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【六章】収束の魔法少女 ガルライディア  作者: 月 位相
追憶の母

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大針迎撃戦 Ⅱ

 ガルライディアとグラジオラスからの攻撃を尾に受けながらも、サソリは尾を天へと掲げて、針を連射した。


「グラジオラスさん! お願い!」

「そっちも、――ねっ!」


 ガルライディアが飛び出す。

 打てば響く反応で、グラジオラスはサソリに半ば力尽くで小太刀を叩きつけて、隙きを生み出す。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()時間を。


 グラジオラスは大きくバックジャンプする。

 先程までグラジオラスが居た位置には、既にガルライディアの姿が見える。


「大人しくしててっ」


 魔弾のゼロ距離射撃。撃鉄が響く。

 サソリの意識を釘付けにする。


「――――――ッッ!」


 サソリの威嚇込みの大鋏での横薙ぎ。

 直撃すれば、全身粉砕骨折待ったなしだ。


 それに対して、ガルライディアは右腕を、正確には紅を纏う前腕部を覆う籠手を、迫りくる鋏の射線上に置く。身体は軽く力を抜いて。脚を踏みしめずに。


 衝撃(インパクト)

 しかし、打撃音は意外なほど、軽い。


 それもそのはず。

 ガルライディアは鋏の横薙ぎの運動に乗って、衝撃を逃した。

 更にそのエネルギーをそのままに、サソリの後ろ側へと回り込んだ。


 両手の『フライクーゲル』が紅に輝く。

 放つは、平時の彼女の持ちうる最高火力。


「『貫通(ペネトレート)』!!」


 両銃から放たれた正しく赤雷とでも言うべき魔弾は、サソリの体内深くまで達する。

 流石にこれで致命傷となるわけでは無いが、それでも十分だ。

 再度の激突は、どちらとも無く始まった。



 ________________




 グラジオラスは、退いた後すぐに上空を見上げた。

 夜闇の中、黒光りする撃ち出された5本の大針をすべて捉える。


 一気に魔力を脳と心臓に集める。

 針の落下地点を軌道より予測する。

 5箇所のうち、確実に人が居ないと分かる地点は2箇所。


 この場合、3箇所もあるとすれば良いのか。それとも、6割だけと思えば良いのか。

 グラジオラスには分からない。


 けれど、魔法の同時発動を苦手とする彼女にとっては、防がなければいけない数が減れば減るほど、有り難いはずだ。


「『連なる白亜』」


 グラジオラスが持つ最も基本的な障壁魔法『白亜』を同時に発生させる魔法『連なる白亜』。

 そのままという苦情は受け付けない。

 彼女にしてみれば、態とわかりにくい名前にする仲間たちの方が謎なのだ。


『連なる白亜』は複数の障壁をまったく別の場所に生むことも、重ねることも出来るが、今回は大針の射線上3箇所に2枚ずつ重ねて、用意する。


 直後、障壁に硬質な針が叩き込まれる。


 パリンと一枚が割れる。

 しかし、二枚目には食い込むことも無く、針は空中に固定されたように停止する。


 一枚目の障壁の強度を下げて、運動エネルギーを削った後に、二枚目(本命)の障壁で受け止める。

 更に一枚目の障壁は風穴が空いた状態で半ば強引に魔力を注ぎ込み、形を保つ。

 これにより、針の固定に成功した。


 この後、それぞれを地面に下ろさなければならないのだが、流石に時間がかかる。

 グラジオラスが戦線復帰するのは相当後になるだろう。



 ________________




「――しぶといなあっ、もう」


 襲い来る鋏や尾を回避または撃ち落として、着々と魔弾を叩きつけていく。

 だが、


(もう50発は当たっているし、『貫通(ペネトレート)』も3発は撃った。……なのにまだ動くなんて、やっぱり甲殻があるから?)


 幾度となく魔弾を打ち払い、しかし動きが段々と鈍くなってはいるもののサソリは動き続ける。


「――――――」


 回転をかけた尾での薙ぎ払い。

 範囲の広い一撃。当然大質量に加えて魔力の塊とも言える魔物の身体での攻撃は魔法少女の防御魔法(いしょう)を用意に貫通してダメージを叩き込む。


 ガルライディアは跳躍による回避を選択、そして、空中にて、


「『爆裂(ブラスト)』!」


 着弾した瞬間爆発が起こる。

 爆風に押され、両者間の距離が開く。


 本来なら、甲殻(装甲)を貫いて内部に攻撃するのは徹甲榴弾の方が向いているのだが、生憎ガルライディアにそのような魔力制御は不可能だ。少なくとも、現時点では。


 爆風に呷られて崩れた体勢を整るために、空中にて一回転。

 サソリの方に目を向けて、ガルライディアは向けた目を見開くことになった。


 黒く魔力に富んだ大鋏が眼前に迫っていた。


「――ッ?!」


 息を飲んで、彼女は選択に迫られる。

 迎撃か、全力防御か。取れる手は一つ。

 一瞬の逡巡の後、ガルライディアは右手の拳銃に魔力を叩き込む。


「『貫通(ペネトレート)』ォ!!」


 打ち払った瞬間、ガルライディアは未曾有の衝撃に身を踊らせた。

お読み頂きありがとうございます。

今後も読んでくださると幸いです。

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