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ゼロから学ぶハリウッドストーリー創作講座  作者: 森本純輝
序章 ストーリーとは
18/20

10 既存の三幕構成と新たな三幕構成を再定義する

ジュゲムブログの投稿記事をそのまま掲載しています。



★ご留意点

感想、レビューは当コンテンツにおける内容の質問のみ返信いたします。




前回まで複数の記事にわたって既存の三幕構成を「クライシス」の内訳に再構成する理由をお話した。その根拠については個人的にはまだ説明不十分な箇所も見受けられたのだが、一旦は読者の中で解消されたと半ば独断的に結論づけることにした。


だが、既存の三幕構成と符合する三つの構成要素「システム」「クライシス」「ソリューション」において、「クライシス」を新たな三幕構成としたのであればこれらの構成要素をどのような位置づけに定義づければいいのか、つまり三幕構成としてではない別の呼び名をどう決めるべきなのか、という新たな疑問が生じることになる。そろそろ先に進んで欲しい読者の方々もいらっしゃるだろうが、このブログは明確な根拠を提示することを目的としているところがあるので、これらの定義について追及していこうと思う。非常にくどいようだが、お付き合いして頂けると幸いである。




既存の三幕構成がこれらに符合するというのであれば、単に主人公の立ち位置から見た「三幕構成」という定義でいいのではないか、という判断が生じるかもしれない。だが、三幕構成という言葉の意味を「クライシス」の内訳に再定義した以上、読者の混乱を防ぐためにも「三幕構成」という言葉を二つ生じさせるわけにはいかない。よって既存の三幕構成に関して新たなワードを付加させる必要が生じることになる。同様に、「クライシス」としての三幕構成においても便宜上もう少し分かりやすいワードをつけた方が望ましいと思う。




二つの三幕構成の定義付けは解説し終えたので、この記事ではこれら二つに名称をつけると共にそう名付けた所以を説明して終わろうと思う。ただ、「クライシス」の三幕構成に関しては、この後のチャプター「第1章 ストーリーの構造」にも関連する部分があるので、それと少し連動させてお話できればと思う次第である。そうして本記事の更新後に投稿する次の記事で「登場人物とその役割」に関する記事をいくつか執筆し、その後にこのチャプター「序章 ストーリーの基本」を全体的に振り返って簡潔にまとめ、そして、「第1章 ストーリーの構造」に入ろうと思う。


では、始めよう。




目次




1 既存の三幕構成「フェイズ」


2 クライシスの三幕構成「テンションフロー構造」


3 「テンションフロー構造」はストーリーの仕組みを最小化したもの


4 まとめ












1 既存の三幕構成「フェイズ」




上記にもある「フェイズ」とは「段階」を意味し、ストーリー上の話の各々の流れに節目としての区切りをつけて次の話へと移行する意味をはらむものである。


なぜ「段階」と呼ぶに値するものなのか?


それは、まるで一つの色が段々とグラデーションを伴って色相が変化していくように、話が徐々に変化していくためにはその流れが全体的に連動していながらも「階段」のように節目をつける必要があるからである。そうしないと「変化」と呼ぶに値するグラデーションが生じないからである。階段は一つの方向に向かっていながらも同じ段があることはなく、徐々にその位をステップアップさせていく仕組みがある。そのような意味で「段階」と呼ぶに相応しいのである。




だが、そうなると、既存の三幕構成のうち何をもって「フェイズ」とするのか、強いて言えば「三幕構成のうち何が段階に該当する性質を持っているのか?」という根拠を話す必要が出てくる。これには既存の三幕構成でよく説明される「主人公自身の変化」が関係している。


既存の三幕構成を「フェイズ」と呼ぶので、その内訳は「日常」「対立」「解決」である。ここまでは読者の方々も理解できるはずだ。「段階」と呼ぶ以上、読者はこの三つの中に何らかの上下の仕組みがあって、それを下から上へと向かう意味があるのではないかと感じる方もいらっしゃるかもしれない。確かに先の説明には「階段」という言葉を用いたが、この「段階」はむしろ「グラデーション」に近いニュアンスをはらんでおり、その意味で「内面的にステップアップするもの」、もっと言うと主人公の「成長」に該当するものである。




ややこしく感じると思うので、どういうことか詳しく解説しよう。


ここでの「段階」とは、一つのステージごとにレベルが存在し、そのレベルが登場人物たちに対して役割を果たした時に次のレベルに移行するために節目を迎えて到達することを意味する。そして、その「レベルの移行」には、分かりやすく表現するならば、先ほど述べた通り「階段」のように「上下構造を登っていく」というようなイメージよりも、登場人物の内面的な部分、つまりは変化する前の元々の登場人物の心境あるいは境遇といった立ち位置が、外部から介入してくる様々な出来事―ハプニングやアクシデント、または彼や彼女が望んでいるものの獲得などの、成長を促すための体験や経験―を通じて、それまでとは違ったものへと移り変わっていく、というような、「内面の様相が違った形状に移り変わること」としての意味合いが含まれている。分かりやすいイメージで表現するならば、主人公の心の色が「赤」だったのに対し、様々な外因が介入してきたことで紫という過程を経て「青」へと変質していく、というようなイメージだろうか。そうした時にその色が描かれている範囲、つまり円状の境界線のようなものが、段々と拡大していって大きくなる、というようなイメージを抱くと分かりやすいかもしれない。あるいは円の中にいる主人公がその「殻」を破って一回り大きな円を描く、というようなイメージでもいいだろう。また、別の表現をするならば殻の内部でくすぶっているヒナのようなイメージとでも言うべきだろうか。その殻を自ら破った外には新たな景色を一望できる境遇が待っているとでも言えばいいだろうか。そういったような「主観的立ち位置を持つ存在の範囲の拡大」を私の表現では「成長」と呼んでいるのである。




なぜ、この「成長」が「フェイズ」と呼べるものに該当するのか?


頭のいいあなた方読者たちはお気づきかもしれないが、通常、人の成長には節目というものが存在し、その節目は「壁」や「困難」としての役割を果たす。その壁を自身の力で乗り越えることによって人間性のある存在として一皮むける。これを登場人物にも当てはめるのである。この「壁」や「困難」を一つの「区切り」として機能させることで、主人公がそれまでとは打って変わった内面を有することになる。この「区切り」をここでは「フェイズ」と呼んでいるのである。ここで述べている「壁」や「困難」とは言わずもがな敵が引き起こす「危機」やそれによって主人公が直面する「苦境」「逆境」を意味する。なぜ、主人公にとっての「壁」や「困難」が「敵による危機」に該当するのかという点に関しては、前回の記事「ストーリーの根幹を成す二つの対立構造」にも書いた通り、トラブルメーカーである敵が引き起こした問題を解決するのは、主人公の役目だからである。この両者の「事態の変化の引っ張り合い」によって最終的に敵が作った状況を主人公が打破することに成功するパターンが一般的であるゆえに、必然的に主人公が問題を解決するからである。主人公という立ち位置の存在は本来的にそのような絶対的な使命をはらんでいるから、とも言えるだろう。




前回の記事のリンク先


↓ ↓ ↓ ↓ ↓


ストーリーの根幹を成す二つの対立構造 | ゼロからわかるハリウッドストーリー創作講座 (jugem.jp)








2 クライシスの三幕構成「テンションフロー構造」




では、新たにこのブログで定義づけた「クライシスの三幕構成」は、どう扱えばいいのだろうか?


「クライシス」は、ストーリー上の事態の均衡が話の半ば過ぎ頃から敵によって著しく乱されるということを表した表現であることは、何回かにわたって解説している。この「事態の浮き沈み」を「テンション」とし、それを一連の流れ「フロー」として再定義したものが「テンションフロー構造」と呼んでおり、この呼び名を「クライシスの三幕構成」の代名詞としてここでは位置づけている。


この構造は以前、元旦に投稿した記事である「特集」にその図式を掲載しているが、非常に大事な概念なので再度掲載しておこう。



挿絵(By みてみん)



「特集 新年の挨拶とこれからの活動、そして自身が使う創作方法の紹介」の記事は下記リンク先を参照


↓ ↓ ↓ ↓ ↓


特集 新年の挨拶とこれからの活動、そして自身が使う創作方法の紹介 | ゼロからわかるハリウッドストーリー創作講座 (jugem.jp)




改めて、この構造を詳しく解説していこう。








3 「テンションフロー構造」はストーリーの仕組みを最小化したもの




「テンションフロー構造」とは簡単に言うと、「危機が起きてから解決するまでの道のり」という定義として扱うものである。


敵が意図的に起こした危機によって、平常だったストーリー上の均衡が著しく下降していくも、主人公による状況打開で一気に事態が安静化に向かうという特徴がある。このグラフが意味することは、ストーリーという「変化」の一連の流れはほぼ全てこの構造に集約されている、ということであり、これがストーリーラインとしての仕組みを最小化したグラフだということだ。




具体的に、どのように最小化されているのか?


青い線の「出来事の重要度の均衡」は敵が作り出す危機の表れであることは恐らく以前に解説していると思うが、その曲線の様相に注目していくと分かってくることがある。


まず一つ目に、オレンジ線の「ストーリーの進行方向」のちょうど半分、つまり中央あたりの地点よりやや右に進んでいった地点のあたりで「均衡線」が一気に下降していく特徴が見受けられる。


これは、「クライシス」でいうところの「発生」「深刻化(以前は「解明」と記載)」「収束」を連続的に線で表したものであり、出来事の羅列の変遷としての表れになっているものになる。




※ ことわり


真ん中にある「解明」は実はこの「テンションフロー構造」には記載していないもう一つの線「ソリューションの伏線」というものから引用したワードであり、ここで理解の混乱を避けるために、この「解明」を「深刻化(または重度化)」というワードに再定義させていただく。




それは読者の方もお分かりの通りだと思うが、肝心な点はなぜ、中心が最重度化するのではなく、中心より右の後半部分で一番下降するのか、という部分である。


ストーリーのクライマックスではよく、主人公にとって土壇場で絶体絶命のピンチの様子が描かれる。それはストーリーの中盤頃からいきなり「ドン!」と来るものではなく、徐々に肥大化していき、最終的に最後に近い終盤あたりで巨大化する、という傾向がある。それは話の流れ的に、読者にこれから危機が起こることをそれとなく知らしめることを前提としているからであり、突然何の前触れもなく危機が「バン!」と起きるのは、読者に「何が起こっているのかわからない」という混乱を招き寄せるだけであって、そもそもそんな展開はストーリーの流れから言っていびつに見えてしまう。ハリウッド脚本の中には、ストーリーの冒頭でいきなり危機めいた事態を展開させて読者を一気に引き付ける「フック」という技法が存在するが、それは今後の展開の謎、つまり伏線として機能させるためのものであり、意味のない荒唐無稽な流れをいきなり導入しているものではない。「事態の変化」には、危機が最も巨大化する前に予め読者に「なぜ、その危機が起こるのか?」ということの「説明」がなければならないのである(ちなみに、この危機が起こることの「説明」こそが先ほどの「解明」にあたる項目となる)。だから、徐々に肥大化する構造が必要になるのだ。


そのような意味合いからして、危機というものは最後の方になって最大化するという特徴を持っており、その表れとしてクライマックスにあたる後半で事態が最重度化する、という流れを汲んでいる、ということになるのだ。それがこの「均衡線」の表れになる、ということだ。








4 まとめ




いかがだっただろうか。


今回は、本来的に「ストーリーの構造」にあたる部分を解説したが、これが今後のいろいろな細かい要素に関わっていくことになるので、勉強熱心な読者の方々には復習してもらえると幸いである。




以下、まとめ




○主人公の三幕構成「フェイズ」は、彼や彼女の内面が一皮むけて成長していくための「節目」として機能する。


○クライシスの三幕構成「テンションフロー構造」は、「危機が起きてから解説するまでの道のり」を意味する。


○その特徴は、クライマックスで一気に事態が肥大化する傾向をはらんでいる、というもの。




次回は、なるべくなら要の「本格特集」を投稿できるように臨んでいきたい、というのが本心である。


今後もよろしくお願いしたく思う。

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