第9話 元・伯爵家嫡男、村を復興しようとする。
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登場してくる偉人たちは筆者のイメージに則しているので、歴史的事実や最新の研究内容とは異なっている場合がありますが、予めご了承下さい。
村長の話では、かつてこのシェイドウッドの村は岩塩の取引と果実の生産に支えられ、500人以上が暮らしていたという。
しかし、10年ほど前から魔族や魔物が村を襲う様になり、それを恐れた代官が引き揚げてからは殺された者、逃げ出した者も多く、500人以上いた村民はこの10年で今いる60人ほどまで減ってしまったのだという。
農地は荒れ果て、採集した岩塩は取引されずに村の倉庫に積みあがってしまっている。
まずはこの村を復興し、それを足掛かりとしてヴェルモン領に人を呼びこんで発展させていくしかない。
僕はそう決意しながら、劉備たちの手伝いをするために作業台へと向かった。
それから数日、魔族の襲撃はなく、比較的落ち着いた状況が続いた。
僕たちは村民に指示を出しながら倒壊したまま放置されている家屋の片づけや、いくつかある井戸をさらって清掃する等、できることからコツコツと作業を始めていた。
劉備たちは土地勘に明るい若者を連れて、シェイドウッド周辺の探索と、近隣の村の捜索を行っている。
途中、何度か魔族や魔物に遭遇した様だが数が少なく、3人の前には物の数では無かった様だ。
ただ、死体を野ざらしにするわけにもいかないので、切り捨てた敵の死体は全て回収し、シェイドウッド村の近くに掘った穴に埋めている。言うまでもなく、毛皮や肉が利用できるものは張飛が解体してから、ではあるが。
幸い、シェイドウッド村は井戸水が豊富な上、村の横をレムル川の支流が流れていることから、水に困ることはない。近くの丘で岩塩も取れるので、やはり生活の基盤とすべきはこの村になるだろう。
劉備たちはシェイドウッド村の北にあるパラヴェイン村、東にあるジャニスウッドの街を相次いで訪れたが、共にシェイドウッドよりもひどい有様で、家々は破壊されてほとんどの住民が逃げ出してしまい、生き残った者はほとんど死を待つだけの状態になっていたようだ。
劉備たちは彼らに食事を与えてシェイドウッドに連れ帰った。
パラヴェイン村からは31人、そして、かつて商業の街として栄えていたというジャニスウッドに至っては、聖教会の地下に隠れていた11人だけが最後の生き残りだという。
僕は彼らにわずかばかりの食事をふるまって労い、それぞれに合わせた仕事を与えた。
まずはこの村を立て直さなければ僕たちも含めて、全滅してしまう。人を助けてこの村に住まわすということは、それだけモノが足りなくなる、ということを意味する。
パラヴェインからもジャニスウッドからも、食料はもちろん、武具や家具、木材等、使えそうなものは根こそぎ回収してシェイドウッドに運び入れた。
馬車を使って何度か往復するほどの量だったが、今すぐ生活に必要な物、というよりは、あれば何かに使えるかもしれない、程度の物が多かった。
だが、聖教会から大量の毛布や食器が回収できたのは大きかった。
ついでに聖教会で信仰されている女神像も回収したが、シェイドウッドにあった教会は魔族に破壊されてい待っている為、しばらくは空き家に女神像を置いて教会代わりに利用することとなった。
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