第8話 義の武人、自らを語る。
誤字・脱字・不明な表現等があればコメント欄でご指摘お願いします。
登場してくる偉人たちは筆者のイメージに則しているので、歴史的事実や最新の研究内容とは異なっている場合がありますが、予めご了承下さい。
「それでは、我らのこともお話しせねばなりますまい。」
関羽が居住まいをただし、話し始めた。
3人はここではない世界の漢という大帝国に居たのだという。劉備は漢の皇帝に連なる家柄で、皇叔と呼ばれて親族に準じる扱いを受けていたのだそうだ。
若いころに出会った3人は、乱れた世に志を立て、民を救い、漢王朝の復興の為に力を尽くした。その際に3人は義理の兄弟として志に殉じ、同年同月同日に死ぬことを誓い合った。
3人の戦いは苦難の連続で、強大な曹操、呂布、孫権らとの激しい戦いの後、一旦滅んだ漢を蜀という土地に再建したが、まず関羽が、そして張飛が倒れ、ついには劉備も戦の陣中で病に倒れた。
3人は志半ばに倒れた無念を感じながら、気づくとこの世界に来ていたのだという。
「レオナルド殿、あなたの思いは立派です。是非、我らの理想の為にも、協力させて下さい。我ら3名、民を救う為、その全てを賭して戦います。」
そういうと、劉備は体の前で手を合わせ、頭を下げた。関羽もそれに倣う。二人の様子に気付いた張飛も、慌てて駆け寄ってきて同じ様な姿勢を取った。
「皆さん、ありがとうございます。皆さんのような豪傑がいれば、きっと魔族の脅威から民衆を救うことができるでしょう。」
3人とエドモンドが力強くうなずく。
「ところで、その姿勢は皆さんのお国での礼を示すものですか?」
エドモンドがふと尋ねる。
「ああ、これは拱手と申しまして、この様に両手を合わせることで相手に敬意を表すのです。女性の場合は手が逆になります。また、挨拶をする相手の立場によって、頭を下げる高さが変わるのです。」
関羽が説明すると、エドモンドが見様見真似で同じ格好をする。
「こう、ですかな?」
「大体は合っておりますが、この時に両手の親指同士を付けるのです。地域によっては片方の手を握ったり、様々なようですが。まぁ、ここには我ら3人しかおりませんし、これが正しいやり方ということで。はっはっはっ。」
そう言って関羽が豪快に笑う。
「長兄、雲長兄貴、何の話をしてたんだ?」
張飛が不思議そうな顔をして尋ねる。
「この世界のことや、レオナルド殿のことをな。我らのこともご説明していたのだ。」
「じゃあ、俺の長坂橋のことや、呂布との一騎打ちのことも話さねぇとな!」
遮る様にして張飛が声を上げる。
「まぁまぁ、待て。それより、イノシシの方は良いのか?」
関羽が困ったように張飛を制する。
「ああ、血抜きと皮剥ぎは終わったぜ。俺は皮は鞣せねぇから、誰かに頼むとして、肉の方はこれから切り分けて、塩漬けにて、後で干し肉にしようと思ってるんだ。」
「塩?あれだけの肉を塩漬けにするには、かなりの塩が必要になるんじゃないのか?」
いぶかしがる関羽に、村長が声をかける。
「塩のことなら心配なさらなくて結構ですよ。この土地は岩塩が豊富に取れるので、食料はありませんが、塩ならいくらでもあります。かつてはこの岩塩の取引でこの村も栄えていたのですが。」
村長はそういうと、昔を思い出したのか、遠い目でどこかを見つめている。
「兄貴、そういうわけだから兄貴も手伝ってくれよ。」
「では私も手伝おう、さっき聞いた話を益徳にも聞かせてやらなければいけないからな。」
劉備に促され、関羽も張飛と共に闇牙猪を解体していた作業台の方へ歩いて行った。
ご拝読ありがとうございます。
もしよろしければ、感想コメントをお願いいたします。