第3話 元・伯爵家嫡男、民を労う。
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登場してくる偉人たちは筆者のイメージに則しているので、歴史的事実や最新の研究内容とは異なっている場合がありますが、予めご了承下さい。
シェイドウッドはヴェルモン領内でも大きい村だと聞いていたのだが、建物の半数は傷んで放棄されており、まるで廃墟の様に寂れ切っていた。
村に来る途中、かなり広い範囲に畑があったが、管理されておらず荒れ果てており、村の中にも村民の姿はまばらであった。
村長から話を聞くと、ずっと飛び地で領主不在の状態が続いており、代理となる代官も10年前から赴任しておらず、ヴェルモン領の街や村は幾度となく魔族の略奪に遭っているのだという。
更に、領地から逃げ出そうにもヴァランタン領主が領境に兵を配して堅く閉じており、逃げ出すこともできない。
魔族たちは抵抗する領民を虐殺し、女・子供を攫い、食料を奪っていくという。
生き残った領民からも、絶望して自ら命を絶つ者、盗賊となって同じ人間を襲う者が後を絶たず、まさにこの世の終わりの様な状況となっているという。
代官の屋敷も、とうの昔に魔族に破壊されており、領主として赴任する僕には住むべき家すら無い。
まさに絶望的な状況である。
とりあえず村の中の空き家に荷物を下ろし、夜を明かすことにした。
村長を始め、わずかに生き残った村人を集め、持ってきた食糧でささやかな宴を開いた。
馬車1台に積める食料には限りがあり、今後のことを考えると手元に残しておいた方が良かったのだが、あまりに生気のない顔をした人々の姿を見て放ってはおけなかったのだ。
「領主様、ありがとうございます。本当に、久しぶりにまともな食事にありつくことができました」
村長はそう言うと、集まった5、60人の村民を代表して頭を下げた。
「いや、いいんだ。これから僕は、領主としてこのヴェルモン領を立て直したい。その為に、みんなの力を貸してほしい」
僕は立ち上がると、村民たちに頭を下げた。
領主の為に領民がいるのではない、領民の為に領主がいるのだ。それが、子供のころに祖父から教わった貴族の心得である。
僕は、その理想を自分の手で実現したい。
宴はささやかではあったが、盛況のうちにお開きとなった。
村民たちは各々の家路につき、僕たちも明日に備えて休むことにした。
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