邂逅又は接近 Ⅲ
祝9000pv!
「芽衣!」
結の方から連絡を取り、その際決めた集合場所に写真の人物――守美子が息を切らしてやって来た。
「あ、お姉ちゃん!」
「あ、じゃないでしょう。本当に何処にいたのよ。探し回ってもいないし……」
「ご、ごめんなさい……」
「まったく……、結もそのお友達も家のバカがごめんなさい」
極普通の姉妹の会話に何となしにほっこりとしている結と謡に対して、守美子は頭を下げる。
「ううん、気にしないで大丈夫だよ。守美子さんの昔話とか聞けたし」
にやりとちょっぴり意地の悪い笑みを浮かべて、結は気にしてない旨を話す。それに対する守美子の反応は少なくも顕著であった。
「いや、うん。何を聞いたのか吐き――教えて?」
ほんの一瞬、守美子の目が細められ、そこには鈍い光が宿っていた。取り敢えず、微笑んでスルーを決め込む。
「まあ、後で。そこの結の友達の……」
「和泉 謡です。宜しくお願いします、守美子さん。私も特には気にしていませんので、芽衣ちゃんを許してあげてください」
「小岩 守美子です。こちらこそよろしく。ただ、芽衣のことはまた別なのよ。もし2人じゃなくて危ない人に遭ってたら大変だからね」
こちらはファーストコンタクト。
謡と守美子は互いに自己紹介をする。謡としては守美子を探し回った芽衣の気持ちが分からなくもないため、許してあげて欲しいようだ。
愛の鞭の前には無力だったが。
「あはは、程々にしてあげてください。……それで、ひとつお聞きしても?」
「ええ、何かしら」
「守美子さんは結ちゃんとどういったご関係で?」
謡のその質問にぴしりと動きが止まる。
確かに、傍から見れば小学生と高校生が知り合いというのは親や兄弟の人間関係の延長線上であることが多いだろう。その点、結に兄弟はいらない。そして、結と芽衣は初対面であることを考えると、守美子の方の家族との繋がりもないと考えられる。
そこまでいくと、その関係は不思議に思われるのも仕方がないだろう。
実際、謡がどこまで思考しているのかは本人にしか分からないことであるので論ずる事はできないが、怪しんでいることだけは確かだ。
結は守美子の正体が自分の迂闊な行動で暴かれるかもしれないと気が気でない。
対象的に守美子は余裕があるようで、一瞬たりとも表情を乱すこと無く、なんてこと無いように説明(嘘)をする。
「昔、私が十歳にも満たない時に香織さん――結のお母さんにお世話になったことがあってね。前に加集家にお邪魔した時にね」
そう述べて、守美子は芽衣を連れて帰っていった。
(そう言えば、聞いてなかったな……。まあ、今度でいいかな)
結は二人と別れたあとに疑問に思っていたことを聞くのを忘れていたことに気が付いた。
それは、あの時見えた芽衣の名字が井上――小岩で無かった事。
胸の内にもやもやとしたものを抱え、結は謡との買い物に戻っていった。
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