邂逅又は接近 Ⅱ
「......ええっと、大丈夫、じゃないよね?」
思い切り顔面をアスファルトに打ち据えたのだ。大丈夫とは言い難いだろう。
取り敢えず、転んだ少女に手を貸して起き上がらせる。
少女は痛みに涙目になりながら、泣き出してはいない。
「お膝怪我しちゃってるね。結ちゃん、絆創膏とか持ってない?」
謡が先に気が付いたが、少女は膝を擦り抜いてもいた。顔についた擦り傷に目がいってしまって、良く見れてなかったと人知れず反省する結は、慌てたように鞄から絆創膏と消毒液を取り出して、はたと気が付いた。
「先に傷洗わないとね。でも、近くに水道とか無いしね。......ちょっと待っててね?」
そう二人に向けて言うと、結は近くのコンビニに入っていく。
そこで、飲料水のペットボトルとちょっとしたお菓子を購入する。
すぐに二人の下へ戻る。
少女にお菓子を食べさせながら、傷を洗い流して消毒及などの治療をする。
その間、少女は一度たりとも声を上げなかった。とても強い子だと結は思った。
その時に鞄に書かれた名前らしきものが目についた。
それは、井上 ――。掠れて名前を読み取ることはできなかった。
「......それで芽衣ちゃんはお姉さんとはぐれちゃったんだね? お姉さんの見た目とか分かるかな?」
芽衣と名乗った7歳の少女は保護者的立場の姉とはぐれて探し回っている内に、結と謡の前に現れたそうだ。
人探しを手伝う気満々だった結は、外見的特徴を尋ねてからそれに気が付いて、謡をちらりと見る。
本来は遊びに来ている謡に聞いてからすべきだった。
そんな結だったが、謡は、わかっているとでも言うように緩く首を振る。
謡の性格的に芽衣の事は見捨てられない。
......結にもそれが分かっていたからこそ、先に聞くという発想がなかったのだろうか。
「えっと、お姉ちゃんは背が大きくて、髪はいつもポニーテールで、ええっとそれから............」
続きの言葉が出てこないのか、段々と尻すぼみになっていった。
それでは正直埒が明かないので、結は対象を絞るための質問をする。
「芽衣ちゃん、お姉さんの背は私達よりどれ位大きい? あと何歳かな?」
そんな結の質問に芽衣は辿々しくも何とか答える。
その後、幾つかの質問で得た情報を纏めると、
「身長160cm位で髪型はポニーテール、高校生。あと今日の服装はパンツスタイルに白無地のシャツ。......くらいかな? 分かったのは」
己の思考をまとめるようにそう口に出した謡。内容は結も把握していたが、なにか引っかかる。
(どこかで聞き覚えがあるんだよなあ......。どこでだろ? ポニテ、身長160cm、高校生。............あっ)
必死に思考を巡らせる。そうして結の頭に浮かんだのは、一人。
「芽衣ちゃん、そのお姉さんこの人?」
結はマギホンに入っている写真を見せる。画面を見据えた芽衣の目が見開かれた。
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