表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/49

マレビトってつまり地球人?

 ふたりの呆気に取られた表情を見て、カイヤは得心がいったというように何度か頷いた。


「なるほど、やはりか。いや、以前にも何人か、地球とやらからこちらの世界に来た人間がいた。だから君たちも、もしかしてと思ったんだ」

「よっしゃ、ラッキー!」


 こんなところで言葉の通じる人間に出会って、しかもこちらの事情を理解してくれるなんて、と流は小さくガッツポーズした。


「カイヤさん、だっけ。そのひとたちはどうなったんだ? 地球に帰れたんだろ? そうだって言ってくれよ〜!」

「いや……すまないが、そこまでは知らないんだ」

「そんな……!」


 期待した反面ショックが大きすぎて、流はガックリと首を折った。美智子がクスリと笑い、流の背中を叩いて励ます。


「まぁまぁ。こっちの世界に来た地球人がいるってわかっただけでも大きなヒントになると思うわよ」

「そりゃそうだけどさぁ……」


 美智子はカイヤに振り向いて言った。


「とにかく、危ないところを助けてくれてどうもありがとうございます。それで……図々しいとは思うんですけど、その……私たち、いきなりここに飛ばされてどうしたらいいかわからないし、今夜泊まる場所にも困ってるんです。力を貸してください!」


 お願いします、と頭を下げる美智子。カイヤは困ったように言った。


「頭を上げてくれないか、お嬢さん。泊まる場所は、よかったら今日はうちに来るといい。でも、協力というのはどうしたらいいのかな。具体的なことがわかれば、私としても判断しやすいんだけれど」

「ありがとうございます! ほら、流クンも頭下げて」

「あざーす」


 美智子は思わず流の背中を思い切り叩いていた。


「いってー!」

「おお……」

「私たち、どうしても地球に帰りたいんです。それに、どこではぐれたかわからないんだけど、あとふたり、仲間がいるんです。私の恋人と、彼の恋人と。ふたりを探すのと、地球人の目撃情報を探るのと、無理とは言いませんが、せめて私たちがそうするためにどうしたらいいか、一緒に考えてもらえませんか。こっちの世界のこと、何も、何もわからないんです」


 美智子の言葉に、カイヤはう〜んとうなった。


「それは難しいかもしれない。私が出会った地球人はふたり。どちらも三、四十代の男たちだった。彼らも帰る方法と、それからはぐれた仲間を探していて、この国の王都へ旅立ったんだ。そこから先は私にはわからない」

「それなら、私たちもどうにかして王都へ行かなくちゃ……」


 美智子は下を向いてつぶやいた。

 何とかしなければいけない。だが、どうやって王都まで行くのか。そもそも王都が遠いのか近いのかすらわからない。だんだん辺りが暗くなっている気もする。


(考えなくちゃ。ひとまず、このカイヤさんっていうひとのウチに連れて行ってもらって、もしあるなら地図も見せてもらいたいし。ああ、やることが多すぎる! 賢ちゃんたちは近くにいないのかしら。すれ違いになったら……)


 急に不安になって、美智子はチラリと流のほうを覗き見た。彼はそんな視線に気づくことなく、「あち~」だの「だり~」だのと文句を言いながらしゃがみこんでいる。


 せっかく事情通な、しかも親切にしてくれそうな男が目の前にいるというのに、まったくの無視。彼の説得なんて考えてもいないようだ。もしかしたら、美智子に丸投げするつもりなのかもしれない。


 美智子はムッとしながら流に声をかけた。


「ちょっと、貴方からもお願いしてよ、流クン! 今はこのひとしか頼れないのよ!」

「えっ、オレぇ? え~~と、じゃあ、カイヤさん」

「なんだい」

「なんか、力になってくれそうな国の役所とか、そういうとこまでだけでも連れてってくれませんか? オレも美智子ちゃんも、武術の心得はないし、美智子ちゃん怪我しちゃってるし。手当とかもしてくれたら、ありがたいんスけどぉ」


 美智子に叱られて、流は低姿勢で首をすくめながらカイヤに頼み込んだ。異世界に飛ばされたことがあるにしては、頼りにならなさそうな感じではあるが、まだ高校生だということを考えればこんなものなのだろうか。


 だが、拙い流の言葉にカイヤは笑顔を作ると頷いて口を開いた。


「いいだろう。そういうことなら、大聖堂までは一緒に行こう。君たちを見ていると、何だか危なっかしいからな。変な人間に利用されかねない」

「やっり~! よかったね、美智子ちゃん」

「まったく、調子いいんだから。やれやれよね」


 美智子はため息をつくと、カイヤに向き直った。


「ありがとうございます、カイヤさん。よろしくお願いします。あ、私の名前は神谷 美智子。彼は流くん」

「新島 流でーす」

「ミチコ、ナガレ、よろしく。さっそく移動しよう、と言いたいところだが……あの猪は村に持って帰るから、少し支度させてくれ」

「持って帰るって、どうやって?」

「担いでだよ」


 カイヤは引き抜いたロングソードで猪の首に切れ込みを入れながら、事も無げにそう言った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ