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【六章】収束の魔法少女 ガルライディア  作者: 月 位相
追憶の母

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一閃と一射

 家々の屋根を伝って、ガルライディアとグラジオラスはひた走る。

 速度は言ってしまえば、遅い。

 グラジオラスは余裕を大いに残しながら走っていた。


(私に合わせてくれてるんだね。……でも、)


 ガルライディアはまだ魔法少女として歴が浅い。浅すぎる。

 魔法少女としてのランクは上がってはいるが、まだまだ経験が、訓練が不足しすぎている。

 確かに、ガルライディアは基本的に魔力制御込みでグラジオラスに比べて一挙手一投足が遅い。


 けれど、


「――グラジオラスさん、大丈夫っ。もっと速くてもついて行けるよ!」


 声を掛けながら、脚の回転を上げる。魔力を巡らせる。慎重に、かつ大胆に。


 ガルライディアも日々強くなってる。特に魔力制御はある程度までは簡単に向上する。

 それからの向上が大変なのだが。


 そんなガルライディアにグラジオラスはにい、と口を歪めて、速度を上げる。

 ガルライディアがついて行ける限界を見極めながら、更に加速していく。


 15分程走り続け、彼女らは遂に現場に到着した。


 鳴り続けるサイレン。

 叫び、逃げ惑う人々。

 至るところが破壊された町並み。

 そして、そこに佇む一つの脅威、魔物。


 そこにいる魔物はサソリを模したものであった。

 黒く月光を弾く外殻は、漆を塗ったかのよう。ただ、それにはところどころ光を反射しない場所がある。

 それが血であることは想像に難くない。


「突っ込むから、援護宜しくっ」


 すかさずグラジオラスが屋根の縁を蹴り付けて、一気に加速。サソリとの距離を詰める。


 ガルライディアは、屋根の上でアイソセレススタンス――両手で銃を保持して、体の正中線の延長上に置く構えを取る。


 サソリはグラジオラスの接近に対して、その大鋏を掲げる。防御にせよ、攻撃にせよ、大質量体は便利なのだ。

 そこにあれば、だが。


 スッと細められる目。紅雷が轟く。黄昏時に紅が駆ける。

 ガルライディアが放った魔弾は正確に鋏を弾き、グラジオラスから大きくそれる。

 その一瞬後に、グラジオラスが至近距離(クロスレンジ)に到達した。


「シャアッ」


 一閃。

 しかし、白刃はギャリリと不快な音を鳴らしながら、サソリの甲殻を滑るのみで、ろくに傷さえ付けられない。外殻の外の魔力を削ぐに留まる。

 連続して何度も小太刀を叩き込み、けれど結果は芳しくない。


 そうこうしている間に、サソリの尾がグラジオラスに迫る。その尾は何かしらの液体をポタポタと滴らせている。サソリなのだから、十中八九毒だろう。

 毒が飛び散ることも考慮して、グラジオラスは回避を選択。


 互いの間に数メートルの空白が出来る。


 サソリは、その身の一切をグラジオラスに向ける。否、()以外の一切を。

 件の尾は、爆発したような音を鳴らしながら、先端の針を打ち出した。

 毒に濡れた大針はグラジオラスでも、ガルライディアでもなく全く別の逃げ遅れた人々の元へ向けられていた。

お読み頂きありがとうございます。

今後も読んでくださると幸いです。

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