天才勇者を封じるたった一つの冴えたやり方。
第四回なろうラジオ大賞参加作品第八弾!
「ようやく会えたな、魔王!」
目の前にいる勇者が私に声をかける。
魔族という、人族とは異なる経緯で進化した知的生命体であるだけで、他は別に人族とあまり変わらぬ者達の王たる私へ。
人族とは違うだけで、外見だけで勝手に侵略者だとか世界征服とかを考えてるとか思い込み、こうして異世界から、何度も人族――天災に匹敵する天才を付与した人族を喚んで……そこまで私達魔族を排除したいのか人族よ。
いいだろう。
そっちがその気であればこっちも徹底抗戦だ。
これで何度目になるかは分からんが、悪く思うな異界の人族。
「ふっ。貴様と私のスペックだ。今ここで戦えば、人族の土地にまで影響を及ぼしかねんだろうから……場所を変えよう」
そして私は、直後に転移魔術を発動。
瞬時に私と勇者が、数多くの石柱が立つ、どことも知れぬ荒れ地へ移動して……そして勇者は、空のある一点を見て目を見開く。
「ッ!? あ、アレは……まさか、ここは俺達がいた惑星とは違う惑星なのか?」
勇者が見たのは、碧色の惑星。
勇者の言う通り我々がさっきまでいた惑星だ。
「そうだ。それから貴様に餞別だ」
そして私は、勇者へ、対異世界召喚系勇者用の魔術をかけた。
ギョッとする勇者。
そして彼は、自分が何をされたのかを確認しようと、ステータス、とやらを展開しようとしたのだが、私はすぐに「やめておけ」と告げた。
「貴様に施したのは、転移魔術と環境適応能力以外のスペックをありえねーくらい上昇させる呪い。祝福ではなく呪いだ。そしてなぜ呪いと言うかだが……少しでもその場で何かすると、お前はこの惑星を破壊し宇宙空間に放り出され死ぬからだ」
「ッ!?」
驚く勇者。
そしてそんな勇者に私はさらに言う。
「それから、周りをよく見ろ」
言われて、勇者は眼球だけを動かし……絶句した。
なぜならばその視線の先――全ての石柱に、ニホンジンなる、勇者の同郷の人族が、顔だけを出した状態で封じられていた事に気付いたからだ。
「その石柱も、餞別だ。少しでも動いてしまわないようにな。そしてこの土魔術を貴様にもかけておいてやろう」
そして私は、勇者を、顔だけを解放した状態で石柱内に封印した。
「ではさらばだ、異界の人族。せいぜい惑星を破壊しないようにな」
そして私は元の惑星へ転移した。
やはり反則な相手への対処は、この方法に限る……が、これからも、数多の勇者が召喚される事だろう。
一応あの惑星以外にも、追放用惑星を見つけておかねばな。
命があるだけ、ありがたいと思え。
私は貴様ら人族とは違って無駄な殺生が嫌いだからな。
まぁ、殺された方がマシな処遇だという部分は認めよう。