第10話 元・伯爵家嫡男、課題に直面する。
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登場してくる偉人たちは筆者のイメージに則しているので、歴史的事実や最新の研究内容とは異なっている場合がありますが、予めご了承下さい。
馬車で荷物を運んでいる最中、劉備たちは領内で盗賊の集団に襲われてこれを撃退した。
20人程度の集団で襲ってきたが、5、6人を切り伏せると逃げようとしたのでこれを捕らえた。聞けば、元々はジャニスウッドにから逃げ出した住民たちで、山に入って食料を探しながら、時折街道を通る人々から奪った食糧で食いつないでいたという。
劉備は彼らを許し、村に連れ帰った。
エドモンドを始め、劉備の判断に異を唱える者も多かったが、彼らは元々街の住民であり、やむにやまれず盗賊に身をやつすことになった、という事情も考えなければならない。
結局、僕は彼らを許すことにした。
もちろん、彼らの事情を哀れんだ、というのもあるが、彼らの中に職人が何人もおり、鍛冶、皮革、大工などの専門的知識を持っていたからだった。
その為、元・職人の彼らにはそれぞれ専門の仕事を請け負ってもらい、残りの元・盗賊たちは劉備たちの下、村を守るための自警団として働いてもらうこととなった。
専門の技能がある村民が増え、シェイドウッドの再建も現実味を帯びてきたのだが、人口が増えたせいで今後の食糧の確保に不安が出る様になった。
張飛が味見と称して食べたことで、闇牙猪などの魔物の肉に人体への悪影響はないことが分かったが、肉を日常的に入手することは困難であり、レムル川で漁をするのもあまり期待できない。
モンテール伯爵領から来る際に種もみを多く持参したが、育てるには時間がかかる上、農地も荒れてしまっている。
今はまだ野草や木の実、狩猟などで食いつなぐことができるとしても、冬を越すにはかなり厳しい。
幸い、まだ春になったばかりでこれから作付けをすれば秋の収穫には間に合うが、それを指揮する者がいない。
荒れ果ててやせた土地を再生するには専門的な知識も必要となり、秋の収穫まで食いつなぐための食糧を確保する必要もある。
「レオナルド様、農耕の経験のある者を集めてはおりますが、皆を指揮できる様なものはおりません。」
エドモンドが難しい顔をしながら報告する。
「村長は無理なのか?」
「村長も経験自体はある様ですが、元々は岩塩の採集と加工を生業にしていたので、農耕に関する知識にはあまり自信が無いと言っています。」
確かに、魔族の襲撃で働き手が減っているとはいえ、あの農地の荒れ具合を見るに、これまでも村長はあまり良い指示を出せなかったのだろう。
「劉備たちに頼るわけにもいかないだろうなぁ。どうしたものか。」
エドモンドと2人で考え込むが、妙案が浮かぶわけでもなし、徒に時間が過ぎていく。
「レオナルド様の召喚術をもう一度試してみる、というのはどうでしょうか?」
モーリスが不意に口にした言葉に、妙に納得してしまった。
確かに、あの時もダメもとで召喚術を使ったことで劉備たちを呼び出すことができた。今回もダメで元々だ、試してみる価値はある。
「そう何度もうまく行くものでしょうか?」
エドモンドの言うことにも一理あるとは思うが、試す価値はあるかもしれない。
「どうなるかは僕にもわからない。だけど、劉備たちを召喚した時は民を守れる戦士を強く願って召喚した。今度も同じ様に願えば、応えてくれるかもしれない。」
僕は不安そうな顔をしているエドモンドと、期待のまなざしを向けるモーリスの顔を交互に見て、大きく深呼吸をした。
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