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第16話 突撃、元・伯爵家嫡男の晩御飯 その1

誤字・脱字・不明な表現等があればコメント欄でご指摘お願いします。

登場してくる偉人たちは筆者のイメージに則しているので、歴史的事実や最新の研究内容とは異なっている場合がありますが、予めご了承下さい。

 しばらくして日も落ちたころ、夕食の支度を終えた村民たちが広場に集まっていた。

 以前は各家々で食事をしていたのだが、人が増えたことや、日中、各々に仕事が割り振られていること等もあり、基本的に食事を合同で摂る様になっている。

 その為、雨をしのげる様に大型だが簡易的なテントが張られている。

 今日の夕食は張飛が仕留めてきた鹿肉、と言っても魔物の肉だが。と、森で採集した野草や木の実を一緒に煮込んだスープと、それとは別に金次郎が採集してきた植物をそれぞれ、彼が調理した物が用意されていた。


 皆が食事を始める前に、皆は金次郎の前に集まり、彼が調理した物の説明を受けることになった。

 ザインの花の根とコーチ茸は、既に食べられていて害が無いと知られているので、先ほどの鹿肉のスープに入れられている。

 最初に、コーライン草の根について説明を始めた。

「この根っこ、特に名前が無いのでコーライン芋と呼びまずが、皆さんご存じの通り、味がかなり悪く、更に毒性があるので一度にたくさん食べると腹を下すのであまり食べられていませんでした。」

 金次郎は3つの皿に盛られた根を取り出した。一番左は元の色もままだが、真ん中は少し赤みがかっており、一番右は黒くなっている。

「この3つは、それぞれ別の方法であく抜きを行いました。皆さんから見て一番左にあるのは、皮を剝いてから切った芋を水にさらしただけの物、真ん中は塩水に浸けた物、そして、右側は燃やした木の灰に浸けた物です。いずれも、しばらく浸けた後、水で湯がきました。」

 そういうと、金次郎は左の皿の中から一つ取り出して齧りつき、すぐに吐き出した。

「水に浸けただけの物はエグみが強く、何もしていないものと変わりません。なので、毒も抜けていないと思います。」

 次に、真ん中の皿の物を一つ取り出して齧り、同じ様に吐き出した。

「塩水に浸けた物は、少しエグみが抑えられていますが、塩気が強く過ぎるので食べるのには難があります。」

 最後に、金次郎は右の皿の物を齧り、そのまま飲み込んだ。

「木灰に浸けた物は、色こそこの様に黒くなっていますが、エグみが抜けています。その代わり、味がほとんどしないので何かと一緒に食べる方が良いかも知れません。」

「味がマシになったのはわかりますが、それで毒が抜けたと言えるのですか?」

 村長の問いに、皆がうんうんと頷く。

「毒が完全になくなったかはまだ分かりません。ですが、弱くなっている可能性はあります。なので、私を含め何人かでこれを少し多めに食べて、明日以降何もなければこの調理の仕方が安全、ということになります。できれば5名ほど手を挙げて頂けませんか?」


 皆が顔を見合わせる中、張飛とモーリスが手を挙げた。

「食っても腹を下すぐらいで済むんだろ?俺ぁ体が丈夫なんだ。」

 張飛が豪快に笑うと、モーリスも同じ様に声を上げた。

「お二人は元々臓腑が頑丈そうですからな、他にもどなたかいらっしゃいませんか?」

 金次郎の問いかけに、意を決した様に村長と、年配の女性が手を挙げた。

「ありがとうございます。食べていて、もしエグみや舌がヒリヒリする感覚があればすぐに食べるのを止めて下さい。毒が抜けきっていない恐れがありますので。それでは、次に行きましょう。」

ご拝読ありがとうございます。

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