのいる部屋のドアをノックして開けた。
「来たかユウ、待ってたぞ」
イスに座って髪を結ってもらっているミリティアは笑顔で出迎えてくれた。
「ねぇ、ミリティアその後ろの人は誰」
「名前はルディーナ、サフィーナの妹だ」
ルディーナと呼ばれた少女は恥ずかしそうにこちらに向かって静かにお辞儀した。サフィーナと姉妹なだけあってよく似ている。髪型もツインテールで着ている服も同じフリルのついたロングスカートだ。似てないところは髪色と性格だろうか。サフィーナの髪色は水色で積極的な性格だがルディーナは薄赤色で控えめな性格だ。
そういえばサフィーナもルディーナも赤と青のオッドアイだがサフィーナは右が青左が赤でルディーナは右が赤で左が青になっていた。
「えっ!サフィーナに妹が居たんだ可愛い~」
「そうなんですよ、それに私より強いんですよ。自慢の妹です」
ルディーナは恥ずかしそうにしながらミリティアの髪を結い始めサフィーナは胸を張り自慢した。
それからミリティアよ少し話してわたしたちは部屋から出て就任式が行われる大広間に移動した。
「やっぱりもうすぐ魔王になる方と対面するのは緊張しますね。ご主人様はすごいです何も臆さずにお話されるなんて」
「まぁ初対面があれだったから今更威圧感とかないかな」
そんな話をしていたらいつの間にか大広間までついていた。両開きの扉を開けるとまるでパーティー会場のような空間が広がっていた。一番奥のステージの上に『第95代目魔王就任式』と書かれた横断幕がかかっていた。わたし達は名前の書かれた札が置いてある席に座った。しばらくして会場が暗くなりステージにスポットライトが照らされその下にはミリティアがいた。さっきまでざわついていた会場は一瞬にして静まり返りミリティアの魔王主任式が始まった。三十分にわたり行われうち五分ほどミリティアの演説があった。就任式が終わるとミリティア、サフィーナ、ルディーナがやってきた。
「今日は私の魔王主任式に参加してくれてありがとう。これはそのお礼だ」
ミリティアは一枚のチケットを手渡した。
「温泉の貸し切りチケット?」
「そうだ、その温泉で疲れを癒してくれ。それじゃあ私はまだ公務があるからこれで失礼するよ」
ミリティアは温泉チケットを渡すと足早に去っていった。
「温泉か・・・その前に夜の魔界を観光しないか」
「そうですね魔界は夜が一番活気がありますからね」
魔界出身のルイナとリリィに誘われ夜の魔界を観光した。今日はミリティアの魔王就任式だったからか噴水のある大きな広場は人間界の祭りのような雰囲気を感じる。そういえば屋台も出ていて四人で屋台の料理を食べ歩いた。屋台の中には飲食だけではなく自分の魔力を弾に変え景品を落とす射的のような屋台もある。人間も魔族も祭りは好きなようだ。次に訪れた場所は一本の木が生えている丘までやってきた。ここは視界を遮るものが少なくミリティアの魔王就任を祝う花火が良く見える。
そしてわたしたちはチケットに書かれていた温泉にきた。
「ん~温泉最高~疲れが取れるよ」
「そうですねぇ~夜風もちょうどいいです~」
貸し切りの温泉でわたしとミゼルディアは湯につかりながら体を伸ばした。ルイナとリリィも少し離れたところにいる。そんな温泉でまったりしていると突然後ろのドアが開いた。
「公務が終わったから会いに来たぞユウ!」
突然やってきたのはミリティアだった。その後ろにはサフィーナとルディーナがいた。
「まさかこの温泉が貸し切りだったのって・・・」
「そう、私がユウと温泉に入りたかったからだ!」
そう言いながらわたしの隣に来た。
「ユウさんと温泉に入るためにミリティア様は丸一日かかる公務をたったの数時間で終わらせたのですから」
続けてサフィーナが言う。そこまでして一緒に入りたかったのかと少しあきれたと同時に相当頑張ったんだなとも思った。
「・・・ミリティアはすごいよ」
「なっ、急になんだ」
「いや、わたしのために頑張ってくれたんだなぁって思っただけだよ」
そういいながらミリティアの頭をなでると驚き照れていた。
温泉に入っている少女たちを月明かりが照らしミリティアの魔王主任式が幕を閉じた。




