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実験

 薄暗い一室、そこには二人の女がいた。


 一人は、モデルに負けず劣らずのプロポーションを誇り、烏の濡羽色の髪を揺らす美少女。

 彼女はワインレッドのドレスを纏い、傍らにはこれまた血のように赤い槍が一本。


 もう一人は、ボサボサの金髪に褐色の肌に覆われたやせ細った身体の女。

 薄汚れた衣服を着て、その額には()らしきものが生えている。


「――それで、実験はどうなった」


 金髪の女は、美少女に問う。


「駄目ね。魔物にもとの生物には無い性質を()()()()与えること自体には成功したのだけれど、大抵の魔物の知能じゃ扱いきれないわ」

「だが、知能のある魔物は基本的に性質を付与しづらい、と」

「ええ。結局は元々ある器官に、機能を付け加えるだけ。機能を追加できる器官自体がないとそれは出来ない」


 蠍型の魔物の尾に毒針を射出する機能を付与したように。

 予てより、計画していた実験の結果が芳しく無く美少女は、気落ちしたように、溜息を漏らす。

 金髪の女は、少し考える素振りをしてから、


「機能を追加した魔物の知能を更に上げることは可能か?」

「試したけど、()()無理ね。私の()()()()()が足りてないのかしら」

「ふむ、……それは大いにあるだろう。そもそもお前のそれは扱い難い部類だ。――私のと同様に、な」


 嘲るように気味の悪い笑みを浮かべる。

 しかし、女は美少女の利用価値を良く分かっている。

 現状不可能であろうと、今後は可能になるのだから、美少女を捨てることはないだろう。


「もう一つの実験はどうなっている?」

「その準備は整ったわ。でも、()()()だからあの街の魔法少女全員は確実に相手に出来ないわ」


 それを聞いて、女はやれやれと頭を振る。


「あの街に拘らなければ、良いだろうに。あれらよりも雑魚なのなど掃いて捨てるほどいるだろうに」

「あら? 貴方にしては評価が高いじゃないの」


 口を滑らせたと、女は口元を不快感で歪める。


「あの街で実際に動いている魔法少女ども以外にも警戒せねばならない奴がいる。それも複数な」

「貴方が言うほどとはね。実際に動いていないということは前線を引いたはずでしょう」


 美少女は納得がいかないらしい。

 実際に見たことが無いのだから、仕方がないと、面倒ながら口を開いた。


「前線を引いたとしても、だ。私の特製の魔物どもが何度やられたことか」

「はあっ? 貴方の特製っていかれてるじゃないのよ。それを何体も潰しているというの?」


 女は、独自の方法で魔物を強化することが出来る。

 その手法を用いた魔物は、通常のそれよりも数段強い。

 そんな文字通りの化け物を倒しうる存在がいる。


 美少女は戦慄の表情を浮かべた。

 しかし、それは一種の出来事。

 すぐに代案を思いつき、顔つきは晴れた。


「貴方の魔法で殺せばいいじゃない。貴方のそれなら一撃よ」

「それがそうもいかない。私の魔法では街中への侵入が困難だ。しかも入ろうとすれば、それを悟られる。しかも、真っ向からの勝負は少なくとも一方には勝てん。お前と同じ理由で、な」


 まあ、良い。

 頭を切り替える。


「それで、試作品の性能テスト用に、奴らを分断したいのだったか」

「ええ、まあ、半分に分断できれば丁度いいでしょ」


 それを聞いて、女は溜息とともに、魔法を起動した。

 瞬間、彼女らのすぐ横の空間が歪んだ。


「それならこいつを使え。こいつなら奴らの足止めに適切だろう」

「そうね。それじゃあ、宜しくね。()()()()


「ふふ、お任せください。()()ヒィアツィンテ様」


 ツヴァイと呼ばれた女は、醜悪な笑みとともに一見恭しく跪いた。

お読み頂きありがとうございます。

今後も読んでくださると幸いです。

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