家族の形 Ⅲ
VRジャンルの強さを感じた今日この頃
己の醜悪な内面に打ち拉がれる結は、守美子に連れられて、奥の方の部屋――客間らしき場所へと案内された。ソファがテーブルを挟んで設けられている。最奥の部屋にしては日当たりが良い。
「――今更だけど、私が結を施設に呼んだ理由を話さないとね」
備え付けられた電気ケトルにて、お茶を入れた守美子は結の対面に座った後に、そう切り出した。
「理由? 芽衣ちゃん関係の話だけじゃなかったんだ」
「半分くらい芽衣の話ではあるんだけどね」
苦笑気味に漏らす守美子。流石にそれだけでは理解が出来ず首を傾げる結。
「それでその理由なんだけど、魔法少女として戦う理由について腹を割ってお互い話す、ということなの」
「戦う理由?」
「ええ、それを知っているのと知らないのじゃ、街中に魔物が入り込んだときとかの対処が大きく変わるのよ」
よく分からない。結の顔にそうはっきりと書かれている光景を守美子は幻視した。
「――例えば、家族を守りたいから戦っている人がいるとして、その人の家の近くに魔物がいたら例え何があろうと突撃しかねないのは容易に想像がつくわね」
結にしてみれば、何とも耳が痛い話だ。
結の場合、本当に待機命令ガン無視で突っ込みかねない。と言うよりもほぼ100%突撃する。
「で、そういう時に他のメンバーが事情を知っていたら、カバーにも入りやすいでしょう?」
「なるほど…………」
「あ、因みに私は前にここで鳴音と明の二人共話したわよ? 一応個別にだけどね」
「へえ……」
二人相手に一応がついた理由に関しては、何となく結にもわかる。あの二人は二人で一セットとして考えてしまうのだ。寧ろ別行動している姿を想像し難い。
まあ、想像を現実にする魔法を操る魔法少女の想像と考えると、ただ事実なのかもしれない。
なお、これは守美子が始めたことではなく、この街の魔法少女の慣習なんだとか。
二十年程前の魔法少女たちが始め、それが今でも行われているんだとか。
なんでも、当時の魔法少女に相当な切れ者が居たんだとか。
そこまで聞いて、ふとあることが引っかかった結。
「あの、そういう理由とかを聞くのって、基本的に年長者とかがやると思うんだけど……、亮子さんがやらないのは殆ど街にいないから、なの?」
亮子(30)の次に年齢が上なのは、守美子(17)なので彼女が出来ないのならやるのは守美子になる。
(守美子と明の年齢差は一つだけだが)
「ええ、まあ、そうね。あ、因みに無理やり聞き出してるわけでは無いわよ? 私は寧ろ有事の時に手を貸して欲しいから話すことは確定してるから、話すかどうかは本人に決めてもらえばそれで良いのよ」
「へえ……」
「ただ、ね、結の理由は前に聞いちゃったから、私の理由だけ話すことになるのだけどね」
「な、なんかごめんなさい」
当時のことを思い出して、頬を朱に染める結を微笑ましげに、それこそ、先日芽衣に向けていたような目をする守美子。結は守美子からみた自身の立ち位置を良く理解した。あれだ、妹扱いだ。
結としては、一人っ子なのできょうだいは欲しくはあるが、仮にも同僚がそれなのは死ぬ。羞恥心的に悶え死にかねない。
「ふふ、ごめんなさいね。――んんっ、じゃあ、ちょっと長くなるけど話させてね」
お読み頂きありがとうございます。
今後も読んでくださると幸いです。
今日から新作始めました。
タイトルは「Wisdom Joker Online 〜瑠璃色少女の配信録〜」です。
タイトルから想像が付くとは思いますが、VR配信ものです。
よろしければ是非。




