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【六章】収束の魔法少女 ガルライディア  作者: 月 位相
追憶の母

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大針迎撃戦 Ⅲ

「――ゲホッ、ガ、――」


 地に叩きつけられて、激しく咳き込む。

 唾液に混じり、鮮血が散る。


「ぐうぅっ…………」


(う、動けない……?!)


 四肢に力を込められない。それどころか、『フライクーゲル』すら握れず、地に転がった。

 握力が一切無くなった、そうとしか思えない程に力が入らない。

 それでも、何とか首だけを動かして、サソリを睨みつける。


 片方の鋏を失いながらも、()()()()()()()サソリを。

 収束魔力弾をも用いて、ガルライディアの放った『貫通(ペネトレート)』は確かにサソリに対して、甚大なダメージを与えはしたが、サソリの本命はその毒にある。

 見た目的なダメージに対する実際の被害は、そう多くない。


 そして、ガルライディアは言うまでもなく、絶体絶命。

 今にも敵の必殺を無防備に受けようとしているのだから。


「――――ッ」


 ぎゅっと目を閉じて、痛みを待つ。

 最早彼女に抗う術など無いのだから。


 けれど、彼女はまだ死なない。

 殺させない。


「――ハアアッ」


 逆袈裟に切り上げ、針を弾く。

 その斬撃には、白の光芒が宿っていた。



 ________________




 危なかった。

 素直にそう思う。


 グラジオラスは針を被害なく地面に下ろすのにさえ、数分を要した。

 そして、ガルライディアの命を危機に晒した。

 ギリ、と歯を食いしばる。


 分かっている。魔法少女とは命懸けで戦う者なのだ。

 だが、自分がいるというのに、仲間を死なせかけた。


「…………潰す」


 ボソリ、と殺意を発露して、彼女は地を踏みしめた。

 その呪詛は、サソリに対するものか、それとも――

 そこまで思考して、切って捨てる。

 今は、そんなものはいらない。


「『起源魔法(オリジン・マギカ)』、『断崖絶壁毀す(ディバイン・プ)白亜の加護(ロテクション)』」


 純白が身体を、周囲の空間を覆い尽くす。


「――――」


 再開の挨拶とばかりに、針の乱射がグラジオラスを襲う。

 そんなものは無意味だというのにも関わらず。


「ハアアアァァッーー!」


 純白に輝く小太刀の二振りが激しく交差する。

 幾重にも重なった閃きの数だけ、硬質なものが拉げ、まったく関係のない場所へと離れ行く。

 そこに残るのは数多の弾痕と純白の少女だけだ。


「……ふっ……!」


 己に出し得る最速にて、踏み込む。

 白の光芒を残して、絶殺の風とかす。

 だが、サソリも黙ってはいない。無事な方の鋏による横薙ぎが一切の容赦なく少女を叩く。


 ガギン、と不格好な鐘が鳴る。

 発生元には、片腕を跳ね上げたグラジオラスと、跳ね上げられたサソリの姿。


「セエアアッーー!!」


 一閃。

 純白がサソリの瞳の一方を斬り潰した。

 更に、もう一撃。全霊の袈裟。


 ガッ、と鈍い音が響く。


(もっと、もっと、もう一步)


「アアァァァアアアーーーー!!」


 全開の咆哮。

 次第に斬撃が重なっていき、サソリの甲殻に罅が広がる。

 苦し紛れに振るわれた尾の存在に、グラジオラスは思わず舌打ちを残す。

 迎撃は問題ないが、攻撃が一手減る。

 ダメージ無視でこのまま突っ込むか、一撃で潰すか。

 その選択を彼女が下す前に、頭上を紫電を纏った魔力弾が疾駆した。


「押し切りなさい、グラジオラス!」


 白衣の少女の声に押されるように、グラジオラスは一切の防御を捨てて、斬撃を繰り返す。

 更に速く、更に重く。


 その背に魔力の高まりを感じた。

 グラジオラスは、一步深く踏み込む。

 限界まで身体を、小太刀(あいぼう)を、引き絞って――


「シャアアァァアアッッーー!!」


 今までの甲殻の突破のための斬撃でなく、押しのけるための一撃。

 ガゴンッッ、そう鈍く重々しい残響をその場に残して、サソリは大きく後退()()()()()


 止めに響くは、霹靂。


「『起源魔法(オリジン・マギカ)』!」


 バチリ、と紫電が煌めいた。


「『悉皆還す赫灼(エレクトロキュート)たる霹靂(・テンペスト)』!!」


 轟雷が降り落ち、サソリを焼き尽くした。

お読み頂きありがとうございます。

今後も読んでくださると幸いです。


グラジオラスさん、何でこう大暴れするんですか? 貴方防御型でしょうに……。

(これを人は責任転嫁という)

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