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【六章】収束の魔法少女 ガルライディア  作者: 月 位相
追憶の母

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吐露 Ⅱ

遅くなりました。

 正午を過ぎて暫く経って、燦々と照りつける太陽が僅かに西に傾きつつあるなか、双葉子供園の広間(一般家庭で言うところのリビングに役割的には近い)に、二人の少女がいた。

 二人揃って、テーブルに突っ伏して、ピクリとも動かない。

 また、数分前まで、そこには更に数人の子どもがいたが、既に退室後だ。


「皆、元気だね………………」

「……今日は普段の3割り増しくらいね。特に女子のテンションが高かったわね」


 不意に、幼い方の少女――結が呟いた。

 それは、特に応答を求めたものでは無かったが、それにもう一方の少女――守美子が反応した。

 退室済みの子どもたちの世話に慣れた彼女でさえ、今日は疲労でぐったりとしている。


「結は人気者ね」

「……嬉しいんだけど、何か微妙な気分だよ」


 元々縁のあった芽衣に加えて、その他、特に女子の勢いが凄まじかった。

 勉強を教えているうちに、いつの間にか着せ替え人形になっていた。

 当人にも何が起こったのかは、分からない。


「皆んな、何やかんや年上に飢えているんだと思いますよ」


 そう言って広間に入ってきたのは、以前結が訪れたときに台所にいた女性――晴乃(はるの)

 守美子同様、双葉子供園で育った彼女は、現状ほぼ一人で子どもたちの世話をしている。

 そんな彼女の手には、二人分のお茶と茶菓子が乗せられたお盆があった。


「出てったきり、殆ど寄り付かなかったのに、最近はどういう風の吹き回しかしら」


 守美子を見つめるその瞳に浮かぶものはなにか。

 結はそもそも見えなかったが、守美子にははっきりと読み取れた。


 そこにあるのは、誂いと、安堵と――――。

 読み取ってから、読み取ったからこそ、守美子は視線をそらす。


(情けないまでに、見透かされているわね…………)


 態々()()()で聞いてくるのだから、底意地が悪い。


「………………。二人の午後の予定は何ですか?」


 守美子(家族)の前での口調と()の前でのそれが入り混じったような問いかけに、反応したのは守美子だった。

 結の方はどちらに向けた問かが分からなかっただけだが。


「――結、午後時間ある?」

「あるよ。何か用事?」


 やることが無くて、街の散策すらするような状態なのだ。

 結の時間的余裕は呆れるほどにある。

 守美子は、若干迷いが残っているのか、少し間をおいてから、


「少し手伝って欲しい事があるのよ。面倒な事なんだけど、大丈夫?」

「――う、うん。大丈夫だよ……」


 答えながらも、結の頭の中では()()()()の想像がなされていた。

 守美子が前もって、面倒、と評することなど、結は初めて聞いた。


(山籠りならぬ、森籠りとかかな…………。魔物の巣窟に放り込まれる…………? いやいや、幾ら守美子さんでもそれは無い。……と思いたい。後は何だろ……、魔物を効率よく倒すための実地研修?)


 同じである。

 結の守美子に対するイメージが酷い。

 危険生物のなかで現代人に生活を指せるなんてのは、完全に鬼畜の所業だ。


「――――結? どうしたの?」

「――な、なんでもないっ」


 結は頭を振って、想像(風評被害)を思考から追い出す。

 守美子は、数瞬訝しむ素振りを向けたものの、立ち上がると、


「それじゃあ、着いてきて」


 そう言って広間を、子供園の建物を出ていく。

お読み頂きありがとうございます。

今後も読んでくださると幸いです。

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