第2話 元・伯爵家嫡男、辺境に赴く。
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登場してくる偉人たちは筆者のイメージに則しているので、歴史的事実や最新の研究内容とは異なっている場合がありますが、予めご了承下さい。
それから十日と経たないうちに、僕はモンテール伯爵家を追い出された。
流石に、「元」嫡男をほっぽり出して問題を起こされると困るからか、飛び地としてモンテール伯爵家が領有している辺境の土地を餞別代りに渡され、新たにその辺境の地「ヴェルモン」に封じられた新領主として赴任することになった。
それに伴ってモンテールを名乗ることは禁じられ、レオナルド・ドゥ・ヴェルモンと名乗ることとなった。
付き従う家来はごくわずか。
赤ん坊のころから教育係兼執事として仕えてくれたエドモンド・グラヴィール、メイドのソフィー・デュボア、そして、彼女の弟のモーリス・デュボアの3人だけである。
エドモンドは40過ぎの中年だが、かつてモンテール家に仕える一流の騎士だった男で、剣技に優れ、教養豊かな人物である。
ソフィーは僕より5歳年上で、弟のモーリスと共に幼少期から僕の世話係として仕えてくれている。
戦で両親を失った二人が路頭に迷わない様に、父が雇い入れたのだ。
弟のモーリスは僕の1歳下だが、明るく豪快な性格で腕っぷしが強く、その辺のごろつき相手なら4、5人を相手に回しても渡り合えるだろう。
本来なら、彼らは僕につき従う義務はない。
廃嫡された「元」伯爵家の嫡男など見捨てて家に残った方が得なのだろうが、子供のころからのよしみで「配流」に付き合ってくれるのだ。
ヴェルモン領はモンテール伯爵領からだと北東の辺境に位置しており、魔王領に近い位置にある。
魔王領、といっても、実際に魔王がいるのかどうかはわかっていない。
大陸の北方には人間がほとんど住んでおらず、魔族や魔物が跋扈している地域がある。その魔族や魔物たちが時折、人間の住む地域を襲うことがあり、辺境に住む人々がそれらを便宜的に魔王領と呼んで恐れている、というのが実情で、そこに魔王がいるのかどうかなど、誰も確かめていないのでわからないのだ。
ちなみに、魔族と魔物、というのも特に分類されておらず、人型の物を魔族、それ以外を魔物と呼んでいるに過ぎない。
餞別代りに渡された僅かな路銀と食料、武具を乗せた馬車は、出発から3日で隣領のヴァランタン領を抜け、ヴェルモン領にあるシェイドウッドという村にたどり着いた。
本来であれば通過する領地を治める貴族には挨拶をするのが慣例だが、ヴァランタン領主は先日の成人の儀で僕の廃嫡を最初に主張した母方の叔父であり、当然の如く挨拶は拒否され、それどころか武装した兵士に監視されながら領内を通り抜ける羽目になった。
おかげで盗賊から襲われることはなかったが、遠巻きに武器を構えた兵から監視される、というのは心地の良い物ではない。
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