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迎撃の後に

 サソリを殲滅して、最初に待ち受けていたのはガルライディアの治療だ。

 とは言え、魔法局には治療魔法を扱える職員(元魔法少女)がいるため、グラジオラスは応急処置をするに留め、ガルライディアはエレクに背負われる形でその場を去った。


「それで、私達は街の被害の確認ね。確かにあの二人よりは私達のほうが向いてはいるけど」

「ええ、特にあのサソリが放った針の被害が無いかだけでも確認したいです。上空に打ち上げられたものは防ぎましたが、他の戦闘中の流れ弾が気になるので」


 魔法少女の仕事は、基本的に戦闘分野(個々人の適性にもよる)なのだが、街に被害が出たときには復興の援助などをするようにと命令を受けている場合が多い。


 グラジオラス達もその一人(厳密には四人)だ。

 そして、魔法局に待機している治療魔法の使い手(特に専門家を治療魔法師と呼称する)には劣るものの、グラジオラスとセージゲイズは共に十分なレベルで治療魔法を扱える。

 その為、基本的に重症者の処置(少なくとも応急処置)は彼女らが行うのだ。(現場にいるのは魔法少女たちなのだから迅速な対応が求められるため)

 そのための教育さえされる。


 因みにだが、ガルライディアとエレクは戦闘特化、もっと言えば戦闘しか出来ない。

 それに対して、グラジオラスとセージゲイズは治療や瓦礫の撤去などが可能だったりする。

(前者二名が瓦礫の撤去をしようとすると火力が高く危険なため)


 良くも悪くも火力が高いということは危険なのだ。



 閑話休題。


 瓦礫に挟まれた人を助けるのを手伝ったりしながら、彼女らは上空に打ち上げられた針の被害の有無の確認をした。

 3本目を確認し終えた時点では、幸い針での被害はおろか死者すらいなかった。

 その3本はどれも街の内側だったために被害が少なかったのだ。


 しかし、問題は4本目にて発覚した。


「お母さんっ、どこぉ……?」


 そう泣きじゃくり母親を探して、うろうろと当てもなく歩き回っている女児がいた。

 年の頃は4、5歳のお下げが特徴的な子供だった。


 こう言っては何だが、親と離れた子供がいるのは災害現場では当然といえば当然だ。

 彼らと彼らの親、もっと言えば周囲で逃げ惑う大人たちとの歩幅が違うのだし、身長的に視界に収まり難く、容易に人の波に飲み込まれるのだから。


 それでも、一切心が動かないかと言えば、否だ。


「大丈夫? お母さんとはぐれちゃったのかな?」

「お姉ちゃん、魔法少女さん?」

「ええ、私はグラジオラス。そっちのお姉さんはセージゲイズ。貴方のお名前は?」

「……ながい ひな」


 駆け寄り視線を合わせて、そう声を掛けるグラジオラス。

 グラジオラスとセージゲイズを比べた場合、基本的に冷たい印象を抱かれやすいセージゲイズよりも(見かけは)穏やかなグラジオラスの方が子供受けが良い。

 面倒見の良さを比べるのなら、どっこいどっこいなのだが。


(意味が違うとは言え、グラジオラス(としうえ)にお姉さん呼びされるのは、違和感すごいわね)


 まったく別の事に意識が向いているが、子供の対応はグラジオラスに任せているために問題ないと判断。


 取り敢えず、グラジオラスは女児から大まかな事情を聞き出した。


「――お母さんは私達が探すから、貴方は一回安全……危なくない所に行こうか」

「――え? わたしも探すっ」


 女児としては、一刻も早く母親と会いたいのか、自分で、自分も探すときっぱりと言い切る。

 だが、グラジオラスはそれも認めない。


「それは駄目だよ。お母さんと会えた時に貴方が沢山怪我してたら、怒られちゃうよ? だから、貴方は待っててね」


 ぽんぽん、と頭を軽く撫でてから、膝立ちから立ち上がる。


「セージゲイズ、この子をお願いします」

「了解。届けたらすぐに動くわ。まずこの子が迷子の扱いになっているか調べてみる。そこで見つかったら、それで良し……なのだけれど」


 二人の捜索活動が開始された。



 ________________




「――結局情報はありませんでしたか」

『正直予想していたとは言え、探すのは大変ね。怪我人として病院に搬送された人の中にもそれらしき人はいなかったわ。それどころか、ひなという名前の迷子届けも、ながい氏の怪我人も女性はいなかった』

「ありがとうございます。私も探してはいますが、未だ消息は不明ですね。何か分かったら連絡をください」


 通話を終え、捜索を再開した。

 ついでに瓦礫の山々の撤去をしながらも、()()()()()()探す。


 とは言え、個人を特定ができるかどうかという問題もあるにはあるが。



「いましたか」


 瓦礫の山をどけること実に10回、人を発見すること3回にして、30歳に満たないであろう女性を見つけた。既に息絶えているのはすぐに分かった。


 近くに転がっている罅割れた携帯電話を手に取る。

 そのロック画面に写っていたのは、そこにある女性。それと――



 ________________




「……()()救えなかったのか、私はっ――――!!」


 ゴンッ、と近くの瓦礫が吹き飛んだ。

お読み頂きありがとうございます。

今後も読んでくださると幸いです。

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