第4話 元・伯爵家嫡男、英傑たちと出会う。
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登場してくる偉人たちは筆者のイメージに則しているので、歴史的事実や最新の研究内容とは異なっている場合がありますが、予めご了承下さい。
その夜、
「レオナルド様、夜分に失礼いたします。」
エドモンドに声を掛けられ、目を覚ます。環境が変わったせいか、あまり深く眠れなかった様だ。
「どうした?」
「は、先ほどから外が騒がしゅうございます。モーリスが外の様子を探っておりますれば、レオナルド様も急ぎ身支度をお願いいたします。」
最初気付かなかったが、エドモンドは鎧を着こんでいた。
「魔族か?」
「まだわかりません。ですが、招かれざる客人であるのは明白かと。」
その刹那、家の外から悲鳴が聞こえた。
慌てて飛び出すと、いくつかの家が燃えており、その明かりの中に魔族の襲撃に村民たちが逃げ惑う姿が見えた。
「領主様、大変です!!魔族の襲撃が!!」
村長が叫びながら駆け寄ってくる。
魔族の数はわからないが、10や20ではきかない様だ。宴会の様子を見られたのかもしれない。
「戦える者は?」
「戦える者は武器を取って立ち向かっておりますが、いつもより数が多く相手になりません!」
このままでは、僕たちも危ない。辺境に追放され、その日の晩に魔族に殺されたのでは、何のために生きてきたのかわからない。
「レオナルド様、いざというときは私とモーリスが盾となります。ソフィーを連れてお逃げ下さい。」
エドモンドが覚悟を決めた顔つきでこちら見る。横を見ると、いつの間にか戻ってきたモーリスも控えていた。
「無駄だ。仮にこの場を逃げ延びたとしても、行く当てなどない。モンテール家に戻ることもできないし、戻ろうにもヴァランタン領を無事に抜けられるとは思えない。」
戦うしかない。
だが、僕は魔族と戦った経験などない。エドモンドは一流の騎士だが、明らかに多勢に無勢。この場を切り抜けるには、一騎当千の強者でもいなければ無理だ。
「…召喚術を、試してみようと思う。」
僕は覚悟を決めて、皆に言い放った。
「しかしレオナルド様、召喚術を使うのは初めてのはず、仮に首尾よく召喚できたとして、戦力になるとは限りませぬ!」
「もしだめなら、私も剣を取って共に戦おう。…村長、どうかその時は、彼女を連れて逃げてくれないか?」
僕は覚悟を決め、村長にソフィーの命を託した。
「レオナルド様、いけません!私もおそばに残ります!」
すがるように叫ぶソフィーに微笑んで、僕は目を閉じ、魔力を両手の先に集中させた。
召喚術を使うのは初めてだが、1年前から文献を読み漁っていたおかげで、手順はわかっている。両手に魔力を集中し、十分に魔力が高まったところで召喚する対象を強く念じながら両手を強く合わせるのだ。
そうすると、左右の手に集中された魔力同士が衝突し、その魔力の爆発によって対象を召喚するのだ。
「どうか、この危機から民衆を守る為の戦士よ、来たれ!!」
その瞬間、目の前に大きな雷が落ち、その中から見慣れない格好をした3人の戦士が現れた。
「ん、ここは一体??」
「ワシは今まで何を…」
「俺は一体…あ!おい、兄者!!兄者じゃねぇか!!」
3人はいきなりのことに混乱していたようだったが、その中の、どんぐり眼に虎のような髭をした大男が急に大声を上げ、優男風の人物に抱きついた。
「益徳!益徳ではないか!!そなたは部下の裏切りに遭って殺されたと!」
「そのお声は長兄、まことに長兄ではありませんか!!」
そこに、もう一人の長いひげを蓄えた大男が飛びついた。
「なんと、雲長か!!ここは冥府か、それとも夢か。」
あまりのことに言葉が出ない。召喚術というのは、魔力を用いて魔物の類を召喚、使役する為の物であって、人間を呼び出す為の物ではない。何より、過去にそんな例は聞いたこともない。
ご拝読ありがとうございます。
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